アダルトチルドレンの引っ越し

機能不全家庭で育った私は、10年ほど前に日本を離れてヨーロッパで生活している。長年にわたる心理的虐待を受けてきた私は、裸足でヨーロッパまで走って逃げてきた。

さて、10年ほど前からすむこの街で引っ越しをして1ヶ月少したった。今住んでいるのは、この街に来てから4軒目の物件である。

精神疾患を抱えるものとしては、環境の変化に気をつけなくてはならない。健康な人でも、環境の変化をきっかけとして精神が病んでしまうことがあるという。

結果からいうと、今回の引っ越しはまずまず成功した。

そもそも、なぜ急に引っ越すことになったのかというと、前の物件のオーナーが、物件を売却したいので、6ヶ月以内に出て行くか、買い取ってくれ、と言ってきたからだ。

賃借人よりもオーナーの権利の方が強いこの国では、オーナーから追い出されるということはよくある。1軒目の物件から2軒目に引っ越した理由も同じだった。知人にも同じ理由で引っ越しをした人が何人かいる。

引っ越し自体が大変な作業であるし、急に自分たちの条件に合う物件を見つけられる自信もない、そもそも引っ越しの時期ではないから物件が少ない。引っ越し先で、隣人ガチャに外れたら精神状況が今よりも悪くなる。心配が山積みだったので、最初は、購入しようとした。

しかし、外国人が物件を購入するのには現地人よりも時間がかかるらしく、期限内に銀行でローンを組んで売買契約を結ぶことは難しいということがわかり、やはり引っ越すことにした。

今回の引っ越しでは、他人に頼ることを意識した。前回の引っ越しでは、全部自分でやろうとして疲弊しすぎて精神状況が悪くなり、5年間にわたって浮上できなかった理由の一つになったからだ。

引っ越し業者については、料金が高いけれど評判が良いところを選んだ。金額は前回の倍近くしていて、見積もりもざっくりだったから文句を言いたかったけれど、自分が少しでも楽できるなら提示金額でいいと思った。その結果(かどうかわからんが)、引っ越し業者は手際良くよくやってくれた。家具は全て養生して運んでくれた(前の業者は養生なし。この国の引っ越しではよくある)。搬入は梯子車を使ったのであっという間だった。傷ついたものの保証もすぐに対応してくれている。段ボールが足りなくなったらすぐに持ってきてくれた。

不動産の内覧や不動産業者とのやりとりは、通訳翻訳業の友人に丸投げした。もちろん、仕事として。普段慣れない業界の言葉はよくわからないし、注意深く交渉ごとをする精神的余裕もない。お金を払ってでも丸投げして大正解だった。

引っ越し先については、住むエリアにはこだわった。便利な街中からは離れたくなかった。その結果、前の物件よりもより街中で、しかしより静かなエリアに、前の物件よりも広めではあるが築年数がかなり経っている物件を見つけることができた。

荷造りは、夫にほとんどやってもらった。

新めの物件から古い物件への引っ越しとなるので、心配もあったのだが、住んでみると妙に落ち着く。心配とは裏腹に、住んでみるとすぐに慣れた。

水回りのトラブルは、入居前に解決しておいたので、普通に暮らせている。通訳を介して全部対応しておいた。

入居前の掃除は、清掃の仕事をしている友人に発注した。旧居の掃除も一部その友人に発注し、自分たちでする負担を軽くした。

荷物の片付けは、当面は頑張らないことにした。とりあえず、収納にしまって、普通に生活できれば良い、片付けは後からでもよい、と自分に言い聞かせた。

近所の人も、特に話しかけられるわけではないが、挨拶だけはして普通の人たちのようだ。真上の住人と話したところ、信仰心熱く、静かな生活を好む人であることがわかって安心した。うちの真下の住人は未亡人で作家であるそうだ。うちの隣は子供のいない30代くらいのカップルで、昼間は仕事に出かけていて、夜や休日も静かに生活している。

駅にも近くて、いざ近隣の都市まで行くときにはとても便利だ。

入居してからわかったが、どうやらこの物件には子育て世代が入居していないようだ。それもあり、とても静かだ。うちの中学3年の子供が一番若い住人だと思う。

子供の中学は少し遠くなったが、卒業まであと2ヶ月ちょっと。

どうやら4軒目で一番良い物件に巡りあったようだ。引っ越しで無理しすぎないように他人を頼り、お金で解決し他のもあり、メンタル的には上向きになっている。

春がきて日が長くなり、暖かくもなってきたのも影響しているのかもしれない。

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