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小規模事業者のブランディングにおけるターゲット設定は

ブランディングやデザイン、マーケティングというと「どんな人に届けるのか」がとても大事だと思っている方も多いでしょう。私もすごく大事なことだと思います。
でも、データを徹底的に分析して理想のターゲットを割り出せる人ってそんなにいないでしょう。私はできません。もっと言えば、理想のターゲットを割り出したところで、本当にそのターゲットが正しいかもわかりません。そもそも中小や小規模の事業者が、そんなデータマーケティングに予算を割けることはあまりありません。

だから、私は事業者が「届けたい人」と思う人をターゲットにしてもいいと思っています。ただし、基本をおさえる必要もあると思いますので、その点について書いていきます。


そもそもターゲットってどうやって決めるの?

マーケティングの考え方で「STP」というものがあります。
・セグメンテーション
・ターゲティング
・ポジショニング
3つのステップの頭文字を取ったもので、ターゲット設定の基本の考え方です。この考え方は知っておいて損はないですので覚えておくといいでしょう。

セグメンテーション

イメージとしてはマス目を作る感じです。市場を細分化していく作業です。

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人には年齢や住んでいる地域、職業、性別、好みや趣味などさまざまな属性があります。その属性で人々を区分けしていくイメージです。上記では年齢と居住地で分けています。

ちなみに、セグメンテーションをおこなう時にはさまざまな属性を用います。大きく分けて4つに分類されますので覚えておくといいでしょう。

□デモグラフィック(人口統計学的属性)
年齢、性別、職業などの統計データとして集積されるような属性です。もっともわかりやすく基本的な属性ですね。みなさんもターゲット考える時に「30代女性」とか思いつくと思います。まさにデモグラフィックですね。

□ジオグラフィック(地理学的属性)
居住地のように地理的な属性です。居住形態やエリアの特性(都市部、郊外、山間部など)、特定の拠点との距離(職場や学校までの距離)などもこの分類です。

□サイコグラフィック(心理学的属性)
趣味や嗜好、考え方、価値観、生活様式もこの中に分類されます。デモグラフィックとジオグラフィックの2つは誰もがわかりやすくシンプルな切り口ですが、サイコグラフィックは客観的に考えるのが難しい属性でもあります。例えば趣味という切り口で考えた時に、釣りに裁縫、料理に家庭菜園、スポーツなどなど無数の属性が出てきてしまいます。すこし難しい切り口です。
でも、最近は年齢関係なく共通する趣味を持つ人もいますし、ネットの普及でジオグラフィック的な属性は重要性が低くなってきています。このサイコグラフィックの属性はこれからの時代にとっては重要な属性になります。

□ビヘイビオラル(行動学的属性)
情報取得の方法や購買行動がこの中に分類されます。何かを買う時にどこから情報を得る人なのか、衝動買いをする人なのかなどですね。最近は「情報のシェアの仕方」という行動も重要です。購入後にどのように周囲へ情報を拡散してくれるのかは、今後のビジネスにおいてかなり重要な要素になります。

以上の4分類がありますが、あまりこれにこだわりすぎず市場を切り刻んでいくのがターゲット設定の最初の一歩です。この段階ではあまりターゲットを意識しすぎないほうがいいです。決め打ち状態になってしまうと、そもそもこのセグメンテーションの意味がなくなってしまいます。
自分のビジネス固有のセグメント要素を盛り込むことも大切です。飲食店であれば、食の好みや支払える価格帯など、ですね。

ターゲティング

セグメンテーションで細分化したものからひとつ選ぶことをターゲティングといいます。イメージとしては、先程作ったマス目のどれを選ぶか、という感じです。

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みなさんはこの前段階のセグメンテーションを行わないままターゲティングを行ってしまうので、どんな属性が自分のビジネスに関わるのかあまり考えていない状況でターゲットを絞ることになります。その結果「30代女性」とか「関東に住む20代のサラリーマン」のようにありきたりなターゲット像になってしまうのです。

しかし、ここで問題になってくるのが、どこのマス目(ターゲット)を選べばいいのか、ということです。(選ぶ際のいくつかの基準はありますが、今回は割愛します)先程も書いたように、データを分析してきっちりと理想のターゲットを見いだせる人もいると思いますが、多くの方はきっとできないでしょう。私もできません。
分析には経験も知識も必要ですので、誰かに依頼するとしてもお金と時間がかかります。大手であればコストを掛けて徹底的にできますが、中小、小規模事業者ではそこまでできません。

じゃあ、どうやってターゲットを選べばいいの?ということですが、まず最初は好きに選んでみていいと思います。自分のビジネスに合うだろうターゲット、新たに開拓してみたいターゲット、ボリュームゾーンで売上に貢献しそうなターゲット、など自分の思いを重視して選んでもいいでしょう。
私がこれまでに対応してきた中小、小規模の方たちは、そもそも経営者自身が強い思いを持っていました。「こんな商品にしたい」「こんなひとに届けたい」という気持ちで溢れています。たとえコンサルや支援機関からアドバイスを受けたって、自分が考えていることを試してみたいと思っている社長はたくさんいるはずです。だから、まずはその気持ちに素直に従うのがいいと思うのです。

ポジショニング

次のステップは競合などとの比較をして理想のポジションを探す作業です。ターゲットにとってどの立ち位置からメッセージを伝えればいいのかを考えます。正直言って、この作業も徹底的に競合を調べ上げることができない中小、小規模にとってはある程度の目安としてしか機能しません。あくまでも社内や関係者と方向性を共有する指針の一つとして考えるのがいいでしょう。
ポジショニングの縦軸横軸に何を持ってくるのか、ということは今回は説明はしません。

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ここで「競合とかぶってしまうから別のターゲットにしよう」「誰もいないポジションということはそもそも商売にならないのでは」と思った場合は再度ターゲットを設定し直します。行けそうだと思うなら決定してまえへ進めばいいのです。

ここまででSTPの大まかな説明と、中小小規模のターゲティングの現実をお話しました。「じゃあ、ターゲティングやポジショニングで失敗したらどうするのよ」という声が聞こえてきそうですが、そもそも失敗すればいいのです。

失敗をすることが大事

ターゲティングについて無責任に書いてしまいましたが、ターゲティングに正解なんてないのです。アプローチの仕方がミスマッチを起こせば、どんなターゲットを設定したとしても不正解。逆に、見込みのなさそうなターゲットを設定しても、やり方次第では攻略が可能かもしれません。

うまくいかなければ検証をして修正し、また挑戦をして検証をして修正。うまく行ったらそこに注力をしてみる。その繰り返しです。ブランディングに終わりはないし、常に試行錯誤の連続です。

多くの中小、小規模事業者は、そもそも失敗をするようなチャレンジをしていないことが多いです。数百の事業者と話をしてきましたが 、ほとんどの相談者が改善の材料になるような取組をしていない場合ばかりでした。まずはターゲットをどうこう考えるよりも、なにかアクションをすることが大事。そこから見えてきたことをもとにして次のアクションを考えていくことが必要です。

ちょっと雑な言い方で「ターゲットなんて好きに決めろ」みたいなことを言ってしまいましたが、そんなことよりまずはチャレンジしましょうということです。そこがスタートだと私は思います。

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