自称福岡県警との闘い(2018.05.28)

 【外山恒一の「note」コンテンツ一覧】

 ちょうど「なごやトリエンナーレ」への出品作をめぐる騒動(Fラン芸術祭「あいちトリエンナーレ」への出品作をめぐる騒動とは別のもの。詳しくは「『なごやトリエンナーレ』事件について」参照)で、「自称室伏良平容疑者」が引き続き悪の組織・愛知県警を相手に獄中闘争を展開中という時節柄、それと連帯する意味も込めて、これまでココで公開してきた諸コンテンツと比べてだいぶ新しいものだが、昨2018年5月に私は私で悪の組織・福岡県警を相手に闘争勝利した記録を公開することにしたい。
 短いもので、原稿用紙換算40枚分。紙版『人民の敵』第43号に掲載された。
 事情は冒頭に注記してあるとおりである。「劇団どくんご」のツアーを追いかけるに際しても、他のさまざまの活動に際しても、私は旅先ではたいてい車中泊で、24時間いくらの長時間割引のコイン・パーキングに車を停めて、そこで寝ていることが多い。もちろん旅に出る時には例の、「日本政府はテロに屈しろ」とか「戦争やるならアメリカとやれ」とか「既成政党全部打倒」とか、健全な常識を持ち合わせる者にとっては当たり前すぎて面白くもない穏健きわまりないスローガンを大書した、凡庸な街宣車に乗っている場合が多い。
 しかし近年(95年のオウム事件以降だろう)、非常識な人が増えているとみえて、「ヘンな車が停まっている」と110番通報されることは日常茶飯事で、この2018年5月28日にも、車中で寝ていると窓をガンガンと叩かれて、気がつくと8名ほどの制服警官に周りを囲まれていた。もっとも、「110番通報で駆けつけた」というのは彼ら自身がそう云っていたにすぎず、法に基づかない不当な要求ばかりしてきたことからしても、実は警官コスプレの謎の愉快犯グループか、ことによると警察手帳とかまで偽造して〝調査活動〟に使っているらしいことが発覚した新左翼某派による何らかの謀略活動だったのかもしれない。いずれにせよ、恐ろしい世の中である。
 こちらは何ら法に触れることはしておらず、またそのような兆候も見られないであろうのに、いきなり「免許証を出して!」である。まあ、いつものことだ。また始まったと思って、ちょうど車内にあったICレコーダーをまずガサゴソと取り出してから、悪の組織(ホンモノだとしてもニセモノだとしても悪の組織には違いあるまい)との対決に臨んだ。
 というわけで以下、最終的に不当要求をすべて退け、完全勝利して、自称福岡県警の諸君にスゴスゴとお引き取りいただくまでの30分強のドキュメント(テープ起こし)である。
 いつもは原稿用紙換算20枚前後ずつに小分けして公開しているが、短いし、一気に最後まで読むほうが面白いはずなので、今回は分割せず、余計な〝小見出し〟や太字化などの加工も付さず、そのまま放出する。
 私などごく少数ではなく、もっと多くの人が、不当な職質とか恐喝(自称「交通取締り」)とかされた時にこんなふうに徹底抗戦する習慣を身につければ、たとえ個々のケースでは勝利したり敗北したりと色々であっても、奴らもそういった悪事に踏み出す際に少しは躊躇するようにもなろうというものだ。そういう意味でこれは、身をもって〝お手本〟を示したマッコト教育的なテキストというべきものであろう。
 ちょっと長めに冒頭11枚分を無料公開とし、ただし料金設定(原稿用紙1枚分10円)にはその11枚分も含む。

     ※     ※     ※

 (「劇団どくんご」北九州公演に際して、昼間、近くのコイン・パーキングに街宣車を停めて寝ていたら、いつのまにか悪の組織に取り囲まれ、起こされて、「免許証を見せろ!」などと不当な要求をされた。録音は途中からだが、闘争開始からまだ1、2分)

外山 (これ見よがしにボイス・レコーダーを置いて)さてと。免許証は見せませんよ。

警官1 でも運転される可能性があるので……。

外山 運転する可能性があったら、なんで免許証を見せなきゃいけないの?

警官1 警察官には確認しなきゃいけない義務がありますので。

外山 なんで?

警官1 あなたが運転されないというのであれば……。

外山 じゃあそこらへんの人全員、確認して回るの?

警官1 そこらへんの人じゃなくて、まずあなたに対応しているので。別の方にも場合によっては、違反車輛とかがあれば対応します。

外山 この車は何か違反してるの? してないでしょ?

