「ワインが投資になる」って聞いたんですが・・・①
当マガジン「パッション・アセットの世界」では、アートやワインなどの情熱の資産から、え、こんなものまで投資??と思えるような我々の世界の投資を取り上げていきます。
ワインが投資になるって聞いたんですがの、全5回の連載の初回は、ファインワイン産業の仕組みについて、私こと「ケイ」が同僚の「アキラ」の質問に答える形で、ワインへの投資について詳しく解説します。
ワインの世界市場とファインワイン
アキラ:こんにちわ。今日は「投資としてのワイン」について教えてください。ワインでの資産運用は世界的に有名らしいのですが、どのように投資がされて、どのようにワイン価格が決まっているかなど、今一ピンときません。ワイン投資の仕組みについて教えてもらえませんか?
ケイ:了解です。では、今日はワイン投資について考えていきましょう。おっしゃるようにワイン投資は富裕層の間ではとてもメジャーな投資ですが、一般市民でも取り組むことができる、とても魅力的で楽しい投資だと思います。
では、ワイン投資を考える前に、そもそものワイン市場について見てみましょうか。ワインは6000年の歴史を持ち、世界中の人々の生活や食文化にとって欠かせない飲み物ですよね。現在、世界では10万件以上のワイナリーが存在していますが、伝統的な欧州地域だけでなく、近年では、より多様な国でワインの生産が見られます。また、白、赤、スパークリング、ロゼなど様々な種類があり、多くの料理に合わせることができるワインは、世界中で消費されています。かつては欧州や南米がワイン消費の中心でしたが、今は米国や中国での消費増が大きなトレンドとなっています。ワイン市場は、生産と消費の両面で、世界的に広がりを見せていると言えるでしょう。
アキラ:日本でもワイナリーが増えていますし、山梨や新潟などではワインツーリムズムも盛り上がりを見せていますよね。ワイン講座に通っている友人の話をよく聞きますし、我々の生活にもより身近になっている気がします。あと、ワインを語れると、教養がありそうっていうか、ちょっとかっこいいですよね(笑)。
ケイ:そうですね。世界の酒類市場では、ワインはビールに次いで2番目に大きな市場です。過去20年ほど、世界全体のワインの消費量はそれほど変わっていませんが、ファインワイン(小売価格で3000円〜5000円以上の高級ワイン)の市場は、堅調な成長を見せてきました。背景は新興国の人々の所得の高まりによる欧州の高級ライフスタイルに対する憧れや、先進国ではモノ消費より体験などのコト消費に価値が置かれてきたことなどが挙げられるでしょう。現在、ファインワインの世界のワインの消費市場に占める割合は、数量ベースで1〜3%、金額ベースでは10%に達していると言われています。そしてファインワイン市場は、今後も成長が予想されていますが、その背景には「ワイン投資家」の存在の広がりがあります。
アキラ:高級なワインって「ファインワイン」って言うんですね。それってワインを寝かせれば寝かすほど味が美味しくなって値段も高くなっていく、いわゆる、ビンテージワインってやつですよね?あんまり飲んだ事ないですけど(笑)
ケイ:そうです、ファインワインとはビンテージワインのことで大丈夫です。2018年には、アメリカのオークション大手「サザビーズ」で、1945年物のロマネコンティ2本がそれぞれ約5000万円で落札されました。これが、過去に見られたファインワインの最高価格となります。長期の保存により価値が上がるお酒はワインだけではなく、スコッチウイスキーのマッカランや中国の茅台(マオタイ)という蒸留酒は、過去に1億円前後の落札価格が付いたこともあります。
社員:えーー。ワイン一本で5000万円、ウイスキーでは1億円ですか。絶句、、、です。
ファインワイン産業の仕組み
ケイ:まあ、それは話のネタ程度に覚えておきましょう。実際のワイン投資では、一瓶当りの投資単価は数千円〜数十万円程度ですんで。
さて、次にワイン投資に関係するファインワイン産業の全体像を理解していきましょう。投資や資産運用においては「それに投資したら儲かる、儲からない」などの表面的な浮ついたお金の話ではなく、その背景にある産業やエコシステム(ビジネス全体の生態系)の全体像を理解しなくてはなりません。そして、その仕組みが「人々と社会の豊かさや幸せ」に長期で役に立っているかが、決定的に重要になります。その投資が社会の豊かさを増やす「良きお金の社会参加」であるならば、社会の豊かさの増加と共に、投資したお金はしっかり増えていきますので。そうでない投資はただのギャンブル、つまり投機です。
社員:なるほど。その投資が良き社会参加であるのか、を考えることが大事なんですね。お金の話となると、どうしても「いくら儲かるの?損をしないの?」という事が気になってしまいますが、そもそも、どうしてワイン投資なるものが世の中に存在するのかを、知らないとなりませんよね。
ケイ:はい。では、ファインワインの産業がどのように出来上がっているかを見ていきましょう。ファインワインの市場は、以下の4つの参加者により成り立っています。
①生産者であるワイナリー
②貯蔵者であるワイン投資家
③ワインの流通業者
④消費者やレストラン
このどれか1つが欠けてもファインワインの市場は成立しません。そして投資家の存在意義は②となります。このワインの貯蔵という役割は、かつてはワイナリーや大手ワイン卸業者の倉庫、レストランやお金持ちの自宅のワインセラー、などで他の①③④の主体が行なっていました。ただ、ワインの貯蔵においては、数年〜数十年に渡る大量の在庫を抱えなくてはならないため、生産者であるワイナリー農家や、流通業者にとっては負担が重すぎるという問題がありました。
その問題を解決するため、投資家から大口、小口の資金を幅広く集めて「ワイン貯蔵の役割は投資家という主体に任せる」というエコシステムが出来上がってきました。投資家という新たなプレイヤーをファインワイン業界の仕組みの中に取り込めれば、ワイナリー側は美味しいワインを作ることに集中でき、結果として蔵のブランドを上げることができる。また、流通業者も消費者が欲しいワインの提供・紹介という本業に集中することができ、事業のために大量の在庫を抱えるリスクを負わなくて済む。そして、好不況という景気の影響を受けやすいレストランにとっても、在庫リスクを追わなくてよいのは、経営上、大変助かる話です。このように各主体がWin-Winとなる新たなエコシステムの創出が、ワイン投資なるものが生まれ発展してきた背景になります。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?