メルマガ『東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─』第277号「人參固本丸」(内景篇・身形)

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 ◇ 東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─ ◆


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  第277号

    ○ 「人參固本丸」(内景篇・身形)

        ◆ 原文
      ◆ 断句
      ◆ 読み下し
      ◆ 現代語訳
      ◆ 解説
      ◆ 編集後記


           

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 こんにちは。「人參固本丸」です。これまた長いですが一気に読んで
 しまいます。
 

 ◆原文◆(原本の文字組みのままを再現・ただし原本は縦組み
      ・ページ数は底本の影印本のページ数)


 (「人參固本丸」 p78 下段・内景篇・身形)


人參固本丸

                      一名二黄元夫人心藏血腎藏精精血
      充實則鬚髮不白顔貌不衰延年益壽
  藥之滋補無出於生熟二地黄世人徒知服二地
  黄而不知服二門冬爲引也盖生地黄能生心血
  用麥門冬引入所生之地熟地黄能補腎精用天
  門冬引入所補之地四味互相爲用又以人參爲
  通心氣之主天門冬去心薑汁浸二日酒浸二日
  麥門冬去心酒浸二日〓浸三日生乾地黄熟地(〓さんずい甘)
  黄並酒浸各二兩右以石磨磨如泥或爛搗以杏
  仁湯化開漉淨渣又磨淨盡如澄小粉之法〓去(〓てへん敝)
  上面水取藥粉晒乾乃入人參末一兩煉蜜和丸
  梧子大毎取五七十丸温酒鹽湯任下忌蘿〓葱(〓くさかんむり・右は上から一口田)
  蒜必用方


 ▼断句▼(原文に句読点を挿入、改行は任意)


 人參固本丸

     一名二黄元。夫人心藏血、腎藏精、精血充實、則鬚髮不白、

  顔貌不衰、延年益壽、藥之滋補、無出於生熟二地黄。

  世人徒知服二地黄、而不知服二門冬爲引也。

  盖生地黄能生心血、用麥門冬引入所生之地。

  熟地黄能補腎精、用天門冬引入所補之地。

  四味互相爲用、又以人參爲通心氣之主。

  天門冬、去心薑汁浸二日、酒浸二日、

  麥門冬、去心酒浸二日、〓(さんずい甘)浸三日、生乾地黄、

  熟地黄酒浸各二兩。右以石磨磨如泥、或爛搗、以杏仁湯化開、

  漉淨渣、又磨淨盡、如澄小粉之法、〓(てへん敝)去上面水、

  取藥粉晒乾。乃入人參末一兩、煉蜜和丸梧子大、毎取五七十丸、

  温酒、鹽湯任下。忌蘿〓(〓くさかんむり・右は上から一口田)、

  葱蒜。必用方。


 ●語法・語(字)釈●(主要な、または難解な語(字)句の用法・意味)


 ▲訓読▲(読み下し)


 人參固本丸(にんじんこほんがん)

     一名(いちめい)二黄元(におうがん)。

  夫(そ)れ人(ひと)心(しん)は血(ち)を藏(ぞう)し、

  腎(じん)は精(せい)を藏(ぞう)す、

  精血(せいけつ)充實(じゅうじつ)するときは、

  則(すなは)ち鬚髮(しゅはつ)白(しろ)からず、

  顔貌(がんぼう)衰(おとろへ)ず、

  年(とし)を延(の)べ壽(じゅ)を益(えき)す、

  藥(やく)の滋補(じほ)、

  生熟二地黄(しょうじゅくにぢおう)に出(いづ)ることなし。

  世人(せじん)徒(た)だ二地黄(にぢおう)を

  服(ふく)することを知(し)りて、

  二門冬(にもんどう)を服(ふく)して

  引(いん)と爲(な)ることを知(し)らざるなり。

  盖(けだ)し生地黄(しょうぢおう)は能(よ)く

  心血(しんけつ)を生(しょう)じ、

  麥門冬(ばくもんどう)を用(もっ)て引(ひき)て

  生(しょう)ずる所(ところ)の地(ち)に(い)る。

  熟地黄(じゅくぢおう)は能(よ)く

  腎精(じんせい)を補(おぎな)ふ、

  天門冬(てんもんどう)を用(もっ)て引(ひき)て

  補(おぎな)ふ所(ところ)の地(ち)に入(い)る。

  四味(しみ)互(たがひ)に用(よう)を相(あ)ひ爲(な)す、

  又(また)人參(にんじん)を以(もっ)て

  心氣(しんき)を通(つう)ずるの主(しゅ)と爲(な)す。

  天門冬(てんもんどう)、心(しん)を去(さ)り

  薑汁(きょうじゅう)に浸(ひた)すこと二日(ふつか)、

  酒(さけ)に浸(ひた)すこと二日(ふつか)、

  麥門冬(ばくもんどう)、心(しん)を去(さ)り

  酒(さけ)に浸(ひた)すこと二日(ふつか)、

  〓(さんずい甘)(かん)に

  浸(ひた)すこと三日(みっか)、

  生乾地黄(しょうかんぢおう)、熟地黄(じゅくぢおう)

