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FIREについて改めて考えて見た

FIRE(Finance Independence Retire Early)はコロナ禍での働き方の変化をきっかけに日本にも浸透していきました。

ブームとなった当時は株式市場が右肩上がりで上昇していたこともあり、「投資をすれば資産は拡大する」と思っていた方も多いはずです。ところが、2022年に株式を中心に資産価格が大きく下がった後はあまりFIREという声が聞かれなくなりました。

現在もFIREを目指して日々取り組んでいる方、あるいは既にFIREを達成した方もいると思いますが、日本においてのFIREを改めて考えてみたいと思います。

1.FIREを達成するとは?

まずは元々の定義のおさらいから始めます。

FIREは経済的自由+早期リタイアを指します。

具体的にはまず、
1.生活費の25倍の資産を形成する
2.資産の取り崩しを毎年4%以内に抑える

上記の達成を目指します。

達成すると資産を減らすことなく生活水準を維持することが可能となります。
このため、定期的な収入が不要となり仕事を辞めてリタイアすることができるというものです。

FIREは本来自由に暮らすことを目指したものなので、仕事は辞めることが前提だったのですが
・別に仕事は辞めなくても良い
・収入を気にせず自分のやりたい仕事をする
・ちょっと贅沢をしたい
・老後の不安がなくなれば十分
など様々な「解釈」が加わり、サイドFIRE、バリスタFIREなどの用語が登場し、現在に至っています。

広義に解釈すると「お金を気にせず自分のやりたいことに取り組みたいから、先にお金を稼ぐ」ということなんだと思います。

「仕事を辞める」ことは終身雇用(=定年まで何らか働き続ける)ことが前提の日本においては躊躇われるところがある点、そもそも稼ぐには働くに越したことはない、精神的自由は仕事を辞めたから得られるとは限らない等、REの部分については議論が巻き起こっています。

この動画の対談では早期リタイアに否定的な見解を示しています。

解釈が多様化し、議論が巻き起こっているためFIREに関しては「新たに考え直す・定義を見直す段階」に差し掛かっているように思われます。

2.FIREの難易度を押し上げている要因

FIREはアメリカから入って来たものです。

この本が先駆者的な役割を果たしたと思います。

・支出を減らす
・貯蓄率を年々引き上げる
・投資をする
・副業をして収入を増やす

FIREに関連する書籍、ブログ、商材、セミナーなどはこの基本フォーマットを踏襲していますが、それをブームの初期段階で示していました。

その後は上記4つの要素を分解して、どうやって支出を減らすか、何に投資したらよいか、副業のアイデアなどなど派生した様々な情報が生み出されています。

日本でFIREブームが起こったのは実際に達成した方が書いた

こちらの本、元々はブログが話題になったところから始まっていますが日本で30代でFIREを達成した人がいたという事実は追随する方、嫉妬する方など大きな反響を呼びました(どちらかといえば著者の方の経歴がきっかけのネガティブな反応の方が多かったですが)。

冒頭書いたようにコロナ禍の初期は外出もままならないような混乱の中でしたので、「家にじっとしているぐらいなら何かやるか」とFIREを志す方が増えることになったわけですが、それがTVなどでも紹介され始め、にわかに勢いづいたと記憶しています。

私もこの本を読みましたが、著者が最初の取り組みとして挙げた節約(著者の方は「支出最適化」と言い換えていますが)ルールに無理があるなと感じたのが今でも印象に残っています。

この中で無理なく取り組めそうなのは
・携帯(今だとスマホ)は格安SIM
・支払いは現金ではなくクレカで
ぐらいでしょうか。

あとは自分自身の意識次第という要素もありますが、何より厳しいと思ったのが
・(少なくとも)パートナーの理解が必要
・パートナーも同じ取り組みが必要
・家族全員の理解が必要
・家族全員で取り組む必要がある

これらが欠落していると思われた点、つまり「自分だけで完結する立場だからこそ実現できたのでは?」という疑問です。

また別の方のFIRE指南本も同様です。

こちらの本では著者おけいどん氏の取り組み内容が具体的に書かれています。

よく見るとツッコミどころが多い

書かれていること実現しようと思うとなかなか大変です。
例えば家賃、光熱費、交際費は「支出」と書かれているものの中に含まれているとすると書籍購入・外食・趣味などもお金を払って7~10万円ですが単身世帯で、家賃代が2万円程度だったとしてもだいぶ厳しいものがあります。

これは「家に入れる食費など」と書いてあるので、恐らくこの方は「独身・実家暮らし」と思われ。実家暮らしをしながらFIREを目指していたということであればこのプランは成立し得ると思います。

実はFIREを目指す場合、立場・状況・開始年齢によって難易度が大きく異なります。

・開始年齢が若い
・独身
・実家に暮らしていて、可処分所得が多い

この3つのいずれかを満たしているとFIRE実現の難易度は下がります。全部揃っていたらだいぶ楽になります。

また、早期リタイアの難易度も下がります。独身であれば反対する人はいたとして両親ぐらいでパートナーを説得する苦労がないので心理的負担が少ないと考える方も恐らくいらっしゃると思います。

