見出し画像

【投機の流儀 セレクション】価値ある情報は、ヒトが持ってくるケースが多い

具体的な例で言えば、個人的な体験からの引用で恐縮だが、2006年夏(リーマンショックの2年前)に「アメリカ発のサブプライムローン債券は極めていかがわしい点がある」と筆者が聞いたのは、アメリカ通の友人(元証券マンでアメリカに長かった人)からである。しかも、これは07年8月に仏パリバがサブプライムローンの崩壊によって破綻に瀕して、それが翌年にリーマンショックの淵源になった1年前である。

したがって、筆者は小泉郵政改革相場の真っ最中の佳境に入っている06年〜07年にかけて、保有株はほとんど全部売り切っていた。よって、リーマンショックでは全く無傷で、ほとんどの株は現金化した状態で迎えることができていた。そして、リーマンショックによって日経平均が8000円を割った時、当メルマガを始めた。そこで「今から下がっても1割、上がれば10割」と言い切った(実際には12.5%下がり、そこから250%上がった)。

この頃から当メルマガが注目を浴びるようになってきた。この最初に「サブプライムローンは極めて怪しい。字も読めないようなヒスパニアにも販売して、一部がAAA格のものを入れて、全体がAAAであるように見せて販売しまくって、これが諸外国の投資物件に組み入れられた。
どこかが一部でも崩れれば、全部が破壊するような積み木細工のようなものだ」いう話しを聞いていたので100%信用したわけではないが、そういうこともあり得ると思って、筆者は小泉郵政改革相場の最盛期に保有株の売りに入った。リーマンショックの時は全額を現金化した後だった。お蔭で、8000円から7000円までの安値を落ち着いて買うことができた。

このように本当に価値のある情報はヒトが持ってくる。他にも2014年にプーチンがウクライナに攻め込んだ時に「ウクライナの国債は100ポイントで償還することはないにしても、ここで買っておけばプーチンのことだから必ず儲かる」という話しもヒトが持ってきた。
もちろん、ロシアルーブルでは買わない。ドルで買った。結果的には1000万円の券面しかないそうなので、それ以下は買えないというから日本円で最低単位の1000万円を買った。結果的には短期間で412万円の利益を得た。これも「ヒト」(証券マンではなく、元外務省)が持ってきた話しである。ロシアに精通している友人の話しだ。

本当の意味の情報はヒトが持ってくるし、また自分が持っている情報もその人に与えなければならない。直接会って、情報交換し合うところが大事だと思う。人に会ってお互いに話すと色々な話しが出てくる。また、お酒が入ると本音が出てくる場合がある。筆者はお酒に弱いから、お酒の席でもシラフで聞いていられる。そうすると、シラフの時には出てこなかった「裏」が出てくる場合がある。この「表と裏を合わせて一つの価値ある情報」になる。

インフォメーション(情報)を分析して、かつ統合して、活用できる価値ある情報になった情報をインテリジェンスというが(★註)、そのインテリジェンスまで高めるにはある程度時間がかかるし、別の人に会ったり、本で確認したり、場合によってはその場所に足を運んだり、体を使って、五感を使って、ある意味で時間を使って獲得する必要があると思う。そこで裏と表と両方の情報の話しが出てくる。
静かな忍び寄りの足音を聞き取れるか、否かが問題だ─これについては来週号に述べる。

(★註)日本ではインフォメーションが「情報」と訳され、インテリジェンスは「諜報」と訳されているが、諜報というとスパイ大作戦のような活劇のような感じがするが、そういうものではない。情報を分析し、統合し、他の情報も合わせたりして活用できる価値ある情報に仕上げたものをインテリジェンスという。スパイ映画のような感じがするから、この訳語も実は奇妙なものだ。

【今週号の目次】
第1部;当面の市況
(1)市況コメント
(2)米金利上昇と日銀の意向に不安
(3)米金利高で、市場に不安感が高まる。
(4)一方では、海外勢は2週間連続して日本株を買い越し
(5)価値ある情報は、ヒトが持ってくるケースが多い
(6)海外投資家の日本株相場観
(7)一部には、投資家心理の悪化も出てきた。
(8)今の中東戦争は、1973年の第一次オイルショック時とは全く違う。
(9)中東警戒で、リスク回避の売りで先週週明けの大幅安─しかし、1973年の第4次中東戦争とは根本的に違う。

第2部;中長期の見方
(1)金融庁も「貯蓄から投資へ」に力を入れる。
(2)三大都市圏のアルバイトの時給が過去最高、これは吉報だ。
(3)賃上げが進まなければ、経済成長はない。
(4)CO2削減は一つの商機となるであろう。
(5)脱炭素というのは、成長につなげる商機である。
(6)IMFの試算
(7)「5年で」産業活性化に貢献
(8)長期停滞は、ようやく脱出できる段階に入ったと見る。
(9)デフレマインドからインフレマインドへのメガトレンドの変化
(10)「経済政策の立案の中心に経済成長を据えるのは間違いだ」
(11)化石燃料の需要の増加は2020年代中心で止まり、2030年迄にはピークを打つ。
(12)中国の不動産バブル崩壊
(13)米大統領選挙─既報で述べた楽観論は一旦、ここで撤回しておく。
(14)東京電力、9月に4年半ぶりに700円台に乗せたが、今後の問題─企業風土は、社外からは分からない。

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
https://amzn.to/2AebYBH
『投資で勝ち続ける賢者の習慣』
https://amzn.to/2vd0oB4
『投機学入門 不滅の相場常勝哲学』(電子書籍)
https://amzn.to/2AeQ7tP
『会社員から大学教授に転身する方法』(電子書籍)
https://amzn.to/2vbXpZm
その他、著書多数。以下よりご覧ください。
https://amzn.to/2va3A0d

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?