  並(ならび)に酒(さけ)に浸(ひた)し

  各(おのおの)二兩(にりょう)。

  右(みぎ)石磨(せきま)を以(もっ)て磨(ま)し

  泥(でい)の如(ごと)くし、

  或(あるひ)は爛(ただら)かし搗(つ)き、

  杏仁湯(きょうにんとう)を以(もっ)て化(か)し開(ひら)き、

  渣(おり)を漉淨(ろくじょう)し、

  又(また)磨(ま)して淨盡(じょうじん)し、

  小粉(しょうふん)を澄(すま)すの法(ほう)の如(ごと)く、

  上面(じょうめん)の水(みず)を〓(てへん敝)(はら)ひ去(さ)り、

  藥粉(やくふん)を取(と)りて晒(さら)し乾(かはか)す。

  乃(すなは)ち人參(にんじん)の末(まつ)

  一兩(いちりょう)を入(い)れ、

  煉蜜(れんみつ)に和(わ)して

  梧子(ごし)の大(おほい)さに丸(まる)め

  毎(つね)に五七十丸(ごしちじゅうがん)を取(と)りて、

  温酒(おんしゅ)、鹽湯(しおゆ)にて任(まか)せ下(くだ)す。

  忌蘿〓(くさかんむり・右は上から一口田)(らふ)、葱蒜。必用方。

  蘿〓(らふ)、葱蒜(そうさん)を忌(い)む。必用方(ひつようほう)。


 ■現代語訳■


 人参固本丸

     一名を二黄元と呼ぶ。

  およそ人の心は血を蔵し、腎は精を蔵す。

  精血が充実すれば、鬚や頭髪は白くならず、

  顔貌は衰えず、寿命を延ばすことができる。

  滋養し補う作用の薬として、生熟の二地黄を超えるものがない。

  しかし、世の人はただ二地黄を服用することのみ知って、

  二門冬を服用してその作用を引き出すということを知らない。

  生地黄はよく心血を生じるが、麦門冬が引となり

  生ずる作用を充分に引き出すのである。

  熟地黄はよく腎精を補うが、天門冬が引となり

  補う作用を充分に引き出すのである。

  四つの生薬が互いに相互作用を為し、

  さらに人参を加えることで心気を通じさせる主導とするのである。

  天門冬は芯を除去し生姜汁に二日浸し、のち酒に二日浸す。

  麦門冬は芯を除去し、酒に二日浸し、米のとぎ汁に三日浸す。

  生・乾地黄、熟地黄はそれぞれ二両を共に酒に浸す。

  以上を石臼で挽き、泥のような状態にし、火に炙ってから搗いて、

  杏仁湯に溶かし、滓を漉し、再び挽いてさらに細かくする。

  澱粉を精製する方法のように表面の水を流し去り、

  薬粉のみを残して晒して乾かす。

  これに人參の粉末一両を入れ、煉蜜に混ぜて

  青桐の大きさに丸め、常に五十から七十丸を、

  温酒または塩湯にて服用する。

  大根や葱、大蒜を避ける。『必用方』

  

 ★ 解説 ★

 続く「人参固本丸」です。これも「固本」系統の処方と言えるでしょう。

 本文が語ってくれているように、ベースが「二地黄」、つまり生地黄と熟地黄とのふたつになっているのですが、その作用を十全に引き出すものとして「二門冬」、つまり天門冬と麦門冬とが想定されていることがよくわかる記述ですね。

 そしてそこに人参を入れるから処方名にも「人参」と名付けられているのですが、なぜ人参を加えるのかも本文が語ってくれており、なかなかわかりやすい記述となっています。

 いままでいくつか「固本」系の処方が出てきましたが、今回のこの処方で固本系の特徴がよくわかるように思いますがいかがでしょうか?
 固本系の処方は直後にもいくつか出ますので、それらを読んだ後に改めて検討してみることにしましょう。


 ◆ 編集後記

 今週も配信が日曜になりました。それでも配信は継続できており、一度配信を止めてしまうと次はさらに妥協が入ってしまう気がして、なんとか週一配信ペースを守る形になっています。

 次は「玄兎固本丸」です。前号の「斑龍丸」同様以前の虚労の項で登場した処方なのですが、斑龍丸が前を参照して解説を省いていたのに対し、こちらは虚労の項目でも解説があったもので、それは既に読みました。

 次号はこの身形の章での本文を読み、さらに以前読んだ虚労の章の内容と比較してみたいと思います。
                     (2018.08.05.第277号)
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