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乳がんになった時のこと 2

「病院に行くまで」

末っ子に授乳している時から、右胸になにかあるとは気づいていた。

離婚後、6ヶ月の末っ子を保育園に入れて働き出した時、私は母乳がかなり多く出るタイプだったので、長時間の会議に出席したりしていると、勝手に母乳が作られて、胸がパンパンに張って痛くなっていた。

油断すると母乳が漏れ出て服がびしょびしょになってしまう。しょうがないからトイレの個室に入り、たまった乳を絞って母乳パッドに吸わせるという荒技を行なっていた。わしゃウシか!…と多少情けない気持ちで、おっぱいをぐいぐいとしぼっていた。

その時に気づいた。
右側の乳房上の部分にゴリゴリしたかたまりみたいなのがあると。
でも、まあ人体だからちょっとぐらい硬いところもあるでしょう。その時期に自分の体に気遣うだけの余裕は1ミリもなかった。しばらくすると、末っ子に授乳することもなくなり、ゴリゴリのことはあっさり忘れた。

それから3年間、自分のおっぱいの事など考える余裕もなく、仕事や家事や離婚処理に追わる毎日だった。ある時、父が子どもたちを風呂に入れてくれる事があり、ゆっくり1人で風呂に入れる日があった。

日々ろくな運動もできてないので、いっちょスクワットでもやるか、と鏡の前で両腕を頭の後ろに組んだ。その時になにか違和感を感じた。左右のおっぱいの形が違う。大きさが違うのは普通でもよくあることなんだろうけど、右のおっぱいの一部分だけ微妙に盛り上がってる。

手に触れたら少しかたい。朝顔の種みたいなのが中に埋め込まれていて、それが手に触れる感じだった。「ん?」と一瞬自分の中で不穏な気持ちが立ち込めた。

しかしその次の瞬間、風呂から上がって作らなくてはいけない書類が頭に浮かび、「まいいか」と風呂の湯と一緒にその気持ちは流れていってしまった。
別に、痛くもかゆくもないし、ま、いいかと。

それから半年ぐらい経ったある日。また風呂に入った時だった。
ふと胸を鏡で見ると、右の乳房の下の部分にひきつれのようなシワができていた。上の部分を触ると、朝顔の種ぐらいだったゴリゴリが、パチンコ玉ぐらいに大きくなっていた。ゴリゴリが急に成長している。

これは病院に行ったほうがいいのかも、とやっと思うようになった。
でも、どこの病院に行ったらいいのかは、わからなかった。

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