変わる重さ,変わらない重さ,E=Mc^2

今日はE=Mc^2の話.これがどうやって出てくるかのふんわりとした話と,これがなんの意味があるのかの話.

このお話物理ではもう光速c=1の世界に住むことにしたのでE=Mc^2はE=Mだ.

復習

まずは復習を.

・速度とは位置の時間微分(ちょびっと移動距離÷ちょびっと移動時間)
・運動量とは運動の強さを表す量,だいたい質量*速度
・質量とはものの動かしにくさを表す量

相対論的運動方程式

物体の運動を記述する運動方程式と言うのがあった.

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質量(m)*速度(v)の時間微分が力(F)ですよ〜と言うやつだ.矢印マークはそのものベクトルのことだった.質量*速度を運動量として書き直せば運動量の時間変化が力ですよ〜と言うことになる.

これを相対論の世界ではどうなるのか考えたい.そのまま使っていいのが一番いいのだが,残念なことにそれは許されない.なぜなら時間は空間三次元と同じように扱われなければならない.もう少し詳しく言うと,一つ目は微分に時間だけが出でいるのがいけない.空間に対して時間が優遇されている.二つ目は速度や力に出てくるベクトルが空間三次元だけになっているのがいけない.時間が今度は置いてきぼりになっている.

ではどうするかと言うと,ベクトルは四次元のものを使おう.微分は時間っぽいけど相対論的に不変なものを使いたい.便利なものがあった.

まずは時間に変わる微分する何かを考えよう.

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おもむろにこんなのがあったのを思い出す.τは"長さ"であったし,相対論的に不変なものだ.時間っぽくない?これからτを"長さ"でもいいけど"固有時間”と呼ぼう.固有の意味は運動する物体と同じ速度で移動する系から見ると時間に一致するからだ.簡単に言うと物体が固有に持っているストップウォッチが示す数字のことだ.

これから三次元の力学であった時間微分は相対論的には四次元の固有時間微分にしよう.

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そして,固有時間微分を決めたので,相対論的な速度を決められる.速度に対応する四次元ベクトルは四次元の位置x^μの固有時間微分だと思おう.四次元ですよ〜感を出すためにv出なくuとベクトルの足μを使う.

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0成分は物体の動きを測った人が見た,動く物体の時間の遅れを表している.1,2,3成分は三次元の速度っぽいが,Lorentz収縮の影響を取り入れたものである.

まぁ四次元で使える2速度"になったのだと思ってもらえればいい.

ではこれを持って四次元の運動方程式

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力"F"がちゃっかり四次元になっている.0成分はなんやねんと言うのはあとで話そう.これが四次元の運動方程式だ.

変わらない質量と,p^0ってなんやねん

さっきの章で運動方程式を使って運動量を決めた.おもむろに運動量から作れる相対論的不変量を考える.

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"u^μ u_μ"は相対論的不変量だから,どの慣性系で計算しても結果は変わらない.だから運動する物体と同じ系で計算すれば最後の等式が成り立つのがわかる.

何が言いたいかと言うと,四次元の運動量の二乗は質量の二乗なのだ.これは不変量だから,ここの質量とは物体固有の不変質量なのだ.

では放っておいたpの0成分はなんぞやと言う問いを考えよう.

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Lorentz変換の処理に従うとこれが出てくる.c=1の世界だから,βは速度vと同じものだ.

速度が光速に比べてものすごく小さくて,今までの力学が通用すると思うと,ちょっと変形できる(テイラー展開).

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ん〜?質量*速度^2/2...?見たことがあるぞ〜??これはLagrangianを決めた時の運動エネルギーだった.

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ではp^0とはエネルギーだと思おう.なんかはじめに質量"m"のゲタを履いているが,エネルギーとは結局差でしか意味がないのでゲタを履いていてもokなのだ.

E=Mが出てくる

p^0がエネルギーEなのだから

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とおく.はいE=M,おしまい....いやいやMとmってなんやねん.まぁでもとりあえずでた.まずはMとは何か考えよう.

Mは不変質量mに何かおまけがかかっている.βに依ると言うことは見る人のいる慣性系の速度に依ると言うことだ.

もう少し噛み砕こう.運動量"p^μ"の空間部分は固有時間微分を時間微分に書き直して,三次元の速度で書き直すと(代表してxだけ)

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こう書くと,四次元のものをわざわざ三次元のものに見直した時に,運動量と速度の係数が見かけの"質量M"なのだ.

余談1

β<1は光速に近くに連れて1に近くので,光速に近い物体の見かけの質量Mは不変質量mに比べてものすごく大きくなる.全ての物体が光速を超えられないのは,加速するための力が,見かけの質量を増やす方向に使われて,三次元速度が中々上がらなくなるのだ.ただ,質量*速度の運動量は力をかければかけるほど増えていく.

余談2

四次元の力の0成分"F^0"はなんやねんというと,エネルギーの(固有)時間変化を決めるものだ.仕事率と言ったりする.噛み砕けば,どれだけエネルギーの出入りがあるかを表している.

E=Mの意味

なんだか巷ではこのE=Mから"質量をエネルギーに変換できる"と言うような言い方をされている.これは間違っていないのだが,特殊相対論の範疇ではそんなことは言えない.

特殊相対論の世界だけでこの等式の意味を語るならば
・エネルギーは四次元運動量の0成分
・質量は不変な質量mと見かけの質量Mがある
・エネルギーは見かけの質量Mで書かれる

と言うことだけだ.最後を持ってして"エネルギーと質量は等価だ"と言う人がいるが,見る人による量"M"を使って何か言っても,見る人による言い方しかできない.何か物理として意味があるとは思わない(個人の意見).物理として意味があるのは四次元運動量の0成分Eと不変質量mなのだ.

"質量をエネルギーに変換できる"と言う主張が正しいとわかるのは場の理論まで行かねばならない.このお話物理ではいつか話す予定なので気長に待ってほしい.


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