メルマガ『東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─』第338号「夢泄亦屬鬱」(内景篇・精)2

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 ◇ 東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─ ◆

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  第338号

    ○ 「夢泄亦屬鬱」(内景篇・精)

         ◆ 原文
      ◆ 断句
      ◆ 読み下し
      ◆ 現代語訳
      ◆ 解説

      ◆ 編集後記

           

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 こんにちは。「夢泄亦屬鬱」の続きの部分です。
 

 ◆原文◆(原本の文字組みのままを再現・ただし原本は縦組み
      ・ページ数は底本の影印本のページ数)

 (「夢泄亦屬鬱」p84 上段・内景篇・精)

                 綱目曰夢遺屬鬱滯者居
   太半庸醫不知其鬱但用澁劑固脱殊不知愈澁
   愈鬱其病反甚嘗治一男子夢遺白濁小腹有氣
           衝上毎日腰熱卯作酉涼腰熱作則手足冷前陰
      無氣腰熱退則前陰氣耕手足温

 ▼断句▼(原文に句読点を挿入、改行は任意)

  綱目曰、夢遺屬鬱滯者、居太半、庸醫不知其鬱、

  但用澁劑固脱、殊不知愈澁愈鬱、其病反甚。

  嘗治一男子、夢遺白濁、小腹有氣衝上、毎日腰熱、

  卯作酉涼、腰熱作則手足冷、前陰無氣、

  腰熱退則前陰氣耕、手足温。

 ●語法・語釈●(主要な、または難解な語句の用法・意味)

 ▲訓読▲(読み下し)

  綱目(こうもく)に曰(いは)く、夢遺(むい)

  鬱滯(うったい)に屬(ぞく)する者(もの)、

  太半(たいはん)居(を)る、

  庸醫(ようい)其(そ)の鬱(うつ)なるを知(しら)ず、

  但(た)だ澁劑(じゅうざい)を用(もっ)て脱(だつ)を

  固(かた)ふす、殊(こと)に知(しら)ず愈(いよいよ)

  澁(じゅう)し愈(いよいよ)鬱(うつ)して、

  其(そ)の病(やまひ)反(かへり)て甚(はなはだ)し。

  嘗(かつ)て一男子(いちだんし)の

  夢遺白濁(むいはくだく)するを治(ち)す、

  小腹(しょうふく)氣(き)衝上(しょうじょう)すること

  有(あ)り、毎日(まいにち)腰熱(ようねつ)、

  卯(う)に作(おこ)り酉(ゆう)に涼(さ)る、

  腰熱(ようねつ)作(おこ)るときは則(すなは)ち

  手足(てあし)冷(ひ)え、前陰(ぜんいん)氣(き)

  無(な)く、腰熱(ようねつ)退(しりぞ)くときは

  則(すなは)ち前陰(ぜんいん)氣耕(きこう)し、

  手足(てあし)温(あたたか)なり。

 ■現代語訳■
  

  綱目が説くには、夢精は鬱滯に属する者が過半であるが、

  凡庸な医者はその鬱によるものと見抜けず、渋剤を用いて

  漏れを固めようとする。そのため更に渋して更なる鬱を招き、

  病はかえって重くなってしまうのである。

  かつて一人の男性の夢精白濁を治療したことがある。

  下腹部に気が衝き上げて、毎日腰熱が卯の時に起こり、

  酉の時には収まる。腰熱が起こる時には手足が冷え、

  陰部が力なく、腰熱が退くと陰部が旺盛になり、

  手足が暖かくなる。

 ★ 解説 ★

 「夢泄亦屬鬱」の続きの部分です。一段の文が長いので二つに分けて読みます。

 まずはこの項目の名前「夢泄亦屬鬱」に直結する話題で、夢精はこの鬱によるケースが「太半」、つまり大部分、ほとんど、量的には3分の2とされますが、それほどいると言っています。

 しかし「庸医」、凡庸な医者、つまり藪医者ですが、その者はそれが見抜けず誤診して治療もまた誤ってしまうと続けています。

 つまり、精が漏れてしまうのだから、その漏れを防ぐために渋剤、つまり漏れを防いで固める作用の薬剤を与えればよいだろうと判断し、投与したら、もともと鬱して停滞いるところをさらに固めて鬱させ停滞させることになるのですから、その状態がますます鬱になり、症状はますますひどくなる、という機序ですね。

 そして続けて一人の男性の例を挙げています。これは次の文に続きますので、ここは次の号で見てみたいと思います。

 前号で書いたように、先行訳ではこの部分を全て省略していますので、比較検討する材料すらないという状態です。先行訳をお持ちの方は補足してくださればと思います。

 ◆ 編集後記

 「夢泄亦屬鬱」の続きです。治験例の話題が面白そうなところで切れましたが、ここで約半分ですので分けることにしました。次号をぜひお楽しみに。
                      (2019.10.20.第343号)
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