警官1 違反とかじゃないけど、運転する虞れがありますから……。

外山 (通行人を指差し)あの人だって運転する虞れがあるよ。

警官1 いやいや(笑)、まず運転手さんのことを……。

外山 イヤです。見せません。

警官1 お願いします。

外山 イヤです。

警官1 確認させてもらってるんで……。

警官2 運転手さんの車でしょ、コレ?

外山 まあそうですけど。

警官2 間違いないですよね。

警官1 盗難車であるとか、そういう虞れも絶対にないというわけではありませんし。

外山 そんなことを云い出したら全部の車がそうでしょう。

警官1 でもまずは運転手さんに対応させてもらってるんです。それが終わったら私たちも別のことへの対応に移ります。

外山 イヤです。……(車が通るのを指差して)あ、あそこにまさに今運転してる人がいますよ。違反車輛かもしれない。無免許かもしれないよ。

警官1 運転手さんのことで私たちは今来てるんです。大丈夫かなあ、と。

外山 大丈夫です。

警官1 それが確認できればいいんです。だからまず身分確認をさせてもらってるんですよ。

外山 なんで?

警官1 まず、運転する虞れがある。ここがあなたの駐車枠であるとか、あなたの家の敷地内で、絶対に運転せんということであれば、その必要性はないかもしれないけど、あなたの住所がここでないのであれば、私たちもやっぱり無免許運転とかされたらイカンので……。

外山 何を云ってるのか全然分かりません(笑)。

警官1 運転する虞れがあるのであればですね、確認させてもらってます。

外山 だからイヤです。お断りします。

警官1 運転する可能性があるけん……。

外山 可能性は誰だってありますよ。

警官2 乗られますよね、結局。

警官1 ここから出られないと云うんだったらまた別です。

外山 ええ、たぶん出ます(笑)。

警官1 もしずーっと出ない、例えばここがあなたの家で、私はもうずっと運転しませんということであれば、また別なんです。

外山 じゃあもう運転しないことにしようかな。ここでずーっと、死ぬまでここで暮らそうかな。

警官1 ここはコインパーキングやけん……。

外山 24時間ごとに7百円払えばここで一生暮らせるでしょ?

警官1 それはそうですが、運転する虞れがあれば私たちも確認せなイカンからですね。

外山 なんでですか。もうお引き取りください。

警官2 ご主人が運転して行くわけではないんですか?

警官1 まったく別の人が運転されるんであれば、また別です。

外山 じゃあそういうことにしようかな。

警官1 まったく別の人が運転されてて、まったく関係ないというんであれば別ですよ。

外山 じゃあまったく別の人が運転します。

警官1 でもさっきからの話の流れ的に、運転されていたということなんだから……。

外山 いや、もうまったく私は関係ないです(笑)。

警官1 それは供述が全然違うでしょ、一番最初の申し立てと。だったら私たちはなおさら確認しないといけない。その義務がある。私たちはそういう仕事をしてるんで。

警官2 実際こんなふうに車にずっと寝泊まりしてる人はいないじゃないですか、こういうコインパーキングに。

外山 そりゃ普通はずーっと寝泊まりしてるとは思わないでしょうね。

警官1 何かあると疑ってるわけじゃないけど、話がさっきは運転して来たと云われて、私たちが話をしたら、じゃあオレは運転してないよって、話がまた変わってるわけですよ。なんで隠すのかなあと私たちは思ってしまうわけですよ。

外山 隠すのは、不当な要求をされてると思うからです。

警官1 これは不当な要求じゃないです。

外山 不当な要求です。

警官1 だって運転する虞れがあるんですから……。

外山 ニセ警官じゃないのか、と。

警官2 いやいや……(笑)。

外山 そんな、法に基づかない不当な要求をしてくるから、怪しいなあと。

警官2 何を根拠に私たちがニセ警官だと……何を目的にそんなことをするんですか。

外山 分かりませんけど、そういう人もいるかもしれないじゃないですか。

警官2 免許証を見てどうするんですか。

外山 1人1人の身元を調べて、犯罪のカモを探しているのかもしれないじゃないですか。

警官1 そう疑うのは別にいいですけど、私たちはまったくニセ警官ではありませんし……。

警官2 取り上げたりもしませんよ。免許証はちゃんと返しますよ。

警官1 提示してもらうだけやけん。

外山 怪しい……。

警官1 ただの確認です。(指差して)ちゃんとパトカーで来てるし、拳銃も腰につけてるし……。

警官3 ちゃんと制服を着てるでしょう。

外山 そういう偽装までやれるテロ集団かもしれない。

警官3 テロ集団だか何だか分からないけど、とにかくそういう形で(身分確認を)させてもらってるんで……。

外山 そういう、理由のない身分証提示なんかしません。

警官3 理由がないわけじゃないですよ。

外山 だって違法なことは何もないって、さっき云ってたじゃないですか。

警官1 うん、違法なことはされてない。ただ、運転の虞れがある。

外山 (また他の車を指差して)あそこにまさに運転してる人がいますよ。あっちが優先でしょう(笑)。

警官1 それは対応によって変わります。

外山 あの人、無免許かもしれませんよ。

警官1 あなたがまったく普通に運転されてて、違反も何もないという状況とは違うわけじゃないですか。ここで寝られていて、どうされたのかなあと110番が入っとるけん……。

