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中盤における「一歩」と「一手」の差~自戦記 高橋九段戦~

モバイル中継のついた将棋でした。


先手で相掛かり模様の力戦になり、茫洋とした展開に。
迎えた図。中盤の難所です。

「一手」と「一歩」


20200609遠山高橋88手

△7五歩と攻めてきたのに対し、▲3四桂と1回くさびを入れて△1二金と逃げたところ。
一気に攻めるのは難しいので、受けにまわる必要があります。

ここで普通の手は▲7五歩と歩を取る手。
対して△7六歩▲同金直△7五銀と攻めてくることが予想されます。

20200609遠山高橋92手

実戦は▲7五歩と取らずに▲2八飛と飛車を一つ動かしました。
△3八桂成を防ぎつつ、飛車の働きを増した手です。

▲2八飛に対して△7六歩▲同金直△7五銀と攻めてくる手を予想していました。

20200609遠山高橋92手2

すると先ほどの図と比べて、後手に歩が一枚多く、先手は飛車を一つ動かしています。

微妙な差です。「一歩」と「一手」は大体「一手」が勝るとしたものですが、その「一手」は飛車を一つ動かすという地味な手。
果たして得をしているのか、大いに悩みました。


勝敗の分かれ目


「一歩」と「一手」のどちらがいいのか、考えてもわからなかったので、相手にも悩んでもらおうと夕食休憩前に▲2八飛と指して相手に委ねました。
相手も休憩を挟んでの長考に。
それだけ難しい判断でした。

ここで相手が△7五銀と攻める前に細かく得をしようとした手(△8五歩という手)が裏目に出ました。
その手に乗じて角をさばいて一気に優位を築き、以下はミス無く勝ちきりました。


些細なことに悩んで、勝負が決まるのは一瞬。
将棋はそういうゲームです。
でも平手という公平な状況で、実力の近い同士で戦えば、その些細なところで勝負が決まることが多くあります。

「神は細部に宿る」という言葉もあるように、将棋も細部に勝敗の分かれ目が潜んでいるものなのです。

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