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花のあとさき ムツばあさんの歩いた道

昨年たまたまNHKで「秩父山中 花のあとさき・最終章~ムツばあさんの歳月~」を見て、言葉にならない静かな感動があった。このドキュメンタリーが映画になったと聞いて、早速シネスイッチ銀座まで見に行ってきた。観客は20人くらいいたかな。

感想として正直に言えば、「うーん」という感じ。わたしは断然テレビ版の編集のほうが好きだった。
ムツさんも、楢尾の風景も、私が覚えている姿のままスクリーンの中にあった。それなのに。

最初のモノローグの時点で「あれ?」と思ったのだけど、この映画版ではテーマを「ひとつの集落の終わり」へと置き換えたようだ。
であれば、これまでのテレビ版の編集を捨てて、新たな作品として提供すべきだったのではないかな。これまでのムツさんを中心とした作りから、失われてしまった楢尾の暮らしを、主に新井さんの証言を加える形で組み立てなおした本作は、構成として中途半端に見える。

もちろん新井さんはいてくれていい。これまでだって、ずっといてくれたし。ただ、クローズアップされるムツさんと新井さん、そして篠塚さん以外の住人の方たちの存在が、映画版では薄すぎるし(もともとそんなに出演されてなかったのかしら)、時系列に沿った作りにはなっているけれど、エピソードのつなぎ方が少し唐突に見える場面も多くて、見ていて戸惑ったというのが正直な感想。ムツさんが亡くなってからの展開も尻切れトンボな印象は否めない。テレビ版では、ムツさんがなくなったあとに寄合の席で誰かが「ムツさんがいないと盛り上がらない」みたいな言葉をつぶやいていた場面があった。その言葉で見ている私にもムツさんの不在感は迫ってきた。

ただ、映画版をみて初めて知ったエピソードもあった。
楢尾と町をつなぐ道路ができてから、ムツさん含め楢尾の女性たちがお勤めに出たということ。勤めていた感想を聞かれたムツさんが「楽だった。お休みいっぱいあるんだもん。」と答えていて、少し笑ってしまった。そして、実際の野良仕事の大変さを感じた。
私は祖父母が田舎の人で農家だったから、畑の管理や、雑草取りの大変さなども感覚としてわかるのだけれど、この感覚がピンとこない人も結構いるんじゃないかな。

NHKが一連のシリーズを再放送してくれないかな!


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