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【投機の流儀 セレクション】日本の「稼ぐ力」は衰えていない

日本国全体の稼ぐ力のことを考えたい。2022年度の経常収支は9.2兆円の黒字で、前年度に比べて54%減少した。それは日本の国際的な稼ぐ力が衰えていることを示すものだという指摘がある。

ところが、筆者はたいした問題ではないと考えている。国際収支の受け取り額は179兆円で前年度より20%以上増えている。一方、支払額が170兆円で、前年度よりも32兆円増えた。つまり、稼ぐ力は20%以上強くなったのだが、使う方がより強く発揮されたので差し引きの黒字が減り、経常収支が赤字ということになった。
それならば使う方を減らす(つまり、輸入を減らす)または海外旅行を減らすということになれば、経常収支が増えるから稼ぐ力が増えたのかと言えば、そういうことではない。これは縮小均衡の考え方であり、家計で言えば稼ぐ力を考えるよりも使う方を減らして収支の差(貯蓄)を貯め込むという考えである。縮小均衡の考え方である。

日本の製造業の稼ぐ力は依然として圧倒的に大きい。モノの貿易の受け取り額は99.6兆円で、利子・配当などの受け取りの51.7兆円よりもはるかに大きい。旅行収支についてもその受け取り額は2.1兆円だから、製造業の2%に過ぎない。日本の稼ぐ力は衰えているとは一概には言えない。製造業は日本の稼ぐ力において圧倒的に大きな存在である。

以上は、旧経済企画庁・経済研究所長だった小峰隆夫氏(現在大正大学教授)の週刊東洋経済誌7月15日号への寄稿「『日本の稼ぐ力は衰えている』は本当か」における言い分とほとんど同一軌道である。

【今週号の目次】

第1部;当面の市況
(1)市況コメント
(2)「目下、整理調整中」年内は続く可能性あり
(3)7割以上の確率で、ダブルトップが今年は天井を打ったという見方
(4)騰落レシオ、6ヶ月ぶり低水準が示すもの
(5)東証の警告「目指せPBR1倍超」
(6)岸田内閣の経済政策には、安倍内閣時代の「三本の矢」や「黒田バズーカ砲」のようなパンチ力はないが、一つ一つが積み重なって、経済を活性化して株高を誘導する。
(7)夏のボーナス過去最高、2年連続で過去最高を更新
(8)日銀のYCC見直し警戒
(9)地銀系証券の仕組債の乱売に、金融庁が待ったをかけた。
(10)時価10兆円超の企業が最多となり、12社になった。
(11)円安進行にブレーキ要因

第2部;中長期の見方
(1)NISAの投資枠1800万円に拡大、時限立法を撤廃して恒久化─本稿の言ってきた「地殻変動」への第1歩
(2)インフレマインドへの目覚めと「資産所得倍増」「貯蓄から投資へ」
(3)日本の「稼ぐ力」は衰えていない
(4)TPPで、中国包囲網は固まりつつある。
(5)公務員でスタートアップ企業に転職する人が激増、昨年の転職数は2年前の4倍
(6)米大統領選挙、三候補のSNS分析
(7)日本のGPIF
(8)エルドアン就任後に10分の1になったトルコリラだが、トルコ株式市場には海外投資資金が大量に流入している。

蛇足
「わが追憶の大投資家、紀南の元町長のTさん」──多感な青春時代、魂の道場となった紀州半島、そこで大投資家から学んだもの


【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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