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【番外編】お迎えできなかった仔猫

※この記事は2022年10月のキャンペーンに投稿した記事です。
我が家にはお迎えできなかった仔猫のお話ですが、私に大切なことを教えてくれた経験ですので、番外編として「ウチののアテレコ日記」に加えたいと加筆・編集致しました。


我が家は現在3頭の猫と暮らしています。
最初にお迎えしたゆめちゃんとはもう10年以上一緒に暮らしています。

早くゆめちゃんや他のたちのことを書きたいと思いつつ、他の事にも手を出してなかなか進んでいません(苦笑)

ですが進まないのはそれだけではなくて。
もう一つ、気になっていることがありまして・・・ 

実はゆめちゃんよりもずっと以前にお迎えするお話があったものの、叶わなかった子がいました。

今から思えば、”命あるものをお迎えし家族になる”ということを私に考えさせてくれ、お迎えする前にきちんと心構えをさせてくれた大切な体験でした。
ですので今回はその仔猫のお話をさせてください。


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その頃は、ペットを飼っていなかった為知らなかっただけかもしれませんが、私の周りでは保護猫・地域猫という名称は聞いたことがなく、野良猫・捨て猫と呼ばれていたと思います。

ある日、友人から電話がありました。
「猫飼わない?」

春はまだ遠い寒い朝、友人は近所で猫を拾ったそうです。
電柱の横に段ボール箱が置いてあって、とても小さくか細い声で鳴いていたのだと。
箱を開けると、生まれたばかりの仔猫が5匹。

「え? 出産って春とかじゃないの?」

「飼われている猫は温かい所にいるから可能だよ」

猫は環境が良ければ一年に3回は出産可能だと教えてくれました。
彼女は実家で犬と猫を同時に飼っていて、結婚後もちょくちょく里帰りするのは、その子たちに会う為だと断言し、自分はその子たちの母親と言えてしまう強者つわものでした。

「とにかく一度見に来ない?」 と半ば押し切られた形ではあるものの、結婚後の家には遊びに行ったことがなかったので、そちらの興味もあり見に行くことにしました。

訪ねると、早速箱を開けて見せてくれました。
段ボール箱の中にはタオルと小さな小さな黒っぽいもの・・・

「え・・・? これ、猫なの?」
つい、ストレートに思ったままの言葉で聞いてしまいました。

私の仔猫のイメージは、ふわふわの毛が全身を包んで大きな目をくりくりっとさせている、くらいしかなかったのです。
頭や背中にはほんの少し毛があるように見えましたがペタッとしていて、お腹や足にはまだ毛は生えていないようでした。むき出しの足は赤みがかっていて尻尾にも毛がなく、初めは鼠かと思ってしまいました。

「生まれたてはこんなものだよ。目だって何日かしないと開かないし」

へえ・・・そうなんだ・・・

電話では5匹と聞きましたが、見せてもらったときには2匹になっていました。見つけてすぐ動物病院に連れて行ったけれど、寒さで助けられなかったそうです。

「多分、夜のうちに置かれたんじゃないかな。
寒い屋外に何時間か放置されて、かなり衰弱してたみたい」

必要な物を揃え箱の中を温かくして、獣医さんに教えてもらって排泄の世話やミルクを飲ませたりしている、と話してくれました。
生まれたての子はまだ自力で排泄はできないことや、2~3時間おきにミルクを飲ませてあげないといけないということも。

へぇ・・・人間の赤ちゃんと同じなんだ。

彼女がそっと抱き上げ、見せてくれました。

手のひらサイズ! 本当に小さい・・・

「抱っこしてみる? 手を出して」 

いやいやいや、それは怖すぎる! 
こんなに小さくて弱々しいのに、力加減がわからない! 
ちょっと何かに驚いて手に力が入りでもしたらどうするの!

