見出し画像

【投機の流儀 セレクション】株式投資で長年の経験を積んでも儲けられない人のタイプ

その1:「ズボラな人」
筆者は、株式投資を長く経験を積んでも通算してみると金融資産は増えていないか、または大幅に減らしてしまうタイプの人を多数見てきた。こういう人々には色々な共通性がある。それを今からいくつか拾い出してみようと思う。その「共通性」の中には筆者自身も含まれている場合もある。それを承知の上で反省する意味も含めて一つずつ拾い出してみようと思う。今回は(1)として「ズボラな人」を挙げたい。

ズボラな人は通算して見るとまずは儲けは残らない。几帳面な人が結果的には勝つ。売買の年月日・株数・単価を買った時・売った時、結果としての売買損益、(四半期ごとでも半年ごとでもいいが、時期を必ず決めて)定期的に評価損益を累計して出す、などを几帳面に続ける人が概ねは金融市場で資産形成する。これは共通の特色であると思う。「俺は売買は全部頭の中にある」という人も多いが、そういうことを頭の中に入れるよりはもっと他のことを頭に入れるほうがいいと思う。紙に書くことによって頭の中が整理され頭が空になる。それが良いのだ。「記憶するために書く」という目的以外に「頭を空にするために紙に書く」という意義がある。
世界史の上でスイスやイタリアの交易商人たちは共同出資して交易を営み、その資金や利益の配分を管理する必要に迫られて複式簿記を発明し克明に記録した。これが成功したヴェネチアの商人たちであったが、フィレンツェのメディチ家は会計を疎んじ資金を枯渇させた。それはメディチ家が芸術家や学者を支援し文化の中心になったからではない。会計を疎んじたからだ。
近代においてイギリスや米国のように会計監査制度を強化した国家は繁栄した。初代財務長官となったハミルトンは厳密な複式簿記を国家財政に導入し法制度化した。これら国家単位で述べても、記録にズボラな君主や王様はデフォルトに陥る例が多かった。スペインのフェリペ2世もそうだった。このことは「帳簿の世界史」(ジェイコブ・ソール著、村井章子訳、文藝春秋社,2015年刊)に詳しい。複式簿記こそ資本主義の要だというような例を挙げて述べている。そしてルネッサンス期の絵画には王侯貴族が帳簿を広げている絵が多い。
投資行為の繁栄は帳簿の中にある。投資で得る幸せは青い鳥が運んでくるのではない。几帳面な帳簿が運んでくる。

【今週号の目次】
第1部 当面の市況
第2部 中長期の見方
第3部 「日経平均の大底圏内を買い、青春期相場・壮年期相場で資産を作る」というオーソドックスな方法が通用しなくなる可能性
第4部 COP25で早くも馬脚を顕したか小泉進次郎新大臣
第5部 株式投資で長年の経験を積んでも儲けられない人のタイプ
第6部 読者との交信欄

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。

ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
https://amzn.to/2AebYBH
『投資で勝ち続ける賢者の習慣』
https://amzn.to/2vd0oB4
『投機学入門 不滅の相場常勝哲学』(電子書籍)
https://amzn.to/2AeQ7tP
『会社員から大学教授に転身する方法』(電子書籍)
https://amzn.to/2vbXpZm
その他、著書多数。以下よりご覧ください。
https://amzn.to/2va3A0d

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?