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第9回 塩の品質 ~国内と海外~

前回は海外と日本の塩の輸出入をお伝えしました。
今回は品質の違いについてお話していこうと思います。


食塩として口にする塩

塩に含まれる成分

塩の主成分は塩化ナトリウム(NaCl)です。
その他にも、原料となる海水や岩塩由来のマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)などが含まれている場合があります。
ミネラルは生命を維持するために欠かすことのできない重要な成分で、体の中でつくり出すことができないため、食事などから取り入れるしかありません。それはヒト以外の動物でも同じです。

ミネラルは由来となる原材料に含まれる成分以外に、添加物として製造工程で追加されるものもあります。
よく利用される添加物は、
炭酸マグネシウム(MgCO3)や炭酸カルシウム(CaCO3)です。
サラサラした状態(流動性)を保つために利用されます。
海外で利用されるヨウ素(I、ヨード)は、甲状腺障害予防のため利用されていますが、海藻類をよく食べる日本では食品添加物としての利用は認められていません。

ほかにも”ミネラルが豊富”など、商品価値を高める目的でマグネシウム(Mg)などのにがり成分を加えたり、うま味物質として用いられるグルタミン酸ナトリウムを加えた調味料があります。

食用塩の品質規格(国際規格と日本規格)

国際的な食品規格であるCODEX(コーデックス規格)では、消費者の健康と国際貿易における円滑かつ公正な取引を目的に、食用塩についても規格を定めています。
例えば、NaCl純度97%以上、有害金属の国際基準以下などです。

日本の食品衛生法などにはこのような規格がないため、日本で流通する塩の多くを取り扱う公益財団法人 塩事業センターでは、塩に関する調査研究を行なっており品質規格を公開しています。
後述しますが、食用塩公正取引協議会は「食用塩の表示に関する公正競争規約および施行規則」をつくり、調査・指導をおこなっています。
日本塩工業会も自主基準として、「食用塩の安全衛生ガイドライン」を運用し、原料海水から製造における安全・衛生的な生産をおこなっています。


塩の公正マーク https://www.salt-fair.jp/
安全安心国産塩マーク https://www.sio.or.jp/index.html


塩の市販品調査

日本と海外で規格が違うのであれば、実際の市販品はどうなのでしょうか。
日本調理科学会誌に掲載された「海外市販食用塩の品質調査 ―国内市販食用塩との比較―」という資料をもとに、日本と海外の食用塩の品質について比較した調査結果を見てみましょう。本調査は2000年~2012年の渡航時に収集されたとのことです。

  • 海外の食用塩は、塩化ナトリウム(NaCl)純度が高い傾向にある

 日本平均 91.7 %
 海外商品 99.0 %以上

  • 塩化カリウム(KCl)を添加した低ナトリウム塩が見られた。海外の食用塩には添加物が多く含まれ、その種類も多様だった。

 日本国内 NaClとKClの割合が50%ずつであるものが主
 海外商品 KClの割合が約30~100%と様々

  • 添加物の使用状況

 全体の73%の商品で添加物が使用されていた。添加物の種類は固結防止剤、栄養強化剤等、調味料、食品であった。固結防止剤は主原料の塩化ナトリウム(NaCl)純度が高く固結しやすいため、使用されていると思われる。
海外の特徴的な添加物としては、ヨウ素、フッ化物が挙げられる。

また、海外商品には、安全性の指標となるコーデックス規格で定められている基準の上限値を超えた商品もあったり、海水の他に土砂や工程材料からの混入と思われる微量成分もあった。

つまり、
海外食用塩と国内食用塩では、さまざまな違いがみられているようです。
ちなみに食用として使われる塩は、ほとんどが日本国内でつくられた塩ですので、国産を選ぶことは難しくないでしょう。

日本で安全な塩を選ぶために

しお公正マークの歴史

塩のパッケージにはさまざまな情報が載せられています。
店頭で塩を選ぶうえで1つの目安になるのが、「しお公正マーク」です。
このマークは、先述した食用塩公正取引協議会の定める表示基準に則った商品につけられます。
対象となるのは、一般消費者向けに食用として販売される、包装された塩です。食用以外の塩や包装されていない塩は対象外です。また、塩以外の食品が混ぜられているものや、塩化ナトリウムの含有量が40%未満のものも対象外となります。

なぜ、このようなマークが付けられるようになったのでしょうか。

始まりは1997年の塩の専売制廃止から・・・。
日本では塩の製造や輸入、販売が自由化されました。
その際、品質や安全に関するルールがない状態での塩事業への新規参入が増え、誇大広告や価格上昇、思わせぶりな表示や紛らわしい表示が多くなりました。
2004年には公正取引委員会から「食塩の表示に対する警告」が発せられる事態となりました。これに対し、自主基準を策定するという動き、ついには業界全体の呼びかけにより、2008年に食用塩公正取引協議会の実質的活動がスタートしました。
2010年には「食用塩の表示に関する公正競争規約および施行規則」が施行され、食塩に関する表示基準が定められることとなったのです。

まとめ

日本では、食品衛生法にはなくとも食用塩公正取引協議会が規則をつくり、食用塩の安全を守っているんですね。原料や製造方法に着目して、食の安全を守っている日本塩工業会もすばらしい取り組みだと思いました。

次回は未定です。
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