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カラーとモノクロ~芸術家との対話

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今まで出会った芸術家の方々と、アートについて語ったこと、学んだこと、自分の思いを書きました。
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記事一覧

カラーとモノクロ 24

LINEについて話したこと 先日、同年代の作家たちと話をする機会があり、話題に出たのがLINEの使い方のこと。 最近は大人も大半の人がスマートフォンを持っていて、ひとと会っている時でさえ通知が鳴ったら画面を見ずにいられない。仕事中だったら控えるのだろうとは思うけれど気楽な関係だから、話の最中でも情報に気持ちを持っていかれる。 LINEの画面を開かなくても画面上の通知を見るだけで内容を知ることができるから、アプリを開かないで済ませるひとがいて、それだと既読がつかないのだそ

カラーとモノクロ 23

昨年の春に交通事故に遭ってから体調を崩して、今年は病気続きでした。noteの記載もしませんでした。展覧会にも出かけられなかったので、なかなか芸術家とも会えませんでした。 軽い家事と安静、やりたいことはたくさんあるけれど出来もせず、長い時間が過ぎました。白血球が減っていたので感染症にかかるのを恐れ、ほとんど家で過ごしていました。 知人たちが日々を謳歌して制作に勤しみ、展覧会を開いたり、旅行や食事会に出かけているのをSNSで見る日々は、ひとりだけ外国に引っ越したような気がして寂

BODY AND SPIRIT.

  河野智子 Web展覧会 2022 第1展示「BODY」 コロナは他人を怖がらせ、互いを隔絶させた 楽しかったことは思い出となり、遠ざかった 感染を恐れる暮らしに、心も体も弱くなった でも、私たちは乗り越えた ここから細胞を活性化しよう 自ら生まれ変わろう 元気がでたら、再出発 第2展示「さまようSPIRIT」 心は常に揺れ動く 迷うことばかり 迷うのは悪いことじゃない でも 本当はやりたいことがあるよね? 外へ出ていこう 自然には私たちを癒や

カラーとモノクロ 22

版画の師匠が亡くなってから、元気が出なくなっていた私です。師匠の願いであったホームページを作りながら、その作品に触れ、そのときはわからなかったけどこういうことだったんだ、と新たに気づくこともたくさんあり、未だに会話を続けているようでもあり。師匠から元気をいただきました。 作品の構想や画面構成だけでなく普段のものの見方とか、人への敬意の持ち方、自然と人為、個と全、他者からの印象など、いろいろなことを教えてくれました。自分らしくやることが一番だとも。 「ホームページを作るので

カラーとモノクロ 20

12月19日に、私の版画の師匠だった田丸忠(たまる ただし)さんが逝去されました。92歳でした。 家族ではないので、葬儀場で短いお別れをいたしました。 亡くなる10日前に電話で話したのが最後になりました。そのとき、先生は「もう一度最後に作品展をしたいんだ」 と作家らしい意気込みを見せ、私は「なんでもお手伝いしますから、ゆっくり一枚ずつ作り貯めて行きましょう」 と返しました。 今年すでに、作品を作ることが体力的に辛くなり、思うように作品を作ることができなくなっていました。で

カラーとモノクロ 19

先日訪れた抽象画家の個展にて、いつも作品を拝見するだけでお会いすることができなかったご本人と、ようやくお話しすることができた。 海外へも勉強に行き、国内では個展を始め画廊、仲間との展覧会、出版物の挿絵や装丁など、とてもご活躍されていて、作品はたくさんのひとに愛されている。 フランクで腰の低い方であった。学校で教諭をされてきて、たくさんのひとと話をしてきたのだろう。 そんな方が、最近また具象絵画(写実的な絵)を描きたいと思うようになったという。その作品が会場に飾ってあった

カラーとモノクロ 18

ソープカービングを目の前で見ると、繊細な透かし彫りやデザインの豊かさに驚く。使用される石けんの色も香りも様々で、見る人の心を和ませる。 石けんの堅さは欠けや剥離を誘わないのだろうか。 石けんのなめらかさがナイフの刃を滑らせそうだ。 そんな心配をよそに、作家はあの小さな固形物からアートを生み出してゆく。 カービングの発祥は13世紀のタイに始まる。スコータイ王朝時代の儀式に、果物に装飾として彫刻を施したのが始まりという。現在も、タイの伝統工芸として知られている。 専用ナイフで

