回る場:お話物理:場の量子論

前回,実数と虚数を合わせた複素数には,回転の自由度があることを見た.回転の自由度は"何を実数にするか"という自由度が起因している.

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今後の話が簡単になるように複素数の表記方法を変えようと思う.平面上の一点をx-y座標で表す方法から,極座標:長さと角度で書かれる方法がある.

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複素数の実数自由度が"a,b"から長さ"r"と角度"θ"で書けるようになった.回転は文字通り,(実軸からの)角度を変える変換になる.


では今回は,場の理論に登場する場にも複素数の回転の自由度があることを見よう.一番簡単な,複素スカラー場の理論を考えよう.

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場"φ"は時空の各点各点に複素数が定義された場だ.上付き添字の"*"は複素共役を表している.場とその複素共役がセットで出てくることで,ラグランジアンは必ず実数になる.

では今,場に複素数をかける変換を考えて見よう.時空の全部の点の場の値を共通の複素数倍するのだ.

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場が変化すると,当然その複素共役は同じ長さ,逆回転の変化を受ける.するとラグランジアンは上のように変化する.

ここでラグランジアンをじっくり見ると,微分"∂"のある項と質量"m"項は"r^2"倍,相互作用"λ"項は"r^4"倍になっている.これでは変換前のラグランジアンと別物になっている.

ただ,ここで"r=1"の状況を考えて見よう.すると"r^2=r^4=1"だから,なんと変換したラグランジアンは,元のラグランジアンそのものになる.

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変換に対してラグランジアンが不変になった.ラグランジアンが変わらないということは,そこから構築される理論は全く同じものになるのだ.


場の複素数を(大きさ"r"を変えず)回転させるという変換で理論が不変になる,これはつまり,場の理論という物理が,複素数の実軸(何を持って実数とするか)を気にしないということだ.つまりいろんな人がそれぞれの実軸を持って人生を歩んできても,一度場の理論に行けば全く同じ理論になるということだ.

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