見出し画像

右手が左手に:お話物理:場の量子論

前回はスピン1/2をもつ粒子を表す場にはカイラリティ(掌)がある話をした.粒子の進行方向に対して回転の向きが二種類あるのだ.

画像1

今回は,スピン1/2の場の理論を構築するためにラグランジアンの話をしようと思う.系を指定するラグランジアンさえ作ってしまえば,あとは経路積分によって量子化することができる.


ラグランジアンは特殊相対論的変換(回転)に対してただの数,スカラーである必要がある.つまりスピノル場をうまく組み合わせて,スカラーを作らなければならない.イメージとしては,ベクトルを内積を使ってスカラーにする感じだ.

まずはじめに思いつくのは微分項だ.

画像2

上のバーは(エルミート)共役,場の添字L/Rはカイラリティの左右を表している.微分∂のローレンツの足は2×2行列のσで潰している.うまい感じでそれぞれのカイラリティ同士で運動項が構築できる.

では微分の入らない項はどうなるのか.スカラー場では質量項や相互作用項がスカラー場だけで構築できたのだった.

しかしスピノル場の場合,テキトーにやっては行けない.なぜならスピノル場をうまく組み合わせてスカラーになる組み合わせしか許されないからだ.

スピノル場で作れる組み合わせは

画像3

とこれの高次になっていく.ここで注目したいのは,カイラリティが異なる組み合わせ,LRかRLでしか出てこないと言うことだ.

実はスピノル場はL(R)だけでは質量項は作れない.スピノル場にはL(R)だけの質量項がない,つまり質量0になる.質量"0"の粒子は光速で運動する.逆に光速より低い運動をするには質量が必要だ.

スピノル場に質量項がないのは,カイラリティに深く関わっている.光速以下の粒子を見るときに,止まっている観測者と,粒子の速度以上の慣性系にいる観測者ではカイラリティが変わってしまう.粒子を追い越してしまうと,回転の向きが変わらないのに,速度は逆向きになるからだ.

画像4

同じ粒子を観測しているはずなのに,見る人によって状態が変わる.そんなことを物理(特殊相対論)が禁止するから,スピノル場に質量項がないのだ.

逆に光速で運動する粒子は,それを追い越す(光速を超える)観測者はいないのでカイラリティが保たれる.


カイラリティが変わる"質量項"を無理やり導入するには,最低でも二種類,カイラリティのLRを持った異なる場が必要になる.粒子が自分の"質量"を感じるとカイラリティが変わってしまうのだ.

画像5


最後まで読んでいただきありがとうございます. 見ていただくだけでなく,"スキ",コメント励みになります. サポートいただければとても助かります/noblesse oblige(煽り)