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【投機の流儀 セレクション】「日経平均、なぜ3万円を嫌う」か?

日経平均は3万円台にあと100円というところまで来て届かない。2月の3万700円、9月の3万700円、この7ヶ月置いたダブルトップを大きく抜けば これは史上最高値4万円~5万円を目指すとしても政策の適宜を得れば理屈なしとは言えない。それは「新資本主義」の序曲となる 、まさしく「新資本主義の序曲としての青春期相場」となるであろうが、3万円に乗せることを何故そう嫌うのか。「意地でも3万円は付けない」と言っているように見える。

25日線との乖離は1%台、騰落レシオは80%台、いずれも決して「買われすぎ」の状態ではない。何故、高値圏のレンジ相場を脱し得ないのか。

FRBは量的緩和の縮小を決めた。来年は最低二度の利上げがあるだろう。これは織り込み済みである。また、世界の景気回復が予想通りには行かないが回復するということもまた織り込み済みである。しかも、我が国の来年3月期決算は大幅 な驚異的な増益が進んだ。これも織り込み済みである。
コロナの第6波は来るか、来たとしてもそれに対応する体験智は積んできた。制度も進んだ。これも織り込み済みである。
そうすれば、何故日経平均は3万円を嫌うのか。これは一つに岸田政権の経済政策にある。「新しいしい資本主義」という宏池会伝統の経済重点主義の具体策がいまひとつ見えてこない。宏池会の先輩池田勇人元首相のように「10年でGDPを2倍にする。意訳して所得倍増計画」というように具体化していない。小さな政策をチマチマと並べてみても、それは「新しい資本主義」としてのインパクトは少ない。その政策に対応する個別の銘柄が反応するに過ぎない。田中角栄元首相の「列島改造論」は具体的で明確だった。本当は列島改造相場ではなくてその前年の円ドル相場の急変に対する危機を収めるために放出された過剰流動性の相場であったのだが、これを「列島改造」に置き換えたところに田中角栄の言葉の力があり、株式市場も素直にそれに従い、初年度の47年は1年間に大発会から大納会まで日経平均は90%以上値上がりした。1年間で90%というのは珍しい(しかし、20年3月19日の1万6,500円台から21年2月の3万700円までは日経平均は86%上昇した。これは仮称「コロナ相場」の青春期と壮年期を二幕いっぺんに演じたのであろうと本稿では述べた)。そうすれば9月の3万700円をもってコロナ相場の老年期相場が終焉の幕引きをしても良い。但し、その幕引きは鮮明ではなかった。そのまま岸田政権相場につながった。この辺のメリハリが一つなかったことが3万円寸前まで来て高値圏の保合相場を呈している一つの原因でもあり、大きな原因は岸田政権の経済政策が断定的に明確ではないことだ。ひとことで言えば政策待ちというところであろう。

【今週号の目次】
第1部 当面の市況

(1)週明けは小安く始まろうが下値は浅い
(2)「日経平均、なぜ3万円を嫌う」か?
(3)業界代表銘柄の大型株の動きは一日で消えてしまった
(4)相場の急変に対する警戒感が2ヶ月半ぶりに和らぐ
(5)当面の市況および中長期の見方:日米、自社株による株高の違い
(6)「新しい資本主義実現会議」が11月上旬に設置
(7)ただのキャッシュリッチだけでは評価されない
(8)前項目の続きとして株主還元のための自社株買いについて
(9)前項目の続きの続き
(10)FRBの金融政策
第2部 中長期の見方
(1)政府は19日に経済対策を閣議決定したが経済成長を押し上げる政策には新規案件は乏しい
(2)中長期の見方:輸出好調だが貿易収支不調
(3)株価だけではない。GDP動向そのものに日本の出遅れが目立つ
(4)インフレ懸念はあるか――過度な楽観も過度の悲観も避けたい
(5)当面の市況と中長期の見方:インフレを過度に恐れる必要はない
(6)11ヶ月流入超となった投資信託
(7)COP26は結果的には失敗に近い形で閉幕→エネルギー中期計画推進は消極化の恐れ
(8)COP26の行方と原発問題と東京電力
第3部 岸田政権と株価動向
(1)どんな経済政策にも価値観が伴う。価値観が伴わない経済政策はない。40年前の鄧小平の「先富論」は小泉竹中ラインの「新自由主義」となって日本国内に転移したが、今回は習近平の「共同富裕」は岸田内閣の「分配々々」として偶然に表面上は中国のスローガンと似てきた
(2)確かに「分配なければ成長なし」であるがその分配するためにはどうするか
(3)「新資本主義」「成長と分配の好循環」というキャッチフレーズに対して具体的な政策実現の道は何か
第4部 読者との交信蘭
(1)既報のリーダーシップ談議についての読者T様との交信
(2)「81才のY・O」様との「ご貴殿の心の中に成功要因がある」と言う話と維新の会についての交信
(3)H様との途上国投信についての交信

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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『投資で勝ち続ける賢者の習慣』
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『投機学入門 不滅の相場常勝哲学』(電子書籍)
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その他、著書多数。以下よりご覧ください。
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