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【投機の流儀 セレクション】需給に勝る材料はない

先々週は月曜日から木曜日まで続伸、金曜日に一服しただけで今週は5日間全部が上昇相日となった。特殊な小型株が躍動しただけではない。大型株が復調し、オールドエコノミーが復調した。鉄鋼・自動車・電機などのオールドエコノミーの景気敏感株まで上昇して「揃い踏み」となった。大型株の復調は背景に海外勢の買いがある。大型株の上昇は新興株の東証マザーズ指数や日経ジャスダック平均よりも上回った。この揃い踏みは「懐疑の中で相場は育つ」のか、あるいは「勢揃いの大団円」となるのか、やがて市場そのものが答えを示すだろう。
一方、空売りは日々の売り注文のどのぐらいを占めるかというと、35%を占めるという。つまり、1年数ヶ月ぶりの低い水準となった。日々の空売りの低さがこの1~2週間の特色となっている。空売り比率の動きは日経平均の動きと逆相関の関係にあるが、35%台まで下がったことは一昨年10月2日の老年期相場の大天井の寸前の状態と同じである。

3月19日の「陰の極」の1万6500円台から1,000円の大台を6回変えた。その初動は空売り玉の狼狽買い戻しが作った踏み上げ相場であったことは間違いないが、その後も空売りの買い戻しが主導する上昇相場ではあった。しかし1,000円の大台を6回変えたその後半の需給増場は、慌てふためいて狼狽して買い戻す個人投資家の踏み上げ相場ではない。海外のヘッジファンドは現物でロングポジションを組み(買いポジション)、一方でそれをヘッジする空売りをかける。相場が上昇すると空売りを決済する、両建ての場合は片方は必ず損をする。しかし買っておいた現物株は値上がりするからその利益の方が大きければそれで利益となる。そういう内部要因が主導で動いているところへ海外資金が値の軽い小型株だけではなくオールドエコノミーにまで出動したとすれば相場の形は変わる。それが先週の姿だったと思う。ジョン・テンプルトンが言うように「懐疑の中で育つ相場」なのか、あるいは「勢揃いの大団円の完結の幕引き」が近いのか、これは市場そのものが答えを出すだろう。

昨年から今年始めにかけて本稿では、「2020年の市場のテーマは二つあり、①景気後退に入った世界景気が短期で持ち直すか中長期化するか、②2020年3月期は6%の減益だということは織り込みだが2021年3月期は増益になるのか、減益になるのか」、この二つだと言ってきた。この二つはコロナ問題によって自動的に解答が出た。

ところで、当期予想の6%の減益どころではない大幅減益が3月に現れ、21年3月は減益か増益か考えるなどという問題ではなく「見通しさえ立たない」という企業が何割も出てきている。今後市場が抱える中長期で抱える問題は「コロナ後の姿」であろう。

【今週号の目次】
第1部 当面の市況

(1)当面の市況:満月(6月5日)に向かって5日連騰した地合いは、週明けも買い先行で始まり、海外勢も参加しながらメジャーSQ(12日)に向かって総踏み上げ相場に
(2)需給に勝る材料はない
(3)経済情勢は悪くなり「谷」はいつか分からないというのに株だけは異常に高い(「異常」と見るか、「正常」と見るかは別問題)
(4)需給に勝る材料はない。今の空売り筋の買戻しは狼狽買戻しではない、もっとシタタカなカラ売り方の主導だと思う
(5)「激変相場の中をうまく泳ぎ切る必要はないのか」「遊泳の名人が激流を好むに似ている」(木佐森吉太郎)なのか
(6)私事に亘るが今回の上昇相場を、筆者はどう動いたか、簡略ながら報告――ポスト・コロナを睨んで
(7)東証マザーズ指数、2018年10月以来の高値
(8)第一市場は短期的には2万3500円もあり得るし2万円割れもあり得る
(9)日本取引所グループの株価が上場来高値を更新した
(10)個人投資家の空売りが2ヶ月で2.6倍に膨らんだ
(11)海外投資家が5月第3週に6週間ぶりに買い越しに転じた
(12)日経平均の価格帯と売買代金
(13)本物の大相場ならば全銘柄が「全員参加」で売買金額を伴って上昇するものだ
第2部 中長期の見方
(1)ポスト・コロナは経済が変わる
(2)ポスト・コロナの経済学
(3)安倍政権は検察人事で支持率急落したが、コロナ問題でも誤った原稿を読んでいた
(4)日本経済は勿論回復する。しかし回復は相当先になろう
(5)感染対策から経済再建に軸足が移ってきた
(6)「コロナデータの報道に異論あり」
(7)米中対立はますます激化する


【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。

ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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