メルマガ『東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─』第356号「精滑脱屬虚」(内景篇・精)15

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 ◇ 東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─ ◆

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  第363号

    ○ 「精滑脱屬虚」(内景篇・精)

       ◆ 原文
      ◆ 断句
      ◆ 読み下し
      ◆ 現代語訳
      ◆ 解説

      ◆ 編集後記

           

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 こんにちは。「精滑脱屬虚」の処方の最後「九龍丹」です。
 

 ◆原文◆(原本の文字組みのままを再現・ただし原本は縦組み
      ・ページ数は底本の影印本のページ数)

 (「九龍丹」p85 上段・内景篇・精)

 九龍丹
 
治精滑枸杞子金櫻子山査子蓮子蓮花蘂
    熟地黄〓仁白茯苓當歸各等分右爲末酒(くさかんむり欠)
  麪糊和丸梧子大空心温酒或鹽湯下五十丸如
  精滑便濁者服二三日尿清如水飮食倍常行歩
  輕健
  正傳

 ▼断句▼(原文に句読点を挿入、改行は任意)

 九龍丹

治精滑。枸杞子、金櫻子、山査子、蓮子、蓮花蘂、

  熟地黄、〓(くさかんむり欠)仁、白茯苓、當歸各等分。

  右爲末、酒麪糊和丸梧子大、空心、温酒或鹽湯下五十丸。

  如精滑、便濁者、服二三日、尿清如水、飮食倍常、

  行歩輕健。正傳。

 ●語法・語釈●(主要な、または難解な語句の用法・意味)

 

 ▲訓読▲(読み下し)

 九龍丹(きゅうりゅうたん)

精滑(せいかつ)を治(ち)す。

  枸杞子(くこし)、金櫻子(きんおうし)、山査子(さんざし)、

  蓮子(れんし)、蓮花蘂(れんかずい)、熟地黄(じゅくぢおう)、

  〓(くさかんむり欠)仁(けんにん)、白茯苓(びゃくぶくりょう)、

  當歸(とうき)各(をのをの)等分(とうぶん)。

  右(みぎ)末(まつ)と爲(な)し、酒麪糊(しゅめんこ)に和(わ)し

  梧子(ごし)の大(おほひ)さに丸(まる)め、空心(くうしん)に、

  温酒(おんしゅ)或(あるひ)は鹽湯(しおゆ)にて

  五十丸(ごじゅうがん)を下(くだ)す。

  精滑(せいかつ)、便濁(べんだく)の者(もの)の如(ごと)きは、

  服(ふく)すこと二三日(にさんにち)にして、

  尿(にょう)清(きよ)きこと水(みず)の如(ごと)く、

  飮食(いんしょく)常(つね)に倍(ばい)し、

  行歩(ぎょうほ)輕健(けいけん)なり。正傳(せいでん)。

 ■現代語訳■
  

 九龍丹

精滑を治する。

  枸杞子、金桜子、山査子、蓮子、蓮花蘂、熟地黄、

  〓(くさかんむり欠)仁、白茯苓、当帰、各等分。

  以上を粉末にし、酒に溶いた小麦粉に混ぜ、

  青桐の種の大きさに丸め、空腹時に温酒または塩湯で

  五十丸を服用する。

  精滑して尿が濁る者は、これを服用して二、三日で、

  尿が澄んで水のようになり、飲食が常の倍になり、

  行歩が軽く壮健になる。『正伝』

 ★ 解説 ★

 「精滑脱屬虚」に挙げられた具体的な処方の最後「九龍丹」です。

 目標はただ三字、「治精滑」です。ただ、最後に付けたしの文があり、より
 具体的な目標がわかりやすくなっています。

 文はさほど難しくなく、頭からそのまま逐語訳できそうな文です。

 最後が尿が澄むだけでなく食欲が湧き、動作も軽く健やかになると言ってい
 て、ただ目標の症状を治すだけではない効用が見られていることもわかりま
 す。

 しばらく続いた「糊」ですが、ここでも登場しており、それが「酒麪糊」で
 すね。それぞれ個々に違う「糊」が想定されており、処方における炮製の奥
 深さを伺わせます。

 先行訳はだいたい良いのですが、やはり細かい部分で違和感があるところが
 あり、例えば原文で「服二三日」のところを、「二~三日だけでもつづけて
 服用すると」としています。

 これなど原文を素直に読めば「二、三日服すれば」でよく、「だけでもつづ
 けて」はむしろ付けない方が正しい訳になります。二三日服用すればこと足
 りる、と読めてしまうからです。

 他にも細かい部分でいろいろありますので、先行訳をお持ちの方は原文や訓
 読などと比較検討してくださればと思います。
 

 ◆ 編集後記

 「精滑脱屬虚」の「九龍丹」です。実は処方は最後なのですが、さらに処方
 名のない「治小便白濁出髓條方」という文があり、次号はこれを読みたいと
 思います。

 これを読めば正真正銘のこの項目の終わりです。

                      (2020.03.08.第363号)
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