BMWのバイクとは
いつも見て頂き感謝でございます。
バイクで旅をする写真家 立澤重良です。
今回は久しぶりにバイクのことを綴ってみたいと思います。
私の現在の愛車は MOTOGUZZI V7special と ホンダスーパーカブ110 でございますが、2003年から約20年ほどはずっとBMWのGSシリーズを乗り継いできました。
GSシリーズとは道を選ばぬツアラーといった感じです。これは現在の【アドベンチャーバイク】というカテゴリーを打ち立てたバイク界の金字塔的な存在でもあります。
GSが一般に認知される以前はオフ車といえばビッグオフローダー、デュアルパーパス、モトクロッサーといったジャンルしかありませんでした。
私の大型バイクでのキャリアのほとんどはBMWです。
そこでBMWのシートを降りてから約2年が経過したいま、あらためてBMWとはどんなバイクなのか?を書いてみます。
ちなみに皆さんの印象としてBMWのバイクというとどうでしょうか? オジサンのバイク? バカ高い高級車? カッコいいようで垢ぬけない??
これは年代によって色々でしょうか。なにしろBMWに限らず多くのメーカーは製品とともにアイデンティティも進化をしているものですから。
私が最初に乗ったBMWは2003年のことで F650GS Dakar というモデル。
これは水冷単気筒を搭載したBMWのエントリーモデル【Fシリーズ】のオフロードに特化させたラリーレプリカでした。
このバイクに乗った最初の印象は座り心地の良いシート、体のどこにも無理がかからない快適なポジション、扱いやすいエンジンの特性でした。
長距離を乗っても疲れない、移動する平均速度が速いので限られた休暇の中で遠くまで行けるのが何より嬉しかったのを覚えています。
その後、2008年に水平対向エンジンのR1200GSを購入し、2014年にはR1200GS‐adventureを購入。これは買い替えではなく増車で、ここから約8年間もの間、GSとGSアドベンチャーの2台持ちという奇妙な体制でバイクライフを歩んでまいりました。
F650GSダカールの時よりも、更に遠くへ、さらに冒険のツーリングへ、と私のバイクライフが進化していきました。
BMWについて書き綴る前に、こういったインプレッションを書く前提としてお伝えしたいのですが、個人のインプレッションとはどういった人物が書いているのか?がとても重要だと思います。
それを言っている人がどのようなキャリアで、どのような趣味で、主観で言っているのか、客観で言っているのか?
多くの個人のインプレッションは自分のキャリアと好みを基準にして主観的に発信しているものが殆どです。
ビギナー、ベテラン、スポーツ志向、ツーリング志向、実用志向、メカやカスタム、コレクション志向などなど。どこにも平均ラインをひくことができず、全ての人がどこかに偏った「好み」があるわけです。
ですからインプレッションは書く人の自己紹介って大事だと思うのです。
ちなみに私はバイクキャリア35年で、メーカー勤務の多かった技術系サラリーマン。
一時期はバイク用品メーカーで開発をやっていて元業界人でもあります。
10代の頃はサーキットも走りましたが、現在はツーリングがメイン。しかし旅先でも峠道や林道は楽しく走りたい口です。
キャンプツーリングを好む単独行動派でイベントやマスツーリングなどは苦手です。
インプレッションとはどのような人物が書いているのかが重要・・・
ですから他人の書いたインプレッションなど、この記事も含めてほんの参考程度にしかならず、最終的に自分が選ぶべき選択は自分の考えと直感で決めるしかありません。そしてバイク選びに限った話ではありませんが「なぜこれを選択してしまったのだ」という失敗を避けて通ることはできないのです。
本当ならその道の一家言の率直な意見を知りたいのですが、プロのライターさん、ジャーナリストは大人の事情で本当のことをストレートには書けず、制約の中で無難に書くことを強いられています。
つまり本当の意味で受け取り側にフィットした情報というのは少ないのが実情なのではと感じます。だから情報に頼らず失敗しても良いから、貴方の心が「それだ!」といった一台を勇気をもって選びましょう。
さて本題ですがBMWってどんなバイクなのか?BMWってどうよ?と聞かれて一言でいってしまうと【BMWはツーリングの優等生】です。ハードボイルドな不良でもなければ一年生でも乗れるオモチャでもありません。
先進の技術をとりいれてニューモデル毎に進化するのはメーカーの常ですが、BMWの場合はその技術が独創的であり、そして安全面や環境面に対しても古くから(80年代くらいから)対応していました。
例えばサスペンション。
テレレバーサスペンションというフロントサスは突き出たA型アームがスプリングを抱え込み、フォークはオイルのみのダンパーです。これによりブレーキ時の前のめりな沈み込みを抑え、制動時のギャップ通過も剛性が高いのでスムースにタイヤが路面を追従します。
言葉で説明してもピンとこないのですが、はじめて乗ると軽くショックを受けるほど良くできたサスペンションです。
2年前、MOTOGUZZI V7に乗り換えて、走りなれた千葉の山道を走ったとき、この道はこんなにもギャップやうねりがあり、気を遣う道だったのか!とはじめて気が付いたほど、それまではBMWのサスペンションがそれを吸収していたのだと気が付かされました。
