実戦心理と幸運な逆転～松本六段戦～

ABEMAで配信のあった対局でした。

振り駒で先手になり、ガップリ四つの矢倉へ。
仕掛け周辺で優位を築きましたが、中盤の受けでミスが続いて劣勢に。

竜と飛車の合体

迎えた図。▲４四桂に△４二金と逃げたところ。

ここで▲５九飛成とと金を払って撤退。受け一方のようですが、狙いを秘めていました。
それが△５八歩に▲３九竜の活用です。

竜で間接的に玉を睨む位置につけました。
遊んでいた桂、さらには自陣の飛車の活用まで見込めそうです。
ずっと苦戦を意識していましたが、希望が見えてきました。

以下△６七歩成▲４五桂△２一玉▲６七歩△６八角

ここで▲３八飛！と合体。

竜と飛車が合体する珍しい格好です。
そして受けにくい詰めろになりました。
△７九銀から迫られても先手玉に詰みはなく、駒が入れば竜がいなくても後手玉は詰みます。

ここで初めて逆転を意識しました。そして後手に思わしい手もなく、すぐに終局となりました。

幸運な逆転

実戦心理として、▲３九竜とまわったところは逆転の可能性を感じており、その勢いで押し切った感じです。
しかし将棋AIによると、実際はだいぶ不利な局面でした。

ポイントは▲４五桂と開き王手をしたところ。

ここで△２一玉と逃げずに△３六歩の中合いが絶妙手でした。

▲同竜に△２一玉とすれば、今度は７九の地点にききがなくなるので、先手玉が詰みやすくなります。

よって△３六歩に▲６七歩と戻しますが、△６八金▲３八飛に△２七銀

この銀打ちによって竜と飛車の威力を軽減されてしまいます。
先手玉はもたない格好で、負け筋でした。

ただ、竜と飛車が合体するレアな格好であり、秒読みで△３六歩～△２七銀の手順はかなりの難易度でしょう。
お互いに気がついておらず、勝ち運がありました。

リードを生かせなかったのは残念ですが、終盤は幸運でした。
この勝利で予選決勝に進出。運を味方に勢いに乗りたいです。