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【投機の流儀 セレクション】日経平均4万円超えの説も一理ある

筆者の所属している景気循環準学会の客観的なデータによれば、中長期の景気循環から日本株の上昇が長期に渡る可能性を指摘できる(当学会において株価予想はしないし、本質的に関係はないが、株価は景気に先行するからその景気の動向は大いに重要である)。

今の日本株の上昇は、
1:PER・PBR・利回りなどの客観的指数から見て、日本株は欧米先進国に比べて割安感があること。
2:東証による上場企業に対する企業価値改善への要請に対する対応が動いていること。
3:それを見ての海外投資家の大幅な買い越しである。

しかし、こういうことだけでは長期上昇相場は見込めない。これだけで4万円超えは見込めない。基本的には、日本経済の相対的な底堅さが評価されていると見る。つまり、筆者らが言ってきた「悪材料出尽くしの日本経済」「日本経済の大底を買う相場」とおおざっぱな言い方をすればこういうことになる。

日本は経済再開や正常化に向けた動きが諸先進国より遅れて、景気の持ち直しの動きが今頃になって明確になってきた。2023年1〜3月期のGDP統計では上方修正されて、前期比で年率プラス2.7%となった。アベノミクス大相場の期間も、7年間を通算すれば1.1%でしかなかった。つまり横ばいである。50年前に下村治氏が言った「ゼロ成長」に近かった。それに対して2.7%というのは大きい。

再度言うが、2000年以降のGDPの伸びはアメリカが2倍、中国は6倍、日本1.0倍だった。その20年以上の停滞の悪材料が全て出尽くした。資源価格や穀物価格はウクライナ侵攻を受けて急騰し、国内市場の収益を圧迫してきた。

ところで、日本企業も大いにシタタカである。コスト低下の努力を通じ、輸出資源が低下すれば直ちに収益を押し上げる方向に作動するようになった。企業の収益を見る指標であるところの交易条件は、資源価格や穀物価格の下落に加えてコスト増の価格転嫁の動きもあり、改善が続いている。その改善から半年か一年遅れて、企業収益が改善していく。23年度下期にかけては収益を押し上げ、したがって景気を浮揚させる効果が期待できる。

このように、中長期の日本経済の底堅さが指摘されている。当初に述べた1番〜3番のような動きだけでは4万円を超える強気予想は出ない。基本にあるのは、日本経済のファンダメンタルと政策である。

中長期の景気循環は日本株の長期上昇を示唆している。筆者が専門としているところの景気循環に対する株価トレンドの先行性について要約すれば、戦後の中長期の景気循環と中長期の株価トレンドの関係は次のようになっている。  

1950年代後半から所得倍増計画にかけての長期大幅高、60年代後半からの成熟と繁栄にかけての大相場、2012年からの小泉政権時の大型相場、いずれも平均株価が2倍〜3倍になった。50年代〜60年代は「神武景気」と「岩戸景気」であり、復興と成長の四半世紀だった。60年代後半は「いざなぎ景気」であり、これも成長期の後半だった。

そして2010年半ば以降、所謂アベノミクス景気は旧経済企画庁がなくなったので命名はされていないが、仮称「アベノミクス景気」の時期である。
今、期待されているのは「新しい資本主義」時代の景気ということになるだろう。

岸田政権の下では、政策が理念先行で、実質は大規模でないことをいくつも重ねていくという方法であるから、何々景気とか何々大相場というようなものは生まれていないが、結果的には「日本経済は30年間で来るところまで来てしまった」「衰退の30年間を送ってしまった、これ以上悪くなることはなかろう。したがって、大底を買おう」という、大雑把に言えばそういうところであろう。

【今週号の目次】
第1部;当面の市況
(1)市況コメント
(2)SQ日も日柄整理中
(3)7月第1週は海外勢が買い越し、個人投資家がそれを上回る買い越し
(4)価格調整ではなく、スピード調整だ。
(5)米国の輸入、15年ぶりに中国を首位の座から追い落とす─武者陵司氏の12年前の「予言」どおり
(6)プライム市場から離脱して、スタンダード市場へ48社
(7)日柄整理の中で主役が入れ替わった。
(8)日経平均に整理色鮮明
(9)長期金利が上昇し、0.45%に。米10年債は4%台に。
(10)「バフェット効果」
(11)低ボラティリティはしばらく続くであろうが、安心はできない。
(12)プライム市場はひと休み?

第2部;中長期の見方
(1)今年後半の株価上昇の要因は景気と企業業績
(2)日経平均4万円超えの説も一理ある
(3)順調に動き始めたか、日本経済
(4)目先はともかくとして、中長期的には日経平均が4万円を超えていくという言い分には一理も二理もある。
(5)「日本企業は株主還元を減らすべきだ」
(6)日本は米中の狭間にあるという存在であるが・・・
(7)FRBの債務超過
(8)プーチンの余命、クーデターが開いた破局の扉
(9)ロシア通貨安、歯止めかからず。プーチンの行方は?
(10)プーチン政権の構造疲労と来年大統領選挙
(11)プーチンの誤算
(12)お知らせ─筆者が設定した次の研究テーマ

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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『投資で勝ち続ける賢者の習慣』
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その他、著書多数。以下よりご覧ください。
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