世界最過激思想家・千坂恭二氏との対談2015.08.16「人民が笑顔で暮らせるファシズム社会」(その1)

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 〈全体の構成は「もくじ」参照〉

 福岡でおこなわれた第3回「教養強化合宿」(2015年8月9〜15日)の最終夜ゲストに大阪からお呼びした世界最過激思想家・千坂恭二氏との、その翌日(2015年8月16日)の対談というか座談会である。紙版『人民の敵』第12号に掲載された。
 文中「山本」は山本桜子、「東野」は東野大地で、いずれも九州ファシスト党〈我々団〉の党員である。

 ( )内は紙版『人民の敵』掲載時にもともとあった註、[ ]内は今回入れた註である。他のコンテンツもそうだが、[ ]部分は料金設定(原稿用紙1枚分10円)に際して算入していない。
 第1部は原稿用紙換算25枚分、うち冒頭7枚分は無料でも読める。ただし料金設定はその7枚分も含む。

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 第3回〝教養強化合宿〟最終日ゲスト・千坂恭二!

千坂 (東野が操作するICレコーダーを見て)こんなので録音できるの?

外山 21世紀はこうらしいですよ。

千坂 1時間ぐらい黙ってたら自動的に切れたりするんじゃない?

外山 千坂さんが1時間黙ってられるわけないでしょう(笑)。……昨夜の交流会(8月9日〜15日に我々団本部で開催した学生限定〝教養強化合宿〟の最終夜に特別ゲストとして千坂氏を招き、一般聴講可でおこなった〝千坂恭二氏を囲んで飲む会〟。合宿には学生9名参加、交流会には総勢30余名参加)で、シュッデコップ(12〜84年。ドイツの歴史家で『ドイツのナショナル・ボルシェヴィズム 1918-1933』の著者)とか、千坂さんが出すキーワードにいちいち反応してる青年もいましたね。

千坂 彼なら知ってるだろうと思って意図的に出してたんだよ。

東野 目をキラキラさせて聴いてた。

外山 マニアックな人が来てるなあって。普通は聞いたこともない人名が次々に出てくるのに、1人だけウンウン頷いてヴィヴィッドな反応を……。

千坂 君、病気だな、と(笑)。

外山 うん、たしかにちょっと病んでそうだった(笑)。彼は合宿には参加せずに昨夜の交流会だけ来た京大生なんだけど、合宿に参加した学生たちはまあ概ね普通の、それこそシールズにいてもおかしくないぐらいの今ふうの若者たちでしたね。

千坂 ファシズムと親和的な〝もう1つのシールズ〟を作ればいいよ。……〝合宿〟は学生たちにもいい刺激になったんじゃないかな。今の御時世で、革命とか思想とかに関心のある同世代の連中が、何人かでも集まっていろんな話をしながら過ごす時間を持つなんて、なかなか難しいでしょう。

外山 ナニナニ派がどうこう、ブントが中核が赤軍が……って話を6日間連続で聞きまくって。

千坂 そんな空間は他にないよ。

外山 しかもそんな話題を共有できる同世代の友達が9人もできた(笑)。

千坂 〝話題を共有できる〟ってことは大事だからね。


 千坂氏に〝苦手な食べ物〟を訊いてみる

千坂 食事はどうしたの?

外山 3班ぐらいに分かれて交代で作ってましたよ。何となく班分けがされて、次の食事を作る人たちと一緒にぼくの運転で食材の買い出しに行って[現在の教養強化合宿では食事当番制は廃され、山本桜子が炊事を一手に引き受けている]。

千坂 そういう体験がまさにバリケードを作ったりするのと同質のものなんだよ。何らかの〝志〟を共有する友人たちと共同でモノを作ったり、食ったり。

山本 最終日に東京から戻ると台所に調味料が増えててビックリした。

外山 ぼくは普段ほとんど調理しないもんね。米だけ炊いて、あとは豆腐とか納豆とか卵かけごはんとか、せいぜいやってチャーハンを作るぐらい。今回は最終日に戻ってきた桜子に冷凍ツクシを卵とじで出してもらって、学生たちにツクシも布教できたし、思い残すところはないよ(笑)。

千坂 外山君の〝ツクシ〟は中毒レベルだよね。どうしてそうなったの?

