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反重力ってないの?:一般相対論

SFでたまに見る反重力ってのはないのか,そんな素朴な疑問への無慈悲な解答

反重力

反重力というのをしっかり決めておかないと議論にならない.とて数学的にしっかりとなるとお話物理のポリシーに反するので,ここではふわっとしたイメージになるが,反重力というのが何か決めておこう.

反重力:重力と反対方向の力

こんなところにしておこう.

一般相対論おさらい

これは今までのお話物理を読んでほしい.

ものすご〜〜〜〜〜くざっくりと一般相対論についてまとめると

・"重力"という力は全て時間と空間(時空)の歪み(重力場)の現れである
・時空の歪みの影響(~重力)はエネルギーと運動量(~質量*速度)を持つもの全てに作用する

の二つだろうか.ちなみに電磁気は

・"電磁場"と呼ばれる時空の各点にある場と電荷の相互作用

を表している.電荷にはプラスとマイナスがあって,同じ電磁場に居てもプラスとマイナスで逆方向の力を受ける.反重力に倣った言い方をすれば反電磁気力があるのだ.

で,反重力はあるの?

ない(あっても現在の実験観測の矛盾しないように導入するのはとんでもなく難しい,導入できてもそれを観測するのはさらに難しい).夢のない話ですまない.

なぜない?

電磁気に電荷のプラスマイナスがあるとは言った.同様に重力には電荷に当たる"重力荷"がある.電荷にプラスマイナスがあるなら重力荷にもプラスマイナスを導入すればいいと思うかもしれない.

だがこれはできない.実は""重力"という力は全て時間と空間(時空)の歪み(重力場)の現れである"という出発点で,重力荷は(慣性)質量に一致する,と決めてしまったのだ.等価原理というものだ.

慣性質量はものの動かしにくさだ.ものの運動を決める運動方程式で書けば,

とかける.mが慣性質量,Fは力だ.x^{\dot \dot} は速度の時間変化,加速度というものだ.加速度がわかれば次に運動がどう変わっていくかわかる.

電磁気の時は電場Eの中で運動する電荷q_Eを持った物体の加速度は

で書かれる.電場Eに対して慣性質量と電荷の比(比電荷)q_E/mの重みで加速度が決まるのだ.

一方で重力場Gの中で運動する重力荷q_Gを持った物体の加速度は

で書かれる.しかし慣性質量と重力荷の比は一般相対論の出発点から同じであると決めてしまったのだから,加速度は重力場そのもので決まってしまう.この式を見れば,元の重力荷がなんであったかを加速度は気にしないのだ.

比電荷は物体によって変えられる.なんならプラスとマイナスも物体によって変わる.しかし重力の場合は比電荷に当たる比は常に一定なのだ.だから反重力なんてものはそもそも出せない.

でも...量子重力とか超弦理論なら....

実際一般相対論は観測とよく合致する.現在確立されている重力理論だ.これをさらに超える重力と記述する理論がいくつも考案されている.いるが,その全てはある状況で一般相対論に戻らなければならない.なぜなら新しい理論は今までの実験結果全てを説明しなければいけないからだ.今までの実験のどれか一つでも説明できない理論はただの妄想なのだ.

一般相対論にかえらなければならない理論が,一般相対論の帰結である反重力の禁止を破って,反重力の存在を認めるならば,それは一休さんのトンチのような矛盾を解消する,それこそ天地がひっくり返る発想が必要だ.

ただ,科学である以上,存在を禁止する理論は書けても,存在そのものを否定はできない.それは悪魔の証明というものだ.いかに実験をしても,統計や実験精度の問題で完全に否定しきることは絶対にできない.だから夢見ることはできる.現実的ではないが,それを考えることを誰も禁止はできない.

ちなみに

(ヘリウム)風船が浮くのは反重力ではない.あれは浮力と呼ばれるものだ.浮力とはざっくりいえば押しのけた物体の分だけ受ける逆向きの力だ.ヘリウム風船のガスとゴムを合わせた重さが,ヘリウム風船の体積分の空気の重さより軽いから浮かぶのだ.つまり周りに何か(空気)があって,重力があってこその力なのだ.無重力だったり,周りに何も無ければ浮力は働かない.残念.

水に入ればからだが軽くなるのも浮力のおかげだ.押しのけた水の分だけからだが軽く感じるのだ.

じゃあ重力に浮力みたいなのを考えれば反重力いけるんじゃね?と思うかもしれないが,反重力ではなく浮力だとわかってしまう.これは潮汐力と呼ばれるものを感じることで周りに(質量~エネルギーを持った)何か(の密度変化)があることがわかってしまうのだ.残念....

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