BMWのアイデンティティーと言えば左右に張り出したエンジン、水平対向二気筒エンジンです。セスナ機のエンジンをそのまま縦置きに搭載した様子はそれだけで個性的です。
私が乗っていたR1200GSまでは空冷エンジンですので、メカの好きな人にとっては趣のある雰囲気も魅力です。これは現代のバイクが失ってしまった機械臭さというのを最低限残してくれていたギリギリの時代だったと感じます。
この水平対向のツインエンジンは、アイドリングはズドズドズドズド・・・と車体を左右に揺らして鼓動し、低回転域では太いトルクで大きな車体をグイグイと前へ押し出し、一定の回転域からはセスナ機が大空を舞っている時のようなブーーーーンといった滑らかさが出てきます。この辺の変化の仕方が今、私が乗っているMOTOGUZZI V7のV型エンジンと違う部分です。
しかしBMWの場合は機械の雰囲気を保ちつつ、細部の設計にいたるまで最新のテクノロジーを惜しみなく投入し、その制御も徹底してハイテクを投入してツーリング、スポーツ性のパフォーマンスを高めています。
80年代のモデルからABSを搭載していたBMW。キャタライザー(排ガスをクリーンにする触媒装置)もだいぶ以前のモデルから装着されていました。
長距離を安全で快適に、それでいて楽しめるよう走りも追及している。いや・・・安全を追及した設計だからこそ楽しめるバイクといった方が適切かもしれません。
サーキットや最高速など数値にできる性能だけを追求したのではなく、あくまでツーリングや走りを楽しむことに主軸を置いた設計理念があり、そのために革新的な技術や電子デバイスなどを含めたハイテクも投入する。
バイク用品メーカーで開発をしていた時はテスト車両やメーカーの広報車両もよく借りてテストライドをしていました。
BMWも自分の乗るGSシリーズとは違う、たとえばK1300S、F800Rなども乗りましたが直4エンジンも並列2気筒のモデルも、どのモデルにも共通して言えるのは安心して乗れる扱いやすさです。
唯一、ハードルが高いのは大柄な車格であり、これは本国ドイツでは大きい人が多いことに由来すると思うのですが、最近のBMWはGSを含めて一回り小さくなったと聞きます。
ちなみに私の乗っていた空冷ヘッドのR1200GS‐adventureの場合は身長は180㎝くらいはないと不安がでるものです。
しかし見た目の大きさからは全く想像がつかないほど、走り出した直後から軽快です。ヘアピンもS字も、交差点もUターンも、嘘みたいにヒラヒラと向きをかえ、自分が上達したのだと勘違いするほどです。
意のままに動いてくれる素晴らしさ、怖くない加速、よく効くブレーキにため息が出るほど関心するものです。特にコーナーで旋回中に何らかの理由でライン変更をしたいとき、視線を向けるだけでアウトにもインにも進路を変えることができるのです。
それが誰にでも出来るのですから不思議なのです。
高速道路を使ってビューンと遠くまでワープして、下道におりて山岳道路を走り紡ぎ、海岸線に出て遙かな岬を目指す。そして宿泊地につくころ疲労困憊ではなく元気が残っていなければ真のツアラーとは呼べません。
キャンプ場でテントを張って食事を作り、焚火の火を熾してカメラを出して星座撮影の準備をする。そんな体力を存分に残してくれていたのは、他の何でもない、ここまで連れてきてくれたBMWなのです。
大きくて軽い、走り始めると小さくなって速い。足元で振動する水平対向エンジンが、その力をシャフト駆動で地面に伝える。進行方向に走る見えない力の軸が、駒のように作用してピッタリと地球にはりつくように駆け抜ける妙。
MOTOGUZZIも然りですが遠く異国のエンジニアに尊敬の念を禁じ得ないですね。
完璧な人間がいないのと同じように完璧なバイクもありません。BMWはとにかくツーリングが好きな人のバイクだと今でも思います。
引き換えにバイクの色気みたいのは他車に一歩譲る部分もあると思います。最近はどのメーカーも似通ってきましたが、やっぱり昔ながらの鉄の塊のような色気をBMWに求めてはいけません。OHV世代の旧車を狙っている人は別ですが。
はるか遠くまで走り、知的好奇心と冒険心を胸に秘め、それでいて走りも犠牲にしないスポーティーさを残すライダーにぴったりのバイクがBMWだと思います。
バイク選びとは今の自分にとってぴったりの相棒を選択をすることが肝要だと思います。そこは理屈ではなく直感も必要でしょう・・・。
「欲しいけど高くて手が出ない」という声も聞こえてきそうです。
ここ地味に重要なポイントなのですが、BMWって新車価格は確かに高いです。200~300万円がラインナップ上の平均でしょうか。しかし2つ型オチの中古車くらいだとかなり割安感が出るのもBMWの特徴です。
たとえばR259系エンジンというのを搭載している1150㏄世代のモデルなんか程度の良い中古車が50万円くらいでゴロゴロあります。人気がないモデルを買うのは抵抗があるかもしれませんが、乗ってみたら「嘘だろオイ」の世界が待っていますので、現代的に言うとコスパの良い買い物になります。
また長距離に強い堅牢な設計なので3万キロ以上走っている個体を安い値段で買うのは賢い買い物だと思います。扱い方や維持費などの面では現代の国産車と比較したら大きな違いはないと思います。
いままで以上にもっと遠くへ、いままで以上に素晴らしい走りを体験したい。そんな貴方にお勧めのバイクがBMWでございます。
最後まで読んでいただき有難うございました。