松野さんと河合さん3

今日は河合さんがお休みだ。

昨日ちょっと顔赤いなーと思ってはいたが、やっぱり風邪だったらしい。

今日の朝一でお店にお休みの電話をかけてきた。

だから今日の私は、真面目に働いている。

いや、いつも真面目だよ?

ただあんな風に気軽に話せる人がいないので、仕事の会話か、同僚に話しかけられた時に話す程度しか会話をしないから、いつもよりは真面目に見えているはずだ。

多分、おそらく、きっと。

「松野さん、次休憩どうぞ」

「ありがとうございます、いってきます」

私の前に休憩していた同僚にぺこりと頭を下げる。

それからインカムで他の同僚にも休憩に入る旨を伝えて、店舗奥の事務所に向かった。

ふぃー。やっぱ一人いないと疲れますなぁ。

そんな事をボーッと考えながら、念入りに手を洗う。

そして、ロッカーから出勤途中に買ったお弁当と飲み物とスマホを出して、席に着く。

スマホの画面を何となくロック画面にしたら、メッセージが来ていた。

誰だー?と思いながら開くと河合さんだった。

『お店大丈夫ですか?』

おぉ。さすが仕事熱心な人だな。

『お店は大丈夫です。だからちゃんと休んでください』

送った瞬間に既読がついた。

寝とけよ、病人め。

『松野さん、無理しないでくださいね』

『病人は自分のことを気にかけといてください』

ほんと、無駄に人に優しすぎる人だなぁ。

そこも河合さんの良いところなんだけど。

『松野さん』

『はいはい?』

『今日は副流煙なくて残念ですか?』

『残念ではないです』

勤務時間がずれていたり、河合さんがお休みの日だってあるのだ。

ないのは今日だけではない。

『松野さん』

『なんですか?』

『他の人の副流煙は絶対ダメですからね』

『そもそも副流煙は体に毒なんですよ?知らないんですか?』

と、送った。

それにもすぐ既読がつくが気にせずそのまま続けて

『寝ろ、病人。おやすみなさい』

と送る。そうするともう返事が返ってこないと知っているから。

持っていたスマホを裏返して、少しだけがさつに机にぽいと置いた。

さて、早くお弁当食べなくちゃ。


(他の毒なんて、河合さん以外の人と同じくらい興味ないっての)

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