外山 だからそれは云ったでしょ。眠いから寝てただけですよ。昼寝をしていただけです、と云ったじゃないですか。

警官1 そのまま過労運転とかされたらイカンけん、私たちも……。

外山 過労運転とかしないように寝てるわけですよ。

警官1 それは休んでもらうのはかまいません。

外山 それをあなたたちが邪魔をして、過労運転をさせようとしてる。

警官1 でもとにかく運転はされるんですよね?

外山 まあ、おそらくね(笑)。

警官1 だけど免許証を持ってないかもしれないという話でね、持っておれば全然大丈夫ですけど。

外山 だからそれを云い出したらみんなそうじゃないですか。

警官1 私たちは持ってますよ。

外山 いや、そうじゃなくて、そこらへんで運転してる人みんなそうじゃないですか。

警官1 でもまずは運転手さんのことを私たちは対応してるんで。

外山 (配達のバイクを指して)あの郵便局員ふうの男も免許を持ってないかもしれませんよ。

警官1 他人のことじゃなくて(笑)、まずはあなたのことなんで。

外山 だから、私が何か違法なことをしてると云うんであればね、話は別ですよ。

警官1 逆になんで隠すのかなあ、と。

外山 何か容疑があんのか(笑)。

警官3 だいたい見せてくれと云えば見せてくれるんですけどねぇ。

外山 日本人は9割方、素直ですからね。

警官3 はい。

外山 でもたまにはそうでない人もいるんです。

警官1 だから何かあるのかなあと勘繰ってしまうんですよ。免許を持ってないのかなあ、と。

外山 まあ云いませんけどね。持ってるか持ってないかも、もう云いません(笑)。

警官1 運転手さんの車なんだろうなあとは思うんですけど、もしかしたら、全国いっぱい車はありますんで、盗難車とかありますし、場合によっては車検証とかを確認させてもらっとるとですよ。

外山 でもとりあえず見た感じで、ちゃんとナンバーもついてるわけだし、照会すれば盗難車かどうかぐらい確認できるでしょ?

警官1 でも身分が分からないとどんな人なのか分からないし、私たちも対応がとれんけん、それを見せていただけたらすごく助かるなあ、と。何も危ないものも持ってないんなら私たちも帰ります、そのまま。その確認が終われば、ですね。私たちも110番で来とるから、何もなしに来て職務質問してるわけとは違うんで。私たちも県民の皆さんからそういう通報があったら、そういう通報に基づいてする義務があるけん……。

外山 いやいや、それは納得できないね。じゃあぼくが(歩行者を指して)あの人の身元を知りたいなあと思ってテキトーな通報をしたら、あの人の身元も調べるの?

警官1 私たちはだからそういう県民の……。

外山 通報しようかなあ、あの人なんか怪しいなあ。

警官1 通報があればですね、そういう通報があってこういう車があれば私たちもそれなりに確認しますよ、最低限の。

外山 でも何か違法なことをしてるわけではないというのはもう分かったわけでしょ?

警官2 それはまだ確認がとれてないから……。

外山 じゃあ何か違法なことをしてる?

警官1 打ち切れんとですよ、私たちも。打ち切ってほしいと云われるんであれば、あなたがそれなりに、例えば指名手配とかはかかってませんと、まあ、かかってないでしょうけど、そんなふうに身元確認をイヤがられるようであれば、私たちもやっぱりそういう可能性を考えなきゃいけない。

外山 考えるのは勝手ですよ。

警官1 それが私たちの仕事の義務やけんですね。

外山 疑うのは勝手だけど、我々が必ずしもそれに付き合うとは限りませんよ。

警官1 だけど普通はだいたい……。

外山 〝だいたい〟って(笑)。

警官1 対応していただければ助かるんですけど……。

外山 たまにはこういう、素直でない市民もいるんです。

警官1 ご本人さんもこのまま時間が経つのがイヤだというんであれば……。

外山 時間は全然かまいませんよ。24時間ぐらい延々とやりましょうか。

警官1 24時間も云々かんぬんやるようなアレやないじゃないですか(笑)。

外山 でしょ? じゃあ帰ればいいじゃないですか。

警官1 そう簡単に私たちも帰れんのですよ。それなりの、危ないことは何もないですよっていう……。

外山 こっちはいくらでも粘りますよ。

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