メルマガ『東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─』第100号「菊花水」(きっかすい、きくかすい)

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ◇ 東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─ ◆


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

  第100号

    ○ 「菊花水」(きっかすい、きくかすい)

◆ 原文
      ◆ 断句
      ◆ 読み下し
      ◆ 現代語訳
      ◆ 解説
      ◆ 編集後記
      ◆ 次号の原文

           

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
 

 こんにちは。水の項目の三つめ「菊花水」です。
 前号以上に長いですが、問題点は少ないですのでこれも一気に一項目
 読んでしまいましょう。


 ◆原文◆(原本の文字組みのままを再現・ただし原本は縦組み
      ・ページ数は底本の影印本のページ数)


 (「菊花水」 p679 上段・湯液篇 巻一)


  菊花水

      一名菊英水性温味
   甘無毒療風痺及眩冒除風補衰令人好顔色
  久服延年不老本草○南陽〓縣北潭水其源悉芳(〓麗、右はおおざと)
  菊生被崖水爲菊味故居民飲此水者無不壽考
本草○蜀中有長壽源其源多菊花而流水四季皆
菊花香居人飲其水者壽皆二三百歳故陶靖節
  之流好植菊花浸水
  烹茶期延壽也正傳


 ▼断句▼(原文に句読点を挿入、改行は任意)


  菊花水

  一名菊英水。性温、味甘、無毒。

  療風痺及眩冒、除風補衰、令人好顔色、

  久服延年不老。『本草』

  南陽〓縣北潭水、其源悉芳(〓麗、右はおおざと)

  菊生被崖、水爲菊味、故居民飲此水者、無不壽考。『本草』

  蜀中有長壽源、其源多菊花、而流水四季皆菊花香、

  居人飲其水者、壽皆二三百歳。

  故陶靖節之流、好植菊花、浸水烹茶、期延壽也。『正傳』


 ●語法・語釈●(主要な、または難解な語句の用法・意味)

 語法

  無不~(~せざるなし)二重否定つまり肯定、しないものはない


語釈

  考(なる)完成する、成就する、完成、功績

  陶靖節(トウコウセツ)陶淵明

  流(ながれ)流派、系統

 ▲訓読▲(読み下し)


  菊花水

  一名菊英水。性温、味甘く、毒無し。

  風痺及び眩冒を療し、風を除き衰を補い、

  人をして顔色を好くせしむ。

  久しく服せば年を延し老いず。『本草』


  南陽〓(〓麗、右はおおざと)縣の北潭水は、その源悉く

  芳菊(ほうぎく)生じて崖を被(おお)い、水菊味を爲す、

  故に居民この水を飲む者、壽ならざることなし。『本草』

  蜀中長壽源あり、その源菊花多くして、

  流水四季皆菊花の香あり、

  居人その水を飲む者、壽皆二三百歳。

  故に陶靖節の流、好んで菊花を植えて、

  水に浸し茶を烹て、延壽を期すなり。『正傳』


 ■現代語訳■


  菊花水(菊花の株を通って出た水)

  一名を菊英水と呼ぶ。性温、味甘、無毒。

  風痺および眩冒を治し、風を除き衰を補い、

  顔色を良くする。長期に飲むことで延年不老を実現する。『本草』


  南陽〓(〓麗、右はおおざと)県の北潭水は、

  水源地には芳菊が生い茂り崖を被い、水が菊の味がする。

  ゆえにここに居住し水を飲む者は、長寿でない者はない。『本草』

  蜀の国に長寿源という地があり、その水源には菊花が多く、

  水は四季を通じて菊花の香がする。

  ここに居住しその水を飲む者は、皆寿命が二、三百歳になる。

  ゆえに陶淵明をはじめとする者は、好んで菊花を植え、

  水に浸し茶を煎じ、延寿を図ったのである。『正傳』

 
 ★解説★
 
 水の3番目「菊花水」です。文から菊の香りが漂ってきそうな香り高い文章
 です。

 これなどは自分でもすぐに応用できる方法で、水源に菊花が咲く場所からの 
 水を採集するのは難しいかもしれませんが、菊を浸した水、煎じたお茶を飲
 むというのはさほど難しくなく、また市販でもそんなお茶がありますね。

 これも専門用語以外は特に解説の必要はないでしょう。


 この水解説の初めに項目にハングルがあること、また日本発行の『訂正 東
 医宝鑑』でもハングルが踏襲されており、江戸期にハングルがある本は非常
 に稀ではとも書きました。

 さらに面白いことに、この「菊花水」の項目もそうですが、ハングルに誤植
 が多いのです。ここに画像を添付して両者を比較できないのが残念ですが、
 文字の誤植、また形が少し変なものが多々あります。

 これから察するに、日本語版の原稿を書いた方、訓読を施した方は、ハング
 ルを読めなかったのではと推測します。元版の原稿のハングルをそのまま形
 を真似て原稿を書き、内容まではタッチしていないのではと思います。内容
 がわかっていたらこのような間違いはないであろう、という誤りが多いので
 す。

 それを考えると、日本での発行に際して、ハングル部分を校正する作業はな
 されていない、つまり朝鮮の方に最終原稿をチェックしてもらっての発行で
 はなかったのではと推測できます。

 今まで東医宝鑑を論じた文で、このような点に触れた論文があるでしょうか。
 あるかもしれませんが、包括的に調べたものは少ないと思い、これも一つの
 テーマとして面白いものと思います。


 ◆ 編集後記

 さらに順調に配信が続いています。リズムが出てきたらしめたもので、なん
 とか週一配信が当たり前にしてみたいと思います。

 
 ◆ 次号の原文(次号の予習文)

 臘雪水

     性冷味甘無毒治天
   行時氣瘟疫酒後暴熱黄疸解一切毒又洗眼
  去熱赤本草○臘雪水大寒水也雨下遇寒氣凝而
  爲雪其花六出稟六一之正氣也入門○藏淹一切
  果實良○春雪
  有虫不堪收本草

         (2014.11.18.第100号)
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

  
  ◇ 東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─ ◆
         発行者 東医宝鑑.com touyihoukan@gmail.com

      
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?