焼きエビとトウガラシと豆板醤を口に入れてかみしめてもエビチリにはならないのと同様に

色んな人の文章であるとか、演技であるとか、楽器の演奏に対してアドバイスをしなくちゃいけないときがある。結構頻繁に。

で、大体そういう場においては「有益なアドバイスを出せ」という掟があり、「なんかよくわかんないけども良かったよ!」とか「たぶん、その文章が書いてある紙、裏はメモとして使うといいよ!」とか「演技はよくわかんなかったけど、クッキーは美味しかった」などという発言はアドバイスにカウントされないし、人間的な評価のカウントはマイナスされるので、ある程度的を得たようなことを言う必要がある。これが難しい。本当に難しい。

特に「どこが悪かったですか?」と聞かれたときに、いかにもな「悪い点」を挙げることが出来るのであれば簡単なのだけども、「どこを直したらいいですか?」「なぜ良くないのですか?」「その根拠は何ですか?」と詰められるとお手上げになってしまう。

好きな料理は何ですか?と聞かれて「エビチリ」と答えたときに、
「エビチリのどこが良いのですか?」
「つまるところそれはエビとトウガラシの辛みの組み合わせが良いのですか?」「トウガラシを柚子胡椒に変えてもいいのでは?」
「エビは本当に必要ですか?」とエビチリを構成マテリアルにまで分解して与える印象に対してのアプローチをかけることは、まずあり得ないのに、パフォーマンスに対しては結構「その文章のどこが良いのですか?」「つまるところそれは宇宙船の描写と少女の決意の組み合わせが良いのですか?」「宇宙船は自転車に変えてもいいのでは?」「宇宙船は本当に必要ですか?」と構成マテリアルにまで分解してアプローチをかけることが多いように思う。

結果としてアドバイスの対象が良くわからないサムシングに変貌し、エビチリは汁なしトムヤムクンのようなものになり、私の口がカプサイシンで腫れあがるような「なんだかよくわからないモノ」になってしまう。

プロならそこらへんのアドバイスがちゃんとうまくできるのだろうか。


#日記 #スカム日記

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