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週刊 マーケットを読み解くゼミナール 2021年8月30日【国内株式は戻りを試す動き】

週刊 マーケットを読み解くゼミナール

2021年8月30日号                     

講師:神代龍児(こうじろりゅうじ)


【国内株式は戻りを試す動き】

 今週の国内株式相場は、堅調な米国株式の動きや、東京都の新型コロナ感染者数の減少傾向を受けて戻りを試す動きになりそうです。一方、米国株式は大型景気対策や超低金利の継続見通しを背景に、底固い値動きが続くとみられます。


 そうした中、アフガニスタンからの米軍撤退の期限となる8月31日を迎えるなか、仮に状況が一段と悪化するならば、株式市場が神経質に反応すると見られることには注意が必要です。


<新型コロナ感染者数の状況次第>


(横浜市長選挙を織り込む動きが一巡)
 先週の日本株は自律反発した後、27600円台半ばにある25日移動平均線を意識しながら値固めの動きになりました。


 自律反発の要因は、横浜市長選挙(8月22日)に向けたポジション整理の動き(与党が敗北することを見越して株価を売り込む動き)が一巡したことです。特に、19日(木)、20日(金)に日経平均株価が一時27000円を割り込んだのは、与党敗北を見越した売りが優勢になったためと見られます。


 実際、横浜市長選挙の投票締め切り(22日午後8時)の直後に、野党候補に「当選確実」とのNHKニュースが流れたことを見れば、投票前の19-20日にはすでに、与党が敗色濃厚との推測が市場には流れていたはずです。言い換えれば、この時点で横浜市長選挙の結果が株価に織り込まれたとみることができます。



(総選挙を占う)
 同市長選挙が市場で注目されたのは、菅総理が与党候補への支援を明確に打ち出したことで、この市長選挙が菅政権に対する国民の姿勢を見極める選挙となり、秋の衆議院総選挙を占うとされたためです。そのような国民衆目の選挙で与党候補が惨敗したことを受けて、自民党には相当な危機感が走ったとみられます。


ただ、その危機感こそが株価反発をもたらしたとみられます。菅総理が続投を目指すならば、一段の新型コロナ対策が必須です。横浜市長選挙の結果は、新型コロナの感染者数が拡大していることへの国民の不満が与党への批判につながったことは間違いないからです。言い換えれば、新型コロナ感染者の増減が自民党の得票数(獲得議席数)に直結するとみられます。


したがって、市長選敗北による危機感により、菅政権がこれまでのようなワクチン頼みではなく、コロナ禍収束のための一段と踏み込んだ対策が打ち出すことにより、「経済活動の再開時期が次第に見えてくるはず」との期待が、先週の株価の押し目買いにつながりました。



(日本株に割安感)
 もう一つの株価反発の要因は、日経平均株価の27000円は割安感のある水準であり、長期投資家からの押し目買いが入ったと見られることです。


 表は、直近の最安値27013円を付けた先週末(20日)における予想PER(株価収益率=株価÷一株当たり利益)を示しています。


 この時点で、日経平均株価のPERは16.7倍に低下し、過去10年の平均(17.5倍)を0.8ポイント下回っています。言い換えれば、予想一株当たり利益と比較した株価は、経験則(データ)に基づけば割安だということです。


 特に、NYダウの予想PERは現状19.1倍で、平均(16.1倍)を大きく上回っていることと比較しても、日経平均株価の割安感が強まっている状況です。


 したがって、日経平均株価の27000円は割安だとして、ファンダメンタルズを重視する長期投資家から押し目買いもあったでしょう。



(日米株価の格差拡大も買い要因)
また、3番目の自律反発要因として、日米株価の格差に着目した買いがあります(日米の株価グラフを参照)。


日経平均株価が昨年の終値(27444円)をかろうじて上回っている状況(前年末比0.4%高)に対して、ナスダックは同17.4%高、NYダウは同15.8%高と大きく上昇しており、日米の格差は歴然としています。


このような場合、ナスダックを売って日経平均株価を買う取引(ロングショート)が活発化する可能性が高く、そうしたパフォーマンスのかい離に着目した買いも日経平均株価の下値を支える要因です。



(総選挙と感染者数)
 今後の国内株式の争点はやはり秋の総選挙の行方であり、そこには新型コロナの感染数が大きく関係してくることは、横浜市長選挙の結果を見ても明らかです。総選挙の時点で新型コロナの感染が拡大していれば、与党は大きく議席を失う可能性が高いとみられます。


市場では、与党の議席数が過半数を維持するとの見方が多数ですが、それでも議席の失い方によっては、その後の政策運営が不透明になることで、経済回復が遅れるとの懸念があります。もちろん、与党が過半数を割り込むことになれば、政情不安として海外投資家の売り圧力が強まる可能性が高いとみられます。


 したがって、与党が議席を守るためには、何としても新規感染者数を減らさなければなりません。そのために、菅政権は一段と踏み込んだ新型コロナの対策を打ち出すはずです。先週、政府が北海道など緊急事態宣言の地域を拡大し、宣言を国民の70%をカバーする地域に広げたことや、いわゆる「野戦病院」を設置する構えを見せたことは、総選挙を意識した面もありそうです。


 そうしたなか、東京都の新型コロナウイルスの感染者数が、足下で減少傾向を見せている点は、与党にとっては朗報です。菅首相が先日、「明かりは見え始めている」と述べたことは批判の対象になりましたが、東京都の状況を見る限り、的外れな発言ではなさそうです。


実際、東京都では23日の週明けから6日間はすべて、前週の同じ曜日を下回り、1週間平均の新規感染者数も約2カ月ぶりに前週を下回りました。
仮にこの傾向が一段と明確になれば、与党にとっては追い風であると同時に、政局の安定と経済再開の期待により、株式市場でも押し目買いが続くでしょう。


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