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ふうちゃんがはんぶっこするのやつ

突然だが、娘ふうか氏2歳8ヶ月が熱を出していた。
固形物も口にしたくない感じの日々がしばらくつづき、今日おにぎりを前にして久しぶりに食べる気がわいたらしい、
「フウチャンガハンブッコスルノヤツ?イッショニタベマショ」
と言った。わたしは喜んだ。

しかしおにぎりが大きすぎたらしい。「タベレナイ」とかブツブツ言ってるので、特になんも考えずにおにぎりを掴んで半分こにした。
そして、そのまま半分食べた。
突然ふうか氏か激怒しはじめた。「ダシテ!ペッテシテ!」と言う。
それは嫌だと思ったから、そのまま飲み込んだ。
わたしの喉がおにぎりを流し込むのを目の当たりにしたふうか氏はウアアアアアと号泣しはじめた。
「半分こしよう」「一緒に食べよう」と言っていたのでその通りにしたはずだが、怒っている。気が変わって全部食べたかったんだろうか。

「ふうちゃんのおにぎり勝手に食べちゃってごめんよ。食べたかったよね。もう手を出さないから、全部食べなよ」
そう言っても依然として泣いている。恨みがましい目でこちらを見ている。
熱のせいで普通より泣きがちなので、これも嫌だとおもった気持ちがなかなか消えないんだろうとおもって、とりあえず泣き止むまでそっとしておいた。

しばらくして気が済んだのか、ふっと泣き止んだ。またニコニコとおにぎりに手を出しはじめる。よかったよかった、と思って見ていたら、ふうか氏は自分の手でおにぎりをさらに半分こにし、わたしにそっと差し出した。
「ハイ、ハンブッコ!」

あああああああああああああああああ!!!!
そうだったのか!!!!!!!!!!!!!!
ふうか氏は『自分の』おにぎりを『自分の手で』半分こして、『自分の手でわたしにあげてから』、一緒に食べたかったんだ!!
無神経オブ無神経!!!!!!!!!!!!!
「ふうちゃんのおにぎりだよー」とか言いながら、自分に決定権があると疑わないやつー!!
「ごめんねー」とか言いながら、自分の正しさをかけらも疑ってないやつー!!
あるある、わたしそういうとこすっごいあるー!!!!

と雷に打たれたように気づいて、悶絶した。なんて真っ当な怒りなんだとおもった。そして、ふうか氏の本当にしたかったことが優しすぎてホロリとした。

そのあとさらに小さくなったおにぎりを、ちょっとずつちぎって食べたのだが、「半分こしていい?」と聞いたら「イイヨー」とあっさり許可してくれたし、もちろん「ママヤッテー」と言われた後にちぎったら怒らなかった。

わたしは舐めてないようで舐めがち、尊重してるようでまるでしてない、ふうか氏をひとりの人間として接してるようで自分に溶けた存在として接してるところが、やっぱりある。
内なる傲慢さに「よっ!」って挨拶された気がした。あまりに自然にそこにいすぎて気づかなかった。

ふうか氏を尊重したいという気持ちばかりで、それがいったいどういうことなのか、やっぱりわたしはまだわかってないのだ。
誰かを大事にしたいなら、まず誰かの持ち物を大事にしないといけないし、それよりも前に、それが誰の持ち物なのかわかってないといけない。
大人だからってえらそうにすんじゃねーぞ!!!!>わたし

ふうか氏とおにぎりを半分こして食べたあとに考えたことであった。
そんな今日は、木曜日。

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