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【投機の流儀 セレクション】文藝春秋の「財務次官、モノ申す『このままでは国家財政は破綻する』」に対して筆者モノ申す

このままでは国家財政が破綻すると言われてから20年以上経った。筆者は20年前からバラマキ論や国家破綻論に対しては歯牙にかけなかった。早晩財政破綻すると財務官僚は騒ぐのが好きだ。「価格を1166兆円の借金」と矢野事務次官が言っているが、この言い方もまた歯牙にかける必要はない。事務次官といえば、企業で言えば生え抜きの社長である。頭の良い連中が志を持って霞ヶ関に集まった。そして23歳から旧大蔵省に入って その道の専門のはずである。筆者がなぜ財政破綻論を昔から歯牙にかけなかったかと言えば答えは簡単である。だいたいGDPとの比較で2倍以上だとか言っているが、GDPと比較することに意味がない。GDPとは所謂年収である。一介の会社員が住宅を買うときに年収の何100%の住宅ローンを組む。それでその住宅を買った人は破綻するかというと、真面目に働いている限りはそんなことはない。何故1年の年収と比較しなければならないのだろうか。中国ではマンションの平均価格は年収の50倍だという。これは所謂バブルというものであって、所謂ユーフォリアというものであって、正常な頭脳の働きを喪失する陶酔的熱病と訳されるが、日本でも平成一桁台のマンションの値段は年収の15倍は平気だった。それが GDPの2倍になったからと言って騒ぐことはない。筆者は昔からそう思っていた。本稿でも既述したことがあるカミソリ後藤田の異名をとった中曽根内閣の名官房長官は、「後藤田5訓」の中に「勇気を持って意見具申せよ」というのがある。筆者はそれに倣って、矢野事務次官の言うことは歯牙にかける必要はないと意見を具申したい。また、「借金・借金・借金」と言うが、国債発行高は借金ではない。国の発行する債券に対して国民や金融機関が貯蓄しているのだ。また、破綻・破綻と騒ぐが、破綻の定義はどういうことか。家計が破綻するということは明日の家賃も電気代も食費にも欠乏し1ヶ月も生活できないような状態を言う。日本は果たしてそうなっているか。ちゃんと一般会計予算が立てられ、プライマリーバランスが破れた場合はそれなりの処置ができ、今まで財政破綻・財政破綻と言われてから30年も破綻せずにやってきた。矢野事務次官はタイタニック号に例えて「日本は氷山に向かって突進している」と言っているが、この文藝春秋の文言は最初から最後までが、何かの目的があって情緒的に訴えているだけに過ぎない。矢野事務次官は一橋出身だから東大揃いの大蔵省内では異端なのか?異端で出世するには破綻々々と騒ぐことなのか。30年前から大蔵官僚は破綻が好きだった。また、「日本国債の格付けに影響しかねない」と述べているが、それは確かであろう。格付けなんて私は歯牙に賭けないと宮澤元首相は一蹴したことは正解だった。さすがに経済通の揃った宏池会出身であった。

【今週号の目次】
第1部 当面の市況

(1)10月6日の新月の日から10月20日の満月の日まで日経平均は2,200円上がったが・・・
(2)当面の市況
(3)25日線と信用買い残と指数主導型
(4)「電撃選挙」の決断は自民党の議席数は確実に減るということを読んだ上で、議席数減少を最小限に抑えるという、吉田茂発のリアリストの流れを汲む宏池会出身者岸田氏の現実的なやり方だ
第2部 岸田政権の経済政策の打ち出し方で市場は上下に激変する
(1)吉田茂を実質的創始者とする宏池会の流れは株高だが‥
(2)岸田首相のホンネの一部には株安の政策がある
(3)岸田政策に期待する物は何か
(4)「表の論理」と「裏の論理」と「裏の裏は表だ」の言い分
(5)吉田学校の流れをくむ宏池会に一貫するものは、宏池会の真の創設者吉田茂のリアリズムと経済成長だ、岸田首相はその5人目だ
(6)接人の巧者たる岸田さん!「低姿勢は正姿勢だ」(池田勇人)、毅然たる「蛮勇」(中曽根康弘)があるか
(7)小泉政権時代の国是「貯蓄から投資へ」と宏池会の流れ
(8)ふたたび岸田政権の経済政策
(9)岸田首相の言う金融所得課税案
(10)宏池会出身首相5人目の岸田総理は宏池会の流れをくんでいる
(11)再びいう、岸田政権は宏池会の伝統を引き継いでいる
(12)岸田政権の経済政策は見えてこない
(13)「分厚い中間層への配分」は仕方によっては株式市場には逆風
(14)岸田政権の経済政策に市場は期待と共に疑心暗鬼
(15)政治の安定、政策実現の可能性を占う具体的な目途について
第3部 中長期の見方
(1)企業と家計の現金保有が大幅増加した
(2)「円安=株高」の構図、再び鮮明。それの副作用も鮮明
(3)円安傾向の背景とどの程度まで許容範囲か
(4)米FRBのFOMCで金融引き締めの明確な路線を示した故に円安傾向は続くが中長期の見方は海外要因のマイナスがある。
第4部 岸田政策に逆風の財務次官の言動にモノ申す
(1)文藝春秋の「財務次官、モノ申す『このままでは国家財政は破綻する』」に対して筆者モノ申す
(2)矢野事務次官の日本財政破綻論は二つの意味で正しくない


【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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その他、著書多数。以下よりご覧ください。
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