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【投機の流儀 セレクション】政局と株価──「丸呑み」に観る厭な既視感

政治資金問題で岸田首相が公明党と日本維新の会の案をそっくり受け入れた。つまり「丸呑み」した。丸呑みについて、筆者には非常に嫌な既視感がある。もちろん、株式相場に影響する話しだ。

1997年の日本の金融危機とは、11月の1ヶ月で国際的な二大証券会社と大都銀1社であった北海道拓殖銀行と数社の地銀がいっぺんに破綻した。その翌年、小渕内閣は発券銀行であった日本長銀を野党の一時国有化案を丸呑みして、バブル崩壊後の金融再生に一応の道筋を付けた。

その数年前の与野党の党首会談で、細川政権(★註)が自民党案を丸のみした。これはキングメーカーであって、政権を左右する小沢一郎氏の意見だったというのが定評である。裏事情は知らないが、筆者も小沢一郎氏の影響であったと思う。その結果、細川政権が目指していた「穏健な多党制」ではなく「二大政党制」の道を開いた。

丸呑みは新たな時代の扉を開くことがあるという既視感が筆者にはある。「丸呑み」は政権基盤の弱さの裏返しである。岸田首相は故小渕首相とよく似ている。株式市場に理解を示し、人の話しもよく聞くが、権力への執着は人一倍強い。他党の案をそっくり受け入れる「丸呑み」は、先が怖い。政局の安定は株式市場にはアダとなる。

(★註)細川護熙氏は戦国時代からの細川家の末裔であり、細川家と言えば、信長・秀吉・家康という全く性格の違う三代に仕えて生き延び、熊本藩の藩主となった戦国時代からの「寝業師」であり「要領師」であった。巌流島で佐々木小次郎と武蔵とを決闘させたのも細川藩であり、小次郎を倒した武蔵を晩年に厚く迎えて厚遇し、厚く埋葬したのも細川藩だった。
その末裔の細川護熙氏は1980年代後半(筆者が三井の九州支店長を務めていた時代)に熊本県知事となった。そして、昨今では小泉元首相と組んで原発反対運動の行脚をした。戦国時代からの寝業師であり、要領師である家系だ。

細川護熙氏は筆者と同年同期であり、筆者らが60年安保を巡って学生運動の時代であった「政治の季節」だった1960年、国会前で死者まで出た。その時に学生運動から超然として無関係で、その頃の言葉で言えば「正義不正義への不感症」であり、上智大学では学生運動には一切参加せず、ゴルフ部でゴルフをやっていた男である。
ゴルフが悪いというのではない。寝業師であり、根本的に要領師の家系で政治不感症の家系なのだ。こう述べると細川氏のシンパの読者諸賢には嫌われるだろう。しかし、筆者は思ったことをストレートに書き、述べることを旨としてきた。ご容赦願いたい。

【今週号の目次】
第1部;当面の市況
(1)保合相場を形成する需給要因
(2)上がるか下がるかという、二項対立の問題にしてしまっては難しい。
(3)5月はこんな月だった─月間の値幅は、昨年2月以来の狭さだった。
(4)株価を構成する3要素が相互に絡み合う。
(5)政局と株価──「丸呑み」に観る厭な既視感
(6)7月8日解散、23日公示、8月4日投開票説??
(7)TOPIXは2ヶ月ぶり高値
(8)日本では「金利引き上げ=株安」という思考法は当たらない。
(9)ラピダスへの融資に対して政府保証を付ける案は、北海道電力の株価に仕手的に妙味もあり、リスクもあるという影響があり得る。

第2部;中長期の見方
(1)為替市場も株式相場も、誰もが語り、誰もが騒ぐ時がピークであり、ボトムでもある。
(2)円安に対するスタンス
(3)「外来の圧力から来た危機を自国のためになるように好転させる」という、明治維新以来からの日本の得意技が発揮されたように思える。
(4)日本にとって好ましい「需要主導型のインフレ」と、好ましくない「コストプッシュ型インフレ」
(5)24年ぶりの円買い単独覆面介入は、事後に容認された。(6)米経済と米利下げの可能性
(7)NY市場に潜むリスク―─コストプッシュ型インフレからスタグフレーション予測も
(8)結局は、原子力発電に行くことになる。
(9)既存のFAANGとは別の「FAANG」
(10)取引時間を長くして、幅広い投資家の取引時間を広げるという。
(11)業績見通しは弱気になる材料も、内外ともにたくさんある。しかし、それを帳消しにする明るい見通しも、内外ともにたくさんある。
(12)今回の米景気は政策主導型であり、官製完成型であることには間違いない。
(13)トルコのインフレ率75%、5月は1年半ぶりの上昇率
(14)トルコ事情 (アンカラ 6月4日 ロイター)

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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その他、著書多数。以下よりご覧ください。
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