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【投機の流儀 セレクション】処理水を巡る中国の嫌がらせに対して

経産省はもっと早く対処すべきだった。国民のアンケートなど、音声電話が総務省からよく来る。それを中国から嫌がらせ電話に対して、片っ端からそれで対応させれば良かったのだ。
「あなた方はご存じないと思うが、日本は国際基準よりも高い安全基準で処理水を処理しています。中国は日本の10倍以上の基準の処理水を日本よりも大量に流しています。冷静に考えて下さい。日本はあなたの国よりも何十倍も安全な基準にしたものを流しているのです」というようなことを1分半で約150回と嫌がらせ電話に対して、片っ端からこたえてやるぐらいのことは最初からやるべきだろう。

筆者は、中国から嫌がらせ電話が来ることは最初から判っていた。経産省も判っていただろう。そうなれば、出来ればIAEAと協力し(協力しなくてもいいが)そういうことをもっと早期からやるべきだった。
中国は処理水のことを核汚染水と表現して、放出反対の方針を一貫してきた。今度の件で、中国の反発は想定できたはずだ。中国の輸入停止措置に対して、外務省では「科学的根拠に基づかない措置は全く受け入れられない。即刻撤廃を中国に申し上げた」と語り、強い抗議の姿勢を示した。ただ、この時点で日本側と中国との議論がかみ合うはずがない。
IAEA(国際原子力機関)が放出のお墨付きを与えた報告書が出るということに中国は誤算があったと思う。また、隣国の韓国が処理水の放出に理解を示したことも中国は誤算であったろう。

しかし、中国側の強硬姿勢の真の狙いは、別なところにあった。日米韓の連帯強化を背景にした中国包囲網の形成に対する反対なのだ。日米韓は一体となって、処理水の放出に賛成した。それに対する意趣返しなのだ。
また、台湾有事を巡って「戦う覚悟を持つことが抑止力になる」と発言した麻生副総裁の言い分も、つまらないことで独裁国家に刺激を加えた結果になった。

海洋放出直後の8月26日に岸田首相の訪中延期が発表された。中国側はその理由について、公明党に「当面の中国環境の状況に鑑みて適切なタイミングではない」と伝えたという。しかし、中国側はキャンセルこそが想定外の出来事だったと思っているに違いない。

【今週号の目次】
第1部;当面の市況
(1)市況コメント
(2)9月8日は、3ヶ月に一度のスペシャルSQ日
(3)8日(金)のメジャーSQが、その後のトレンドを決める可能性が大いにある。
(4)メジャーSQ日に向かって高い、またはSQ日に向かって安いということは時々あった。
(5)信用買い残が2週間ぶりに減った。
(6)高配当・低PBR・低PERの銘柄に「はしゃぎすぎ?」の傾向
(7)日本版401k法・NISAによる「地殻変動」を狙うか?
(8)米景気と中国不況と日本市場の循環物色
(9)連騰8日目は全体の4割に年初来高値が示現した。

第2部;中長期の見方
(1)「9月の日本株は冴えない」
(2)「日本株高、第二幕の足音」
(3)中国経済の「日本化」と旧冷戦と違う難しさ
(4)中国経済の破綻と日本経済
(5)処理水を巡る中国の嫌がらせに対して
(6)FRBの利下げ開始はいつか? 
(7)中国経済の変調は、実勢悪の問題として日本への影響が大きい。但し、リーマンショックのように、金融市場の神経機能を破壊するようなものとは質が異なる
(8)政府は中小企業に適用する賃上げ促進税制の期限を延長する方針
(9)「30年ぶりの賃上げ」は政権と経営者が上から引っ張ると同時に、「連合」が下から突き上げる力がなければいけない。
(10)インフレマインドへのメガトレンドの変化を・・・
(11)海外マネーの流入はまだ序盤
(12)新興国株式型投信に新規資金流入が回復
(13)NTT株売却問題

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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『投資で勝ち続ける賢者の習慣』
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