メルマガ『東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─』第325号「夢泄屬心」(内景篇・精)2

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 ◇ 東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─ ◆

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  第325号

    ○ 「夢泄屬心」(内景篇・精)

        ◆ 原文
      ◆ 断句
      ◆ 読み下し
      ◆ 現代語訳
      ◆ 解説

      ◆ 編集後記

           

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 こんにちは。「夢泄屬心」の一段目、前号に続く部分を読みます。
 

 ◆原文◆(原本の文字組みのままを再現・ただし原本は縦組み
      ・ページ数は底本の影印本のページ数)

 (「黄連清心飮」p83 上段・内景篇・精)

         心家氣虚不能主宰或心受熱邪陽
    氣不收此泄如甁之側而出者人多有之其病猶
    輕合用和平之劑藏府積弱眞元久虧心不攝念
    腎不攝精此泄如甁之罅而出者人少有之其病
    最重須當大作補湯

 ▼断句▼(原文に句読点を挿入、改行は任意)

  心家氣虚、不能主宰、或心受熱邪、陽氣不收。

  此泄如甁之側而出者、人多有之、其病猶輕、

  合用和平之劑。藏府積弱、眞元久虧、心不攝念、

  腎不攝精。此泄如甁之罅而出者、人少有之、

  其病最重、須當大作補湯。

 ●語法・語釈●(主要な、または難解な語句の用法・意味)

  合(まさ)に…(べし)道理や規則、推量の上から当然
             であるとする判断を表す。

 ▲訓読▲(読み下し)

  心家(しんか)氣虚(ききょ)して、

  主宰(しゅさい)すること能(あたは)ず、

  或(あるひ)は心(しん)熱邪(ねつじゃ)を受(う)け、

  陽氣(ようき)收(をさめ)ず。

  此(ここ)に泄(せっ)すること

  甁(へい)の側(そばだ)ちて

  出(いづ)る者(もの)の如(ごと)し、

  人(ひと)多(おほ)くはこれ有(あ)り、

  其(そ)の病(やまひ)猶(な)を輕(かる)し、

  合(まさ)に和平(わへい)の劑(ざい)を用(もち)ゆべし。

  藏府(ぞうふ)積弱(せきじゃく)、

  眞元(しんげん)久(ひさし)く虧(か)け、

  心(しん)念(ねん)を摂(せっ)せず、

  腎(じん)精(せい)を攝(せっ)せず。

  此(ここ)に泄(せっ)すること甁(へい)の罅(さけ)て

  出(いづ)る者(もの)の如(ごと)し、

  人(ひと)少(まれ)にこれ有(あ)り、

  其(そ)の病(やまひ)最(もっと)も重(おも)し、

  須(すべから)く當(まさ)に

  大(おほひ)に補湯(ほとう)を作(な)すべし。

 ■現代語訳■

  心が気虚して主宰する機能が失われた者、

  または心が熱邪を受けて陽気を収めることができなくなった者は、

  精が漏れること甁が傾いて中身が流れるようである。

  多くの者はこの状態であり、その病はまだ軽く、

  和平の薬剤を用いるとよい。

  臓腑が弱くなりゆき、真元が久しく欠けて、

  心が思慮を収めることができず、

  腎が精を収めることができなった者は、

  精が漏れること甁がひび入り中身が流れるようである。

  この状態の者は少ないが、その病は最も重く、

  必ず強い補薬を用いるべきである。

 ★ 解説 ★

 「夢泄屬心」の一段目の続きの文です。文として一つながりですので、改めて、前号部分と繋げて、文のかたまりが読みやすいように改行しながら記載してみます。

 夢精は心に属する

  直指に説くには、邪が陰を犯せば、
  神は本来の場所を守ることができず、
  ゆえに心が刺激に感じることがあると、
  夢を見て射精することになる。

  その兆候には三種類がある。

  年が若く、気も盛んで独身を保ち、強く情慾を制して、
  自身も知らぬうちに射精してしまう。
  これは瓶が満ちて溢れてしまうようなものであり、
  この場合は薬を用いて治療しなくとも良い。

  心が気虚して主宰する機能が失われた者、
  または心が熱邪を受けて陽気を収めることができなくなった者は、
  精が漏れること甁が傾いて中身が流れるようである。
  多くの者はこの状態であり、その病はまだ軽く、
  和平の薬剤を用いるとよい。

  臓腑が弱くなりゆき、真元が久しく欠けて、
  心が思慮を収めることができず、
  腎が精を収めることができなった者は、
  精が漏れること甁がひび入り中身が流れるようである。
  この状態の者は少ないが、その病は最も重く、
  必ず強い補薬を用いるべきである。

 前号部分で、夢精する者に三種類あると言っており、前号部分でひとつ、今号部分で残りのふたつが挙げられていることがわかりますね。

 その三種類の違いは、治療の必要が無い者、病の軽い者、病の最も重い者と、合理的にわけられていることも読み取れます。

 そして、それぞれに「瓶」の比喩を用いて、本体に問題がなく口から溢れる状態、本体が傾いて流れる状態、そしてひびが入って漏れる状態、とうまく表現しています。

 ここには具体的な処方が挙げられていませんが、この文章は残り7段も文があり、これより後に具体的な処方がいくつも列挙されていくことになります。

 「君火」「相火」などは訳でも原文のままにしておきましたが、既にここまで読まれた文脈から、これが何か、そしてこれが動いて、さらに相火が随うこの機序などまでがわかりますよね。というよりそれがわかるように東医宝鑑の編纂者さんが構成したと言った方が正確かもしれません。

 ◆ 編集後記

 「夢泄屬心」の続きです。上に書いたように処方前のこの文だけであと7段もありますが、それぞれの文は短いものが多いですので、一号で複数の段を読んで、この項目の読了を早めたいと考えています。

                      (2019.07.21.第325号)
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