外山 採り始めると止まらなくなるだけなんです。もはや食べるより採ること自体が目的化してる(笑)。

千坂 どんな味?

外山 味は……どんな味付けをするかですね(笑)。むしろ食感じゃないかな。

千坂 コリコリするとか?

外山 いや……ホウレンソウと大体同じ。

山本 うん、ホウレンソウの方がずっとおいしい(笑)。

外山 微妙な違いがあるんだよ。どうしてそこが分からないかな、君たちは。

山本 いつものツクシと同じ調理法でホウレンソウを味付けしたら、ムチャクチャおいしかった。……千坂さんは苦手な食べ物はありますか?

千坂 今は何でも食べられるようになった。

外山 もともと苦手だったものはあるんですか?

千坂 チーズとかね。洋食は、例えば牛乳とかバターとかで味付けしてるものも多いでしょ、肉でも魚でも。ぼくに云わせれば、バターってのはパンに塗るものだよ。パンにはバターだけでなくジャムも塗る。じゃあ魚にジャムも塗るのか、って思ってしまうんだ。

外山 塗ってもいいんじゃないですかね(笑)。

千坂 そういう絵が思い浮かんで、気持ち悪くなってた。

外山 魚にジャム塗るのは案外おいしそうですよ。

山本 やろうやろう(笑)。

千坂 今はそんな気もするけどね。肉の上にパイナップルが乗ってたりするでしょ。昔はそんなこと考えられない。パイナップルは〝果物〟で、肉は〝料理〟だ。〝料理〟と〝果物〟はまったく別物で、絶対に混ぜちゃいけない(笑)。ところが今はもう平気。パイナップルの酸味がまたオツなもんだよ(笑)。今は苦手な食い物はないかな。チーズが食えるようになった段階でもう無敵。昔はチーズケーキも食えなかったけど、今は実は毎日チーズを食べてるよ。

山本 健康法みたいなもので?

千坂 うん。毎日チーズ食べて牛乳飲んで……昔のぼくを知ってる人間が見たら首をかしげると思う。ほんとに同一人物かって(笑)。

外山 入れ替わってるかもしれない。大室某(明治維新の際、明治天皇が長州の大室ナニガシにスリ替えられたという陰謀論)みたいだ。

千坂 本物であることを証明しろ、と云われても難しい。


 鉄を食え、飢えた狼よ

外山 合宿に参加してた京大生の1人は、セミを食ったとか云ってたな。

千坂 それは東南アジアなんかには普通にあるんじゃない?

山本 唐揚げにしたり……。

千坂 昆虫ってタンパク源だからね。

山本 今度やってみる?

外山 やってみません。

千坂 そういう先入観はどうしようもないもんね。中国の奥地に行ったら、サルを食べたりするでしょ。大皿のフタを開けたら死んだサルがいて、その頭を開けて脳みそを食べる。それを出すのが客人に対する最高のもてなしなんだって。

外山 まったくこれだから野蛮人は。

千坂 たしかそんな映画があったよ。

山本 インディ・ジョーンズ。

外山 うん、インディ・ジョーンズの話だね(笑)。

千坂 サルは食えないな。しかも脳みそなんかねえ。そもそも中国なんかは豚料理でも、丸焼きにしてまったく原型を残したまま出したりするでしょ。ああいうのはキツいね。

外山 せめて元が何だか分からないようにしてほしい。

千坂 だけど日本にも何かの〝生き食い〟とかあるよね。

外山 〝踊り食い〟とかいうやつ。

山本 あ、福岡名物ですね。すごく楽しいですよ。ボールに小っちゃい魚が泳いでて、それを金魚すくいみたいにして食べる。

千坂 口の中でピチピチはねる魚を噛み殺すんでしょ?

山本 そうです、そうです。

千坂 残忍な……。

外山 野蛮な風習だ。

千坂 「食べられてしまう魚の痛みを分かれ」って埴谷雄高先生も云ってる。

山本 埴谷雄高じゃなくても云う人はいそうだけど。

千坂 たぶん埴谷雄高が単に魚嫌いなんでしょう(笑)。だって植物も生き物なんだから〝痛み〟はあるかもしれないし、「野菜の痛みを分かれ」とも云える。石でも食うしかなくなるよ。

外山 動植物以外に食えるものはないのかな?

千坂 ないね。

東野 ……塩。

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