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日本の公的年金への誤解を書き出してみた②

前回の記事はこちらです。

続きを書きます。

・誤解②:少子高齢化で積立金が枯渇する

いえいえ、そんなことはありません。理由は、、、

・まず、公的年金制度は今後の少子高齢化の進行を前提に作られています。
・世界のあらゆる基金の中で最も大きい200兆円を優に超える積立基金を保有しています。過去の運用成績は極めて優良です。

先々を見ますと、積立金は、悲観シナリオでは2040年半ばまで、中点シナリオでは2080年頃まで増え続け、それからゆっくり取り崩されていく計画です。下がGPIFといわれる運用をしている基金の見通しです。そして、100年後にはどんどん取り崩しが進み積立金の額は少なくなっていく訳ですが、それは20世紀半ばに生まれた大発明の、賦課方式の公的年金が時代と共に社会的な役目とともに消えていくということです。その時には、iDeCoなり、ベーシックインカムなり、今はまだそのアイデアさえ考えられていない新しい制度に移行しているでしょう。

https://www.gpif.go.jp/
https://www.gpif.go.jp/

こちら、過去の運用成績です。そしてこの基金が保有する運用資産は、世界の超大企業の株式や先進国政府の国債でして、つまり80億人の世界経済「そのもの」に投資をしています。言い換えれば、世界全体が破綻しない限りは枯渇しない、最も合理的な方法で運用されています。昔の年金のお金は日本の終わりなき高速道路建設や温泉付きの保養所などに使われていたので無駄遣いで無くなってしまう可能性も感じましたが、現在では長期でもっとも固い運用をしていると言えます。過去20年なりのグローバルの資産価格の上昇の波をしっかり恩恵を受けれることが出来て、本当に良かったと思います。

https://www.gpif.go.jp/

いずれにせよ、我々の公的年金はダントツ世界一位の金額の基金に支えられているし、その基金の運用もとてもうまくいっています。ある意味で世界が羨むような状況なのに、日本の年金制度が破綻するなどの声が出るのは、本当にオカシイと感じてしまいます。

・誤解③:「払い得」や「払い損」という考え方について


この誤解は既に色々なところで指摘されていますが、元本に対してのリターンを計測するような「払い得」「払い損」という投資的な考え方が、年金制度を評価するにあたって誤っています。公的年金は、相互扶助のための制度です。社会全体の豊かさのために、結果の不平等を許容する自由市場の社会の中で、お金のある人から無い人に所得を再分配して社会を安定させるための仕組みです。

また年金は、保険であって投資ではない。予想以上に長生きをしてしまった長生きリスクや、稼ぎ頭の配偶者が死んでしまったリスクや、障害を抱えてしまうというリスクに対しての保険をかけている制度です。いざとなった時に保険金が入ってくる仕組みであり、預けたお金が増えて戻ってくる思想のものではありません。

社会保険も税金も同じですが、相互扶助や所得の再分配という仕組みにおいては、健康で能力がありお金を稼げる人たちは、そうでない人に対して金銭的に損をするのは当然と言えます。

社会保険は保険です。自分が社会的弱者になった時は払い得になり、自分がそうでないまま一生を終えたら払い損、で何が問題あるのでしょうか。

また過去の高齢者がもらい過ぎで、今の若者はもらえる額が少ないという議論は、過去は年金制度がなかったため自分の親世代の面倒見なければならなかったなど、そもそも比べられるものではないことが、よく指摘されています。その通りだと思います。XX世代が得である、XX世代が損であるという議論、もっというと世代毎にステレオタイプを張って議論するのは、かなり乱暴です。時代背景も社会情勢も全然違う訳ですので。

戦争に行かなくてはいけなかった世代もあるし、経済が伸びていた世代もそでない世代もある。これからどうなるかも全く分かりません。日本の中でのここ何十年という、我々の長い歴史から見れば大して違いのない比較の中で、自分は損した得したという目線をもっても仕方ないと思います。世界は広いですし、歴史は長いし、世の中はそもそも不安定なものです。

またメディアで見られる極端な世代間格差の表などは、現在の現役世代の保険料支払いの上限が取っ払われてさらに上昇を続けるという、トンデモない前提を置いている資産結果であったりします。こういう情報にも非常に注意だと思います。

・誤解④:ねんきん定期便での年金支払額の表示が正しくないので年金制度は危ない

と、ここまでどちらかというと日本の年金制度は大丈夫と擁護してきましたが、この誤解④は政府に「直してほしい」ものです。

厚生年金の保険料は半額を事業主(勤務先)が負担しており(労使折半)、我々が払っているのは半分の9.15%分ですが、実際にはその従業員の名前で18.30%が納められています。

ただし、日本年金機構が個人に報告している個人の厚生年金側の支払額は、労使折半の額ではなく使用者が額面から徴収されている半分9.15%だけなのです。企業の負担まで入れると、個人に紐づく支払い保険料は倍であるのにです(国民年金ではこれはありません)。

以下にあるような表の保険料負担額も、折半の半分の負担額が採用されていることが多いです。この表は少し古いも2014年の試算になりますが、現在55歳以下ぐらいの人であれば、インフレなどを調整した後に、厚生年金の場合は支払った保険料の2.3倍の年金がもらえるとされていますね。ただ、実際のこの数字は半分程度が合理的な数字と思います(国民年金は、このままで理解して大丈夫そうです)。

https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20191015/se1/00m/020/021000c

次回に続く

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