反対に
・結婚している
・子供がいる
・開始が遅かった
といった状況の場合、難易度が大きく上昇します。

巷のFIRE論は割とこの辺をスルーしているか、認識していても割と無理なことを押し通してくるケースが多いように思います。

例えば不動産投資をしてFIREしようとか言われても既にマイホームを買ってしまったという方はどうしようもありません。「FIREしたいから家を売りたいんだ」と説得してどれだけの方が納得するのかという話です。

とはいえFIREのうち特に経済的自由に関しては子育て世帯の方が関心があると思われます。大抵はお金に困っている、あるいは教育充てたいのでお金を必要としているからです。

ところが経済的自由を目指す場合、子育て世帯が最も難易度が高い(抑えるのが難しい出費が多い)ので人によっては「無理なスキームの商品」に手を伸ばしたり高リスクの投資に手を出したり無茶なことをして悪循環にハマるというケースもあるのではと思われます。

FIREを達成するための取り組みとして「自己投資」があるのですが、これも「時間的余裕」が必要で、やはり単身者・若い方が圧倒的に有利です。

3.資産を増やす取り組みが大事

私は「FIREを再考する段階」に来ていると考えています。

実現可能性が低い節約や現実を無視した取り組みではなく、元々の定義を再確認した上で世代・世帯・状況のハンデをなるべく平準化させたやり方を再定義したほうが良いのではと思います。

FIREは元々「ゲーム性のある資産形成手段の検討」の部分が好評であった点が背景にあります。
・支出を減らし
・収入を増やす
・浮いたお金を資産を増やすものに置き換える

という要素はRPGゲームでクリアするために必要なアプローチに似ているため、仕組みを理解した人が積極的に取り組んで資産を増やした→自分のやりたいことを始めたとなったわけですが、シンプルでハマりやすいから人気になったというわけです。

ここに立ち戻ってFIREを考えてみましょう。

例えば
①できる範囲で支出を減らす
保険に入らないという選択は取れなくても、例えばかけている保険を安価なものに変えることは難しくないと思います。

スマホを格安SIMに変えるのも余程のことがない限りは難易度は低いです。

食費を減らしたり無理に旅行に行かないとかそういった「ストレスの溜まる節約」とは距離を置くべきですが、利用頻度の低いサブスク契約の見直し取り組みやすいと思います(サブスク全解約は無理にやらなくて良いと思います)。

②とりあえず教育費を貯めるための投資から始める
老後の備えは超長期スパンですし、FIREは「なる早で達成したいという欲求」を呼び起こすため、ハイリスク投資に手を出しかねないので、まずは「少し先のニーズに向けた準備」として例えば、

・子育て世帯なら教育費、受験費用の準備
・お子さんがいない夫婦なら出産準備費用、子育て費用の準備、あるいは自分達でやりたいことを実現するためのお金の準備
・単身者であれば資格取得費用、贅沢な旅行をするための費用、趣味のお金

などを「投資によって準備する」ことから開始することで目的が明確な分、実現可能性が高いと思います。

投資で資産を増やしていく習慣をつけることが大事で、これを止めずに継続することでいずれは老後の備え、そしてFIREに繋がっていくことになります。

一番のポイントは「投資資金が増えると資産が早く増えていくのを体感すること」です。これは見て聞いて分かるものではなく、体感して初めて理解できるもので、RPGでいうと攻略マップを手にするようなものです。

ここに気がつくといかに投資資金を増やすかに関心の目が向かうことになります。パートナーや家族がいる方は数字で実感し、理解を得るきっかけになるので、いつ始めても良いけど始めるならなるべく早く投資を始めましょう。

③早期リタイアはお好みで

FIREのRE、早期リタイアは言ってしまえば「自由に考えて良い部分」だと思います。

今の仕事が嫌だからFIREという方もいますが、それは必ず退職しないといけないものなのですか?例えば配置転換で解決する場合もありますし、下手したら誰かに相談すれば解決するものかもしれません。

また反対に今いる会社に絶対にしがみつかないといけない訳ではないので、副業で自分のやりたいことをすれば解決するなら副業を始めれば良いですし、転職するのも良いと思いますし、実は起業したかったというのであれば起業起業すれば良いと思います。

その時にお金の問題がつきまとうのがよくないからFIREの考え方が広まったものなので、なんでも早期リタイアありきで考える必要はなく、自分の好み・立場・状況を踏まえて最適だと判断したところをゴールとすれば良いと思います。

そう言ったことを考えるきっかけに過ぎないと思えば良いわけです。

経済的自由・早期リタイアはあくまで1つのパターンに過ぎず、大事なのは資産形成の良い習慣づくりだと思います。これが実現できれば後のことも自分や家族が描いたデザイン次第ですが、実現する可能性は上がっていくものと思われます。

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