友人は、大丈夫、良いから良いから、と私の方へ差し出します(私は良くない! と思っていましたが・・・)

「ちょっと待って」

私は急いでハンカチを取り出し、適当にクシャクシャにして手の平に乗せ、その上に仔猫を置いてもらいました。
手渡しするだけでもこの子には相当な衝撃になるのではと、とても怖かったのです。

いくらそぉっと渡してもらおうとしても、難しいです、コロンと転がるように、ハンカチの上で仰向けになりました。

「!!!」
私はこの時点でパニック状態でしたが、彼女は変わらず「大丈夫」と。
でもどうやら本当に大丈夫だったようで。



モゾモゾと四肢を動かし、口を開けます。本当に小さな、か細い声で
「ミ~」と「ヒ~ン」を足して2で割ったような、なんとも形容し難い声で鳴きました。

「あ、起きたね。じゃあごはんにしよう」

友人がミルクの用意をする間、手の中の仔猫をじっと見ていました。
緊張で肩も体もガチガチになりながら。

こんなか細い声でもお母さんを呼んで、お腹が空いたと伝える。
まだ立てないけど足をもぞもぞ動かしてお母さんを探そうとがんばってる。
本当なら、側にお母さん猫が居て温めてくれて舐めてくれてミルクをくれる筈なのに・・・

友人がミルクとトイレットペーパーを持って戻ってきました。

トイレットペーパー等をくしゅくしゅと丸めて、下腹部をチョンチョンと刺激すると排泄できるのだそうです。ミルクの前後に刺激するとのことでした。

さあ、今度はミルクを。

コクン、コクン。ちゃんと飲んでるね。目も開いてないのに、口に軽く当てるとわかるんだね。

「こっちの子はちゃんと食欲あるし、モゾモゾよく動くよ。
箱の中の子はあまり元気ない。ミルクは飲むけど量が少ない。あまり動かない。先生は、今日・明日持ちこたえれば大丈夫だって言ってた。
でもこの子たちはがんばってるよ」

うん、そうだね。

ミルクの後、もう一度下腹部を刺激し終わったので、撫でてもいいか聞いて撫でさせてもらいました。
指一本でそぉ・・・触れるか触れないかギリギリのところで。指に集中してそぉっと撫でてみる・・・少し頭を動かしてこちらの方に顔を向けたように思いました。

箱に戻した後も少しもぞもぞ動いています。
これだけ動けてミルク飲んでるんだから大丈夫だよね? がんばれ、がんばれ。

私はこんなに小さな子は怖くて無理だけど、自分が飼えなくても誰か飼いたい人いないか聞いてみると約束しました。
もう少し大きくなるまでは育てるからと友人は言いました。


翌日。彼女からメールが届きました。
少し元気のなかった子がだめだった、と。

私が抱っこした子はミルクも飲んで排泄もできてる、がんばってるよ、とも書かれていました。
がんばれ、きょうだいは残念だけど、キミはがんばれ。
きょうだいの分までキミは大きくなって幸せになって。

・・・それでも。
やはりだめだったと2日後くらいにメールが届きました。
おそらく母乳を飲んでいなかったので、免疫が弱かったためだろうと先生に言われたと・・・

ほんの小一時間見ていただけだったけど、とても悲しかった。
あんなに動いて、ミルク飲んでがんばってたのに・・・

そして、悔しかった。

もし、こんな季節じゃなかったら、もっと暖かい季節だったら。
もし、少し大きくなるまでお母さん猫に世話をしてもらっていれば。

もし、飼い主さんがちゃんともらい手を探してくれれば・・・そうだよ、飼ってる猫が産んだんだから、世話はお母さん猫がしてくれるんだから、その間にもらい手を探すことはできたんじゃないの?

飼い主さんにも事情があったのかもしれないけれど・・・そう思わずにはいられませんでした。


もし、ちゃんと育ててもらえていたら・・・

こんな風にかわいい子に育ったかもしれないと思うのです・・・


今度生まれてくるときは、何でもいいから幸せな人生を生きてほしい。
もし、いつか私が猫をお迎えする日がきたらその子をちゃんと世話して健やかに幸せにしてあげたい。


現在一緒に暮らしている子はみんな、なにかしらの事情で親戚・友人知人からお迎えした子ばかりです。


私にできることはほんの小さなことだけですが。
てんやわんやで困ることもありますが。
ご縁を頂いたこの子たちは私たちが守る。

と思ってはいますが、実のところ、私たちが癒やされ、楽しい日々をもらって幸せにしてもらっています。

どうか、そんな風に癒やされ幸せに暮らせる人が、猫が、少しでも増えますように。




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