カラーとモノクロ 16

「カラーとモノクロ15」で似顔絵描きの話を書きました。今日は別の人の話です。 似顔絵描きの友達は、以前からイベントや注文による似顔絵制作をしていました。 地域の人々から認められ、文化事業などで似顔絵講座を頼まれるようになりました。 似顔絵を仕事として続けるために、インストラクターの資格を取得し、文化教室の講師になりました。第一回目の講座を開く直前に新型コロナの流行が始まり、緊急事態宣言で延期せざるを得なくなりました。当時はなんでも中止や延期の繰り返しでしたね。 せっかく

カラーとモノクロ 15

知人に似顔絵描きが三人いるんです。 ひとりは色紙に筆ペンと朱で描く昔ながらのやり方でした。その後、絵の具を使うようになり、色彩が豊かになりました。今でも輪郭を筆ペンで描くので、迫力があります。 ひとりは色鉛筆やマーカーを使い、やさしくほんのり色を付けたほのぼの系似顔絵描きです。その後、LINEスタンプを手がけたりして、はっきりした線のスタイリッシュな似顔絵も描くようになりました。 ひとりはペンタブを使い、キラキラした瞳につやつやの頬、天使の輪を冠した髪といい、リア

カラーとモノクロ 14

ご縁があって、書道展を見に行きました。 筆が折れるのではと思う勢いで書かれた、迫力のある書も魅力的だし、細く流れるかな文字も美しい。 中には文字とは思えないような書がありましたが、解説を見ると漢字でした。 ほとんどの人が、子供のときに書道を習ったことがあるでしょう。学校の授業に組まれていたり、書道教室に通ったりして。 賞を獲って、段を取って、どんどん上達していくのを楽しみにする人もいれば、ある程度までいくと学校の部活や受験に取り組むためにやめる人もいる。それで

カラーとモノクロ 13

「カラーとモノクロ12」に書いた、球体関節人形作家の作家性や生き方などを尊敬しています。 この作家が、個展のときにお客様から言われたことについて、私は未だに考えています。 メイン展示の人形を見たお客様が「(人形が)美しすぎる。人が作ったとは思えない。そこまでする必要があるのか」と仰いました。 それを聞いて作家は衝撃を受けたそうです。衝撃とは、悪い意味ではありません。ビビビ、と来たのです。 そういう考え方もあるのか、ではどうすれば良いのか。 やりすぎてしまったのかし

カラーとモノクロ 12

息をしているような、唇。輝く瞳はグラスアイ。美しい造形の人形を見た。今にもむくっと動き出しそう。 こちらの様子をじっと見て、なにか話したげな様子に見えた。 人形といってもいろいろなジャンルがあるが、球体関節人形には特に惹かれる。手足や首などの関節が動き、座ったり首をかしげたりして、作家の(もしくは飾り手の)心情を表す。 球体関節人形の展示を見て、今更のように人の魅力は手首の動きや首の角度からも醸成されているのだと気づく。ほんの数ミリの角度が生命を感じさせる。

カラーとモノクロ 11

「カラーとモノクロ 10」で、見え方の違いについて少し書きました。私たちが普段見ているものは、人によって少し見え方が違う、ペットは飼い主が見ている姿と、他人から見えている姿は違う、という話でした。 推しの人を応援している人、誰かの熱烈なファンであれば、対象を見る目は開かれていて、ファンでもなんでもない人に見えている姿よりもきっと数倍よく見えていると思います。 同じに見えなくてもおかしくはないのです。人はそれぞれ少しずつ見え方が違うのだから。主観で見ているからということもあ

カラーとモノクロ 10

絵を描くときに「画面を作る」ことを学校では指導されます。私はこれが苦手です。三角構図とか一点透視図法とか、黄金比など、聞けばなるほどなあと思うけれど、なかなか難しい。 風景を写生しているのに、ここの電柱は無い方がいいから描かないとか、小さくてなんだかわからない生活用品は省いて画面をすっきりさせるとか。画面を作るということは目に見える風景をそのまま描くことではないのだな、と思った。 それは絵の画面をデザインするということ。 余計なものがない美を追究するこ