聡明

「俺はお前の頭のいいところが嫌いだ」
ふとそういわれたことを今更になって思い出す。


過ごした月日は長く、私たちはいい関係だった。
長い間にいろいろあった。もうそれは思い出すこともつらいくらいに楽しい思い出がたくさんある。

揉め事もたくさんあったけど、私たちは非常に気が合ったから、価値観等でのいざこざは一切なかった。
私たちの揉め事の殆どは氏の女性問題だったように思う。


最初の方は私も若さゆえ遊び腐っていたけど、将来を見据えるようになってからはいつも1番に氏を考え、行動していたように思う。なんとなく、結婚するならこの人だろうと自分の中で思っていた。

それからはなんでも許した。
許すたびに自分の何かが削られていく気がしたけど我慢するしかないと思っていた。


でも紆余曲折あって未来が見えなくなったときに、聡明な私は思いついてしまった。

どこかで罰を与えないといけないと。
楽しかった思い出も大好きだった気持ちも本当だけど、傷ついた私はただで転ぶようなことはできないという謎の感情が生まれた。
そこにあったのはなんだろう。「復讐」の気持ちなのか、私のちっぽけなプライドなのかなんなのかはわからない。


そのあとも好意はあったし、世の中の環境や仕事に追われて他に誰かを見つけるような余裕もなかったからだらだらと続いていて、いつも通りの私でいた。

そんないつも通りの私でも、わいてきた感情のためにいつか切ろうと思ったカードをずっと集めていた。思い起こせば私を信じ切ってカードを次々とだしてくる氏は今思うととても滑稽だったように感じる。

いつ切るか、切る日が来るかもわからない私のカードはどんどん増えていった。



「復讐」からは何も生まれない。そう思う自分がいた。好きだった人を陥れるということは、本望ではないし自分にとっても相当につらいことだ。

だけどなんでも許してきた私がどうしても許さざるを得ないことが起きて、カードを切らざるを得なかった。
代償として受け取れるものは1つしかない。それで自分の気持ちが収まるのかはわからなかったけど、自分の中で氏をモノとして消化するために必要な「儀式」だった。

本当はわかっている。もう二度とかかわらないことがお互いにとってベストだと。でも、それでは私は前に進めなかった。



1番の自分の味方だと、理解者だと思ってた人に裏切られるのはどういう気分なんだろう。でもそんなのはこちらは散々に味わってきたことで、もはや傷つくという概念も麻痺してる。二股くらいじゃもう怒れないと思う。


最近やっと氏とのことが片付きそうで、私は心の安堵を取り戻せそうだ。




正直言って貴方は自分が思っているよりも優秀じゃないし、頭が悪い。
そして好き勝手して反省して私を言いくるめて繰り返して、それでも私が真摯に自分のことを1番好きでいる都合のいい女と思っているのは想像力が著しく乏しい。
あと私は貴方が思っている以上に、貴方のことが好きだった。だからこそ許せたし、許せなかった。

この世の人がすべて貴方の味方じゃないということは肝に銘じてほしい。


次はぜひ、こんなことしない(できない)頭の悪い女と付き合うことをオススメしよう。




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