メルマガ『東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─』第339号「夢泄亦屬鬱」(内景篇・精)3

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 ◇ 東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─ ◆

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  第339号

    ○ 「夢泄亦屬鬱」(内景篇・精)

        ◆ 原文
      ◆ 断句
      ◆ 読み下し
      ◆ 現代語訳
      ◆ 解説

      ◆ 編集後記

           

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 こんにちは。「夢泄屬心」を各処方まで読み終わり、次の項目「夢泄亦屬
鬱」に移ります。
 

 ◆原文◆(原本の文字組みのままを再現・ただし原本は縦組み
      ・ページ数は底本の影印本のページ数)

 (「夢泄亦屬鬱」p84 上段・内景篇・精)

                                                              又朝多下氣暮
    多噫氣一旬二旬必遺脈旦弦滑而大午則洪大
    予知其有鬱滯先用沈香和中丸下之方見痰飮次用
    加減八味湯方見五藏呑滋腎丸方見小便百丸若與澁藥
    則遺與濁反甚或一夜再遺改用導赤散方見五藏大
    劑煎服遺濁皆止

 ▼断句▼(原文に句読点を挿入、改行は任意)

  又朝多下氣、暮多噫氣、一旬二旬必遺。

  脈旦弦滑而大、午則洪大。予知其有鬱滯、

  先用沈香和中丸下之、方見痰飮、

  次用加減八味湯、方見五藏、呑滋腎丸、方見小便百丸。

  若與澁藥則遺與濁反甚、或一夜再遺、

  改用導赤散、方見五藏、大劑煎服、遺濁皆止。

 ●語法・語釈●(主要な、または難解な語句の用法・意味)

 ▲訓読▲(読み下し)

  又(また)朝(あした)に下氣(げき)多(おほ)く、

  暮(くれ)に噫氣(いき)多(おほ)し、

  一旬(いちじゅん)二旬(にじゅん)に

  必(かなら)ず遺(い)す。

  脈(みゃく)旦(あした)には弦滑(げんかつ)にして

  大(だい)、午(うま)には則(すなは)ち洪大(こうだい)。

  予(よ)其(そ)の鬱滯(うったい)有(あ)ることを

  知(し)りて、先(ま)づ沈香和中丸(じんこうわちゅうがん)を

  用(もっ)てこれを下(くだ)す、方(ほう)は

  痰飮(たんいん)に見(み)ゆ、

  次(つぎ)に加減八味湯(かげんはちみとう)を用(もっ)て、

  方(ほう)は五藏(ごぞう)に見(み)ゆ、

  滋腎丸(じじんがん)百丸(ひゃくがん)をを呑(の)ましむ、

  方(ほう)は小便(しょうべん)に見(み)ゆ。

  若(も)し澁藥(じゅうやく)を與(あた)ふれば則(すなは)ち

  遺(い)と濁(だく)反(かえっ)て甚(はななだ)し、

  或(あるひ)は一夜(いちや)に再(ふたた)び遺(い)す、

  改(あらた)めて導赤散(どうせきくさん)を用(もっ)て、

  方(ほう)は五藏(ごぞう)に見(み)ゆ、

  大劑(だいざい)煎服(せんぷく)せしめて、

  遺濁(いだく)皆(み)な止(や)む。

 ■現代語訳■
  

  また、朝は放屁多く、暮れには噫気が多く、

  10日から20日間で必ず夢精があった。

  脈は明け方には弦滑にして大、午後には洪大であった。

  私は彼に鬱滯があると判断し、先に沈香和中丸を与えてこれを下し

  (処方は痰飮参照)、次に加減八味湯にて(処方は五臓参照)

  滋腎丸を百丸服用させた(処方は小便参照)。

  もし渋薬を与えていたら夢精白濁はかえって重くなり、

  場合によっては一晩に二度も漏らすようになってしまう。

  その場合は導赤散を用いて(処方は五臓参照)、

  多量に煎服させれば遺濁ともに全て止むであろう。

 ★ 解説 ★

 「夢泄亦屬鬱」の続き、前号から続く部分です。改めて前号部分と繋げて記してみます。

  綱目が説くには、夢精は鬱滯に属する者が過半であるが、
  凡庸な医者はその鬱によるものと見抜けず、渋剤を用いて
  漏れを固めようとする。

  そのため更に渋して更なる鬱を招き、
  病はかえって重くなってしまうのである。

  かつて一人の男性の夢精白濁を治療したことがある。
  下腹部に気が衝き上げて、毎日腰熱が卯の時に起こり、
  酉の時には収まる。腰熱が起こる時には手足が冷え、
  陰部が力なく、腰熱が退くと陰部が旺盛になり、
  手足が暖かくなる。

  また、朝は放屁多く、暮れには噫気が多く、
  10日から20日間で必ず夢精があった。

  脈は明け方には弦滑にして大、午後には洪大であった。
  私は彼に鬱滯があると判断し、先に沈香和中丸を与えてこれを下し
  (処方は痰飮参照)、

  次に加減八味湯にて(処方は五臓参照)
  滋腎丸を百丸服用させた(処方は小便参照)。

  もし渋薬を与えていたら夢精白濁はかえって重くなり、
  場合によっては一晩に二度も漏らすようになってしまう。

  その場合は導赤散を用いて(処方は五臓参照)、
  多量に煎服させれば遺濁ともに全て止むであろう。

 話の流れがよくわかりますよね。具体的な治験例を挙げることで、内容を際立たせる心憎い構成ですね。

 各処方は全て他の章に登場したもので、スペースの省略の意味もあるでしょうが、そちらを参照してそちらの前後も読むことで、より処方の意味を考えさせるという意義も持たせてあるように思います。

 メルマガでは引用元をすぐに読めませんが、原文をお持ちの方はそちらを参照してそれぞれの章のどこにあるのか、どのような症状への処方として説かれているのか、などご確認してこちらの理解も深めてくださればと思います。

 ◆ 編集後記

 「夢泄亦屬鬱」の続きです。

 次号はまた次の段落で、さらに別の治験例を挙げてあります。文が短いので一号で全て読めると思います。
                      (2019.10.12.第339号)
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