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【投機の流儀 セレクション】日銀が10年以上もかけて大量に購入したETFはどう処分するか?

これの前例は1964年に大蔵省主導でつくった日本合同証券である。日本合同証券が株式市場の投げものを買い取って大量に株主となった例であり、それでも「日経平均1,200円」という「死守すべき線」を守れなかったので、1965年に証券保有組合というのをつくらせて、また市場の投げものを買い取った。そして、この両者が膨大な株式を持つに至った。ところが、それでも下げ圧力に抗し切れずに1,200円を割れて1,020円まで短時間で下げ、所謂「第二の昭和恐慌」と呼ばれる「40年不況」を生んだ。その時の日本合同証券と証券保有組合という公的機関が持った大量の株式をどうしたか。佐藤栄作首相のもとに福田蔵相が戦後初めての赤字国債を出して「いざなぎ景気」という戦後最長の景気をつくり出した。そして株価は大いに上がり出来高も大いに増えた。その途上で相当な利益を出して両社は保有株式をマーケットに売った。市場で売った。しかし、その例と今回とは少し違う。いずれは市場に売却するのだが、株式市場に日銀が大株主として存続すること自体が正当ではないところへ、その売り物を市場で買った個人・法人が損を被る場合に中央銀行に損させられたということになるから、これはまた大変微妙である。
したがって、一つの案としては、国民に直接売却するのではなく、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に引き取ってもらうとか、政府系ファンドを設立してそこへ移管するということになるのではなかろうか。GPIFも彼らは日本株を何パーセント保有するというポートフォリオの戦略が決まっているからETFを改めて引き取る余裕はおそらくない。時期を見て少しずつ日銀から買ったとしても、その分はGPIFの株式買いが増えないわけだから市場に対する悪影響にはなる。市場に悪影響を与えないように少しずつやるためには少なくとも数十年や一世紀はかかる。 一つの案としては、ETFを受け継ぐ専門機関をつくり、その機関が発行する政府保証債券を日銀が引き受けるという方法である。株式の集合体という高リスク資産を安全資産に変えるのは現実的であろう。ETFを市場で売却すると相場が崩れるに決まっている。ところが、日銀がETFを売り放してしまえばETFから来る分配金が日銀の収入全体の約半分を占めるそうだから(週刊東洋経済誌1月21日号による)日銀としては痛い。だが、日銀が再度言うがの大株主でいる、つまりETFを持ちっぱなしでいるということ自体が非常に不自然である。いずれは売らなければならない。その方向に進まなければならない。しかし、三重野康総裁のような市場を全く無視し、むしろ市場を破壊することを楽しみとするかのごとく見えるやり方はしないであろう。政策を転換しても金利が大きく上がるとは考えにくいし、そうなれば経済への影響も限定的である。但し、為替市場には直ちに影響する。そこがまた日銀の悩みでもある。

【今週号の目次】
第1部 当面の市況

(1)先週後半は膠着相場への極致
(2)FX先物取引1.2京円
(3)「ポストコロナ銘柄」については用心深くありたい
(4)投資信託に1兆円超の資金流入
(5)4月に日銀総裁が代わればどうなるか?
(6)問われる日銀の「市場との対話力」
(7)日銀総裁の交代を契機に日本の金融政策が変わる可能性がある――黒田総裁の誤りは確実となったが筆者は彼を弁護する
第2部 中長期の見方
(1)今年は滅多にないほどの大きな変化要因に囲まれている。好機と言えば好機であろう
(2)プーチンは切羽詰まった状態になりつつある
(3)企業の想定為替レートによる情報修正・下方修正があり得る年になるだろう
(4)バフェット氏の、「乱世の銘柄の選び方」
(5)当面の心配事ではないが、日銀が10年以上もかけて大量に購入したETFはどう処分するか?
(6)投資環境の外部要因として中国の動向に目が離せない
(7)日経平均は年後半3万4,500円もあり得るという見方
(8)インフレと株価
(9)「白紙の乱」が中国を焼き尽くすか?
(10)体制の変革はデモよりも軍事クーデターによる方が多い

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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