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【投機の流儀 セレクション】「正しく恐れる」について――直感・論理・哲学、及び蛻変(ぜいへん)

筆者は少なくとも様々な現象を観察して、「株価の景気先行性を重んじない場合は概ね失敗する、失敗を避けるためには株価の景気先行性を重視しなければならない」ということを「直感」で着想し、その直感が「感性認識(註1)」となり、これが積み重なって脳裡で1つの「理性認識(註2)」となって構成されて体系化した。
筆者はこれを論文としてまとめて株価の景気先行性を重視しようということを提言したいと長年志向してきた。
(註1)(註2)毛沢東論文集の中の有名な論文「実践論・矛盾論」の中に「人の正しい考え方はどこから生まれるのか」と言う小論があり、そこに出てくる。人は事物に触れて(市場に触れて)唯物論的に或る感じ方を持つ。これを「感性認識」と言う、これは正しいか否かは不明である、ところが感性認識が頭の中で積もり積もって体系だった思想に構築される。頭の中で出来るのだから「観念論的」である、これが「理性認識」である。それを再び、事物に触れて正否を知る、これは事物を通して知るのだから「唯物論的」である。かくて、ヒトは、唯物論的に、また観念論的に、直感性と思惟と体験との中で正しい考え方が構築される。要約するとこういう感じである。
景気循環理論については経済史の事実の検証から生まれる景気循環学説と同時に近代経済学の論理を使った景気循環理論を吟味し、ここで「論理」に触れ、そして現実の事物に触れて「哲学」しようと思ってきた。哲学とは、筆者の考えでは、物の本質に向かって今一歩深く突っ込んで考える営みである、としておきたい。では「本質」とは何か、或るものAからBを取り去るとAの存在はなくなる、そのBを本質と言う。
筆者はそう考えていて、「本質をつかんで惑わず哲学していきたい」と志向してきた。本稿は、直感・論理・哲学、これらを全て使っているとは言えないかもしれないが、少なくともそうありたいと志向するものである。

〈註〉蛻変(ぜいへん)
エビやヘビやセミは成長の過程で古い皮を脱ぎ捨てて体を大きくし別の体になる。これが所謂「蛻変」(ぜいへん)だ。禅語によく出てくる言葉である。この脱皮できない生物はそのまま死ぬ。外部環境の変化に応じて彼らは自動的に意思のないままに行われるが、外的変化を感じて意思を持ってそれを行うのがヒトである。それができないヒトは時代にも遅れをとり市場にも遅れる。筆者もその傾向を持っている自覚症状はある。

【今週号の目次】
第1部 当面の市況―正しく恐れる。適切に対峙する

(1)当面の市況
(2)昨年の日経平均の上昇幅は3,183円。上昇上位10銘柄だけで上昇分が3,912円
(3)マザーズ1年ぶりの安値
(4)トヨタ減産の話しは大きい
(5)米国市況
(6)世界で最初に場が開くのが日本株だから好悪いずれにも大きく振られる
(7)「増配ドミノが始まった コロナで積みあがる現金、還元の有望は?」
(8)利回り重視で買う行為は普通は大底圏内に見られるが、現在それがブームになっている感がある
(9)ソフトバンクGr(9984)の及ぼす影響
第2部 中期的な見方
(1)「熱き血潮の冷えぬ間に」
(2)「これから先、絶対にしてはならないこと」と「筆者快心のクダリ」
(3)「市場よりもFRBの方が正しい見解を持っていた」
(4)景気に対する慎重な見方と金融緩和の継続問題
(5)金融危機は2年内で短期間で収束できるが民間のバランスシート不況は13年かかった
(6)量的緩和がそれの出口戦略を遂行されるようになっても実体経済に大きな変化はないというがマインドは冷える
(7)年内の円ドル相場は108円~112円が最多
(8)米国株・欧州株・日本株の順
(9)「感染拡大している間は超金融緩和は維持する」
(10)「株、敬遠。雪解けと個人マネー」
(11)「東京電力の出口なき業績不振」――2000万個人顧客喪失の危機
(12)景気循環の存在と株価の景気先行性――今こそ意識すべき時
(13))景気収縮期と金融危機との違い
第3部 「正しく恐れる」について――直感・論理・哲学、及び蛻変(ぜいへん)〈註A〉

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
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