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矢倉における駒組みの優劣~大平六段戦~

ABEMA、モバイル中継で配信のあった対局でした。

振り駒で後手番になり、ガッチリ組み合う矢倉戦に。
大平六段は矢倉を得意とされており、少し勇気のいる戦法選択でした。
ただ、本局に関しては序盤がうまくいき、戦いを優位に進められました。

端の関係

駒組みが終わったところ。後手△が私です。

20201202先手後手.kif38手

角の位置と端の関係以外は全て一緒です。
このわずかな違いが優劣をわけます。

後手からは△8四銀→△9五歩という端攻めがあります。
一方、先手は端の突き合いがないので攻めの形をどう構築するか難しいです。
6四の角も相手の銀の動きを牽制していいポジションです。

総合して後手の駒組みが優れていると判断
しました。

開戦

実戦は▲3五歩△同歩▲同角と動いてきました。

20201202先手後手.kif41手

これは△7三銀と上がったから可能になった手段で、△3六歩▲4六銀△4五歩の筋(▲同銀だと△2八角成で飛車が取られる)には▲6五歩と突けば、

20201202先手後手.kif45手

反撃可能です。もし6二銀型だと△7三角と逃げて銀損を免れられません。

実戦は▲3五同角に△3六歩▲4六銀△8四銀と進みました。

20201202先手後手.kif44手

△8四銀は7三に角の逃げ場所を作って次に△4五歩を狙ったもの。
同時に端攻めも視野に入れています。

以下、▲6五歩△7三角に▲5五歩と△4五歩を防いできましたが、狙いの△9五歩で端攻めが実現。

20201202先手後手.kif48手

駒組みがうまくいったとみたので、恐れずに攻めていきました。そしてその判断が正しく、形勢をリードしました。
後手は端攻めという目標がハッキリしており、わかりやすい展開です。

実戦は勝ちやすい流れに乗ってリードを拡大していきましたが、決め手を逃してリードが縮まり激戦に。
最後は際どい終盤戦を制しました。
結果的には序盤で奪ったリードが大きく、勝因になりました。

研究

最初の図は研究していた局面で、後手番ながら先攻の見通しが立っており、わずかながら作戦勝ちと認識していました。

一見するとなんでもないような局面において、事前の研究において自分だけ見通しがたっている優位さを生かした一戦でした。

この日の叡王戦では、19時からの対局で佐藤天彦九段が研究手順からリードを奪い、消費時間わずか10分で快勝していました。
事前研究や対局に向けての準備の大切さを、本局と併せて改めて感じさせられました。


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