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【投機の流儀 セレクション】機関投資家の動きとシタタカな個人投資家

新年度入りは東証システムの不具合もあって不調に始まったが、一番大きな点は、機関投資家が3月の月中値段が簿価となるため、新年度入りで利益が出ているものは取り敢えず利益確定しておこうという売りがあったと思われることである。

それは3月の値上がり幅の大きい銘柄が売られ、逆に足元で株価が低迷していた銘柄ほど売られていない。国内の機関投資家は3月の月中平均株価が簿価となるから、月初にそれよりも高ければ売っておこうという運用者の腹積もりであろう。東証が新方式になって2日目の5日火曜日も同じ状態が続いて、膠着状態であった。

個人投資家は、クライアントの意見を聞いたり、株主の意見を聞いたり、投資家の意見を聞いたりする必要が一切ない。また、会議を開いて決める必要も一切ない。この点で、個人投資家が一番自由に動けるはずである。安値で買うのは個人投資家であり、そのシタタカさがうかがえる。
これらが東証の発表する投資主体別動向でうかがえる。上昇が続くと売り越しになるのも個人投資家である。その時に買い越しになっているのが、海外投資家である。これからは、相場の膠着状態の中で比較的狭いレンジの中での局地戦が続くであろうと思われる。

大勢は読みにくい。コロナ明けの景気回復は、既に昨年2月の30000円台と昨年9月の3700円台で織り込んだ。つまり、一昨年3月から始まった「青春期相場」は一昨年3月の16500円を大底として始まり、昨年2月の30000円台で一旦終焉し、そこから押し目をつくって、また仕切り直しをして出直した「壮年期相場」は昨年9月の30700円で一旦終焉したと思ったほうが無難である。

本稿では、昨年のうちから「3月の30000円台と9月の30700円とがダブルトップになる可能性がある」と不吉なことを言ってきたが、残念ながらそれが的中してしまったようだ。
したがって、今は「老年期相場だ」とはっきり思っていた方がいいと思う。但し、老年期の方が壮年期よりも高いという例も時々ある。エリオットの波動で言えば、第3波動の方が第2波動よりも高いという表現になる。現に、アベノミクスの壮年期相場(平成16年)よりも平成18年10月の34000円の方が高かった。「不景気の株高」というのは、今は該当しない。
「不景気の株高」というのは、景気が「後退期」を過ぎて「収縮期」に入り「谷」に向かっていく途中、または「谷」の真ん中にいる時の話しである。筆者のパートナーの石原健一が作った概念図の右側の長方形である。その時に株価の景気先行性が発揮されて、現状は不況だが、将来の夢を見て株だけが上がる。これが「不景気の株高」であって、老年期相場の中で不景気の株高というのはない。これからは局地戦だと思っていた方がいいだろう。
但し、老年期相場が壮年期相場を超えて、つまり昨年9月の30700円を超えて、尚上に進むことは絶対にないとは言えない。再度、念を押す。

したがって、先々週から述べてきているように、あるいは「動画」で何度も述べたように、高値はいくら、安値はいくらと決め付けない方がいい。
先週号で述べた「無形の位」であり、「転(まろばし)」の心法である。

日経新聞の証券欄によれば、ニッセイアセットマネジメントのポートフォリオマネージャーは小型グロース株の買い増しをしたと言っている。昨年秋から株式のウェイトを減らしていたそうだが、足元では充分に調整が済んだと判断しているという。ポジショントークではないと思う。
ニッセイアセットマネジメントのポートフォリオマネージャーが言ったところで、大勢を動かすほどの影響力はない。したがって、ポジショントークとは見ないで、彼の意見だと思って素直に聞いておく方がいい。ただ、これも「参考意見」に過ぎない。
彼は言う。「昨秋までの相場ほどグロース株が有利になるとは見ていない」「個別銘柄の選別がより重要になる」とある。
また、フィデリティ投信のように、円安ドル高に焦点を当てて銘柄選びをし「ある自動車部品株を即座に買った」と述べている(日経新聞4月5日版の証券記事)。 

ファンドマネージャーというものは苦しいものであって、買わないうちに株価が上がれば責められる。そこで「買わざる恐怖」をいつも抱えている。その立場を理解してやった上での意見だと聞いておく方がいい。
その点、筆者を含めた個人投資家は自由である。何にも気にしないで済む。自分独自の分析や判断や行動で、自分自身の利殖活動を決めることができる。個人投資家が一番シタタカであるという言葉は、本稿では何度も繰り返した。

【 今週号の目次 】
第1部 当面の市況

(1)日本市場は買戻し主導のリバウンド相場は一旦終了し、当面は狭いレンジ相場か?
(2)当面の市況:「懸待(けんたい)一致(いっち)、一隅(いちぐう)を守らず」
(3)東証の準備不足、システムの準備不足
(4)機関投資家の動きとシタタカな個人投資家
(5)当面と中長期の動向
(6)自社株買い、前年度比68%増
(7)大学ファンドの影響は市場に出るか?
(8)4月4日から日本株市場が編成替えになったが・・・
(9)3月を期末とする1年期はどうだったか?
第2部 中長期の見方
(1)スタグフレーション、「不況期のインフレ」「恐怖の円安」
(2)「コストプッシュ型のインフレ」=「恐怖の円安」「悪い円安」
(3)20年間インフレを経験していない日本人
(4)「想定外に備えよ」「常在危機の投資術、現金は裏切らない」
(5)「東電株」について
(6)トルコ事情


【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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『投資で勝ち続ける賢者の習慣』
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『投機学入門 不滅の相場常勝哲学』(電子書籍)
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その他、著書多数。以下よりご覧ください。
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