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新しく見つけた「好き」の選択

それが好きだ、と気付いたのはいつだったのだろう。

2月末、こちらの都合に一切の配慮なくアイツがやってきた。そうコロナだ。

長年続けていたIT教育のバイトはもちろんのことながらリアルでの開催を中止にせざるを得なくなった。でも、社員さんたちは諦めなかった。
そのおかげですぐにオンライン上で残りの回が開催されることが決まった。手探りで足りない部分もあったが、でもその後の一年の確かな礎になった。

3月、今度は東京都の外出自粛が決まった。突然の暇を持て余した仲間たちとzoomを繋げる日々が始まった。僕はいつまでも終わらないその会の中でも眠れるよう、自分をうつした動画をバーチャル背景にするという技を編み出した。
その頃、自分の大学の有志がCluster内にたてた校舎で卒業式が行われる、そんな取り組みに感動していた覚えがある。

4月、友人達がオンラインのみでつくるドラマをYouTubeではじめた。もともと友人が生み出すものが好きだったということもあり、すぐにハマった。毎週の楽しみになっていた。同じ頃、Twitterでは劇団ノーミーツの動画が流行り始める。全部を追うことはなかったけど、色んなことができなくなった中でも必死に新しい何かで切り抜けようとする、そんな姿がとても心地よかった。

そう、僕はこの時既に「好き」になっていたのだ。なんで外に出れないのか、政府は一体何をしてるんだ、このままでは破綻してしまう、そうやってコロナの状況への責任の一切を放棄して批判に走る人たちや何もできずに本当にさまざまな「死」をむかえてしまう人々の溢れるこの世の中で、必死で新しい道を切り拓こうとするその姿が。
かっこよかったし、自分もそうありたいと思った。

だからこの一年で好きになったのはそんなものばかりだ。オンラインという新たな可能性をみつけたバイト先、劇団ノーミーツ、THE HOME TAKEなどなど……

そんな中一つの選択が巡ってくる。友人がとあるものを作りたく、手伝って欲しい、と。その頃修士研究にバイトと忙しくしていた僕はとりあえず相談だけなら、と技術的な相談を受けるだけ受けた。
そして、約1ヶ月後、その友人に誘われて僕は衝撃的な体験をすることになる。劇団ノーミーツの第二回長編公演「むこうのくに」だ。
相談の時に話していた妄想のようなことが、しっかりと実現されていた。だけにとどまらず、そこには演劇と技術、すべてが一体となって押し寄せてくる、確かな新しい体験があった。そこまでに自分の中にできていた新しい「好き」、それがそこには溢れていた。

その頃には研究テーマもコロナ下に出てきた問題にシフトしており、自分としてはオンラインならではの教え方とかzoom芸をいろいろ試していたりして、自分自身もかなりこの状況下で新しいなにかを見つけだそうとする、そんな「好き」の姿に近づきつつあった。

そうこうしていると、秋、二度目の大きな選択が巡ってくる。
むこうのくにで相談を受けていた友人にこう誘われたのだ、「オンラインに劇場をつくりたい。手伝ってもらえないか?」と。
正直研究もまだやることが多く、十分にコミット出来るかは自信がなかった。でもその提案は「好き」以外の何者でもなかった、だから二つ返事で引き受けることにした。

そこからは怒涛の数ヶ月感だった。でも次第にそれが完成に近づくにつれ、その「好き」の権化を実現できる喜び、そしてもともとのものづくり好きも高じて、気付いたら学生の自由さを存分に生かして相当量のコミットをしていた。

そしてそんなオンライン劇場「ZA」のデビューとなった門外不出モラトリアムのリバイバル公演、その新しい体験にまた僕は感動をしていた。やる気がみなぎって公演日にはまたたくさんコードを書いていた。

「ZA」には自分がこの大学・大学院生活の間に学んだ全てをぶつけている。でもまだ「ZA」は可能性の宝庫でしかない。これから様々な公演をしていくうちにその扉をひとつひとつ開いていくのだと思う。今度の春から社会人デビューの自分に、そこにどこまでどういった形で関われるのか、それは今はわからないのだがとにかくにだ。

そんな「ZA」のこけら落としとして、選択をテーマにした「それでも笑えれば」が26日はじまる。
こっからの「ZA」の行く末は多分誰にもわからない。関わる様々な人の様々な選択、観劇に来てくれた人たちの選択、その全ての選択がかけ合わさり無限の可能性のうちの一つが未来に繋がっていくのだと思う。

その一員になれたことが、この2020年なによりの「好き」な選択になっている。その幸せな選択をしばらく噛み締めようと思う。


ところでこんなに身内がこのコンテストに参加していいのかみたいなところもあり、これを書くのもひとつの選択だった。でも「選択」というテーマで今年のことを書く、というのは、今年をまとめるのにとてもしっくりきていて、だからこそいいのかは知らないけど書く、という選択をした。

ぜひこれをここまで読んでくれた人も、いい選択ができますように。

メリークリスマス。

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