メルマガ『東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─ 』第354号「精滑脱屬虚」(内景篇・精)13

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 ◇ 東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─ ◆

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  第354号

    ○ 「精滑脱屬虚」(内景篇・精)

        ◆ 原文
      ◆ 断句
      ◆ 読み下し
      ◆ 現代語訳
      ◆ 解説

      ◆ 編集後記

           

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 こんにちは。「精滑脱屬虚」の処方「秘元丹」です。
 

 ◆原文◆(原本の文字組みのままを再現・ただし原本は縦組み
      ・ページ数は底本の影印本のページ数)

 (「秘元丹」p85 上段・内景篇・精)

 秘元丹
 
        治精不禁危急者龍骨酒煮焙靈砂水飛各
       一兩縮砂訶子小者〓取肉各五錢右爲末(〓火畏)
  糯米糊和丸緑豆大温水
  下十五丸加至三十丸丹心

 ▼断句▼(原文に句読点を挿入、改行は任意)

 秘元丹

       治精不禁、危急者。龍骨酒煮焙、靈砂水飛各一兩、

  縮砂、訶子小者〓(火畏)取肉各五錢。右爲末、

  糯米糊和丸緑豆大、温水下十五丸、加至三十丸。

  丹心。

 ●語法・語釈●(主要な、または難解な語句の用法・意味)

 
 〓(火畏)うい-す 物を熱い灰の中に入れて焼くこと。
           埋焼(うずみやき)にする。

 ▲訓読▲(読み下し)

 秘元丹(ひげんたん)

  精(せい)禁(きん)ぜず、危急(ききゅう)の

  者(もの)を治(ち)す。龍骨(りゅうこつ)酒(さけ)にて

  煮(に)焙(あぶ)り、靈砂(れいしゃ)水飛(すいひ)し

  各(をのをの)一兩(いちりょう)、縮砂(しゅくしゃ)、

  訶子(かし)小(しょう)なる者(もの)〓(火畏)(うい)して

  肉(にく)を取(と)り各(をのをの)五錢(ごせん)。

  右(みぎ)末(まつ)と爲(な)し、糯米糊(こうべいこ)に

  和(わ)して緑豆(りょくどう)の大(おほひ)さに丸(まる)め、

  温水(おんすい)にて十五丸(じゅうごがん)を下(くだ)し、

  加(くは)へて三十丸(さんじゅうがん)に至(いた)る。

  丹心(たんしん)。

 ■現代語訳■
  

 秘元丹

  精が漏れ止まらず、危急の者を治する。

  龍骨(酒で煮て焙る)、霊砂(水飛)各一両、

  縮砂、訶子(小さいものは埋焼して肉を取る)各五銭。

  以上を粉末にし、糯米糊を混ぜて緑豆大に丸め、

  温水で十五丸を服用し、三十丸まで増やしていく。

  『丹心』

 ★ 解説 ★

 「精滑脱屬虚」に挙げられた具体的な処方「秘元丹」です。

 ここでまた「不禁」が登場しており、瑣陽丹では「脱精滑泄不禁」、前号玉鎖丹では「精氣虚滑遺泄不禁」、そして今号秘元丹では「精不禁危急者」となっています。この「不禁」を軸にこれらの比較検討ができそうです。

 そしてもう一点、ここまでの処方3つ連続で登場しているのが「糊」ですね。

 瑣陽丹ではただの「糊」、玉鎖丹では「山薬糊」、そしてこの秘元丹では
 「糯米糊」となっています。これまた比較することによってこれらの違いを詳しく検討することができそうです。

 さらに、これらを綺麗にみっつ並べた編者さんの意図も考察することができそうですね。偶然にこうなったのではなく、あえてこのように、三つが「不禁」、また「糊」で統一され、かつそれぞれが違うという点で並べてあると考えられます。

 先行訳について、上で語釈の欄にも書いた「〓(火畏)」の部分をこう訳しています。「訶子小者〓(火畏)取肉各五錢」

 つまり、翻訳というより、なぜかこの部分だけ原文をそのまま記載しているのです。

 なぜこうなっているのか不明ですが、この「〓(火畏)」の意味がわからず訳を保留してそのままにしてしまったのでしょうか。不思議な訳です。

 なお、ずっと以前にこの先行訳について、その内容や体裁からハングル訳からの重訳ではないか、と書いたことがあったのですが、このように漢字の原文をそのままにしてある部分があることに鑑みると、漢字の原文から訳してはいるようです。

 以上、先行訳をお持ちの方は補足していただけたらと思います。

 ◆ 編集後記

 「精滑脱屬虚」の「秘元丹」です。今号もひとつでお届けしました。

 次号はまたひとつ、次の「約精丸」の予定です。あと二つの処方でようやくこの項目の処方を読み終わります。
                      (2020.02.23.第354号)
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