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【投機の流儀 セレクション】今のインフレは日銀が目標としてきたものと違う

「今の物価上昇は賃金の上昇を伴っておらず、本来目指している形ではない」と日銀が言っている。日銀が言わなくても事実を見れば一目瞭然である。物価高による苦境は企業にとって個人よりも大きく現れている。
消費者物価指数よりもさらに高い伸びとなっているのは企業物価指数である。企業物価指数は昨年1月からプラスに転じ、今年7月には+10%まで行き、8月中旬現在で+8.6%ぐらいである(前年比)。それに対して消費者物価指数は昨年半ばぐらいからプラスに転じ、現在は+2.4%となっている。したがって日銀が目標としていた2%インフレということに一応なっているが、賃金が上がらず消費者物価だけが上がる、また企業物価指数はその3倍以上も上がっている。そして企業がそれを売価に転ずることができずに収益力が弱まっている。こういう姿の物価上昇である。
企業物価指数というのは企業どうしで取り引きされる原材料などのものの価格を言う。企業側の仕入れコストが上がっているのにそれを商品価格に上乗せすることができない。それで企業の収益力が減る。企業によっては原材料価格の高騰などで来年3月期の決算が13年ぶりに減益見通しだというところがいくつか出てきた。値上げをするとその半年後ぐらいから売り上げが減ってくるという悪い影響が出るという。
2014年~15年の円安時代に売値を30%上げた企業は直ちに売上額が30%減った。そして価格を元に下げてもその回復には2年かかったという苦い経験がある。したがって、値上げは当面見送っている企業が多い。

【今週の目次】
第1部 当面の市況

(1)市況コメント
(2)内需株の好調
(3)4日続落で諸株一斉に安い中で東電だけが10%高をした背景
(4)自社株買いの今年度の取得設定枠は昨年同期比で6割増、但し、「自社株買いの銘柄は買いだ」という、今までの通念は通用しなくなりそうだ
(5)4日続落で日経平均は25日線との乖離率を殆どなくしたが……
(6)①FRB金利政策・②コロナ・③ウクライナ
(7)遣隋使ならぬ遣唐使、これをもじって岸田氏は「検討氏」と揶揄されかねない。この岸田首相は国政選挙空白の「黄金の3年間」を使い切れるか
(8)安倍元首相の非業の死を「チャンス」に変えた岸田首相の突破力とシタタカさに期待する
(9)岸田内閣が挑む「令和版富国強兵」
(10)今のインフレは日銀が目標としてきたものと違う
(11)4半期別GDPが「コロナ前に戻った」は本当ではない
(12)ウクライナ侵攻で資源インフレが続いているが一時的にガソリン価格が少し下がった。しかし、資源インフレは簡単には解決されない
第2部 中長期の見方
(1)「FRBは2023年をインフレのピークアウトと見込んでいる」――アメリカの景気後退期は極めて短いから所詮はボックス相場だと思って市場から目を離していたら機会を失うということだけは、筆者自身に対しての警告を含めた上で御注意を促しておきたい
(2)「弱気になるのは尚早か?」
(3)日本の景気に影響を与える米景気について
(4)米はインフレの高進がピークアウトの兆しか?
(5)日本には未だデフレ脱却のマインドはない
(6)安倍元首相の国葬についてと安倍レガシーの世評
(7)アベノミクス時代に二度の消費増税で物価目標は未達になった
(8)「台湾危機が日本に突き付ける選択」
(9)台湾危機に対する米中の問題
(10)先週号に続いて不動産価格について
第3部 読者との交信蘭
(8/23 剣道錬士I様との交信)

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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『投資で勝ち続ける賢者の習慣』
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その他、著書多数。以下よりご覧ください。
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