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【投機の流儀 セレクション】次の大底圏内では総合商社株

長期に保有するために買うというのは、今からでは少々遅い。或いは早すぎるとも言える。
W.バフェット氏が率いるバークシャー社が日本の総合商社の保有を明らかにしたのは一昨年コロナ禍の真っ最中であった。

今からは、ロシアによる総合商社株の暴落は近い。「サハリン2」を取り上げるというロシアの暴挙はプロジェクト完成直後にも起こした。またやる。
1979年のイラン革命による三井物産の大損と同じく、ロシアによる大きな「カントリー・リスク」は総合商社株に在り得る。
総合商社というビジネスモデルは先進諸国にはない。日本独特のビジネスモデルである。他国に例のない独特なビジネスモデルで、しかもそれがインベストバンカー的な規模も備えているしオルガナイザー的な機能も備えている。例えば、1979年のイラン革命で結果的には大失敗したが、パーレビ国王の旧イラン(ペルシャ帝国)の時代に大規模石油開発をオルガナイザーとして進めたりもした。この総合商社というビジネスモデルの判りにくさが海外からは割安に放置され、PBRは軒並み1倍以下で解散価値かそれ以下である。PERも一桁台にとどまってきた。この先進諸国にはない独特のビジネスモデルが海外から判りにくいから割安に放置されている。
いずれは、オルガナイザー的な機能を重視される時が来る。M&Aの推進者が評価される時が来る。扱う商品が高くなれば何が高くなっても儲かるということなどに目を付ければ「総合商社株は、大相場があるごとにひと相場が間違いなくある」ということを筆者が教えられたのは「いざなぎ景気」(1965年夏~1970年春)の期間であった。その頃オルガナイザー機能とか、扱う商品の何が高騰しても儲かる仕組みとか、M&A機能でひと儲けするなどということは野村證券調査部(現在の野村総研)が言い出した頃であり、三井物産が150円台だった。その時代から筆者は三井物産を中心とする総合商社は大相場があるたびに間違いなく「手堅く果敢に攻められる銘柄」として常に気に留めてきた。ところが、2020年のコロナ禍の最中にW.バフェット氏が総合商社の大量保有を明らかにして海外筋もこれに注目するようになってからは旨味のある買い場が少なくなった。


【今週号の目次】
第1部 当面の市況

(1)市況コメント
(2)3日続落1000円超の後だけに週明けは小高く始まろうが、市場は「景気減速」から「景気後退」への警戒
(3)日経平均は味気のないボックス相場ではあるが、市場内では激動している銘柄は多い――先週号の最終章に選挙後の原発論議を書いたが東電株は
(4)「ウィズコロナ下」での経済活動の考え方を巡る二つの混乱――「さあ、市場と適切な間合いを保持しながら対峙していこう」と呼び掛けたい
(5)TS倍率(TOPIX/SP500)と日経平均
(6)先週半ばで今年の半分が終わった
(7)景況感、二期連続で悪化、これは何を意味するか
(8)米金融引き締めと景気後退への警戒感
(9)「軟着陸は非常に難しい」というパウエル議長の議会証言
(10)景気循環をどう織り込むかの問題
(11)大和投資情報マンスリー6月号より
(12)今年高値安値の半値戻りのレベルを中心とする(または下限とする)ボックス相場
(13)NYダウ126年間の歴史における一般的な定義
(14)米株式市場、恐るべきはスタグフレーション
(15)次の大底圏内では総合商社株
(16)選挙後の岸田内閣の持つ問題点
第2部 中長期の見方
(1)先進国の中で最も高い現金保有比率を維持している日本の個人金融資産の5%でも株式に回れば大きな株式市場は大きな地殻変動を起こす
(2)核兵器禁止条約推進派に日本が背を向けるのは正しい
(3)中長期の見方:「強欲資本主義」と「共生民主主義」
(4)三たび、「悪い円安」論の正否
(5)中長期の見方は欧米に迫るスタグフレーションの恐怖
(6)岸田首相の「新しい資本主義」とは何だ?
(7)プーチンは“無視しているフリ”をしているロシアの人口危機
(8)ウクライナ侵攻の動揺はロシア政府上層部にも広がっている
(9)バイデン政権下の実施可能な政策と世界経済
(10)日銀対ヘッジファンド――「武者リサーチコメンタリー 2022 年 6 月 27 日」より
(11)専制主義国家・対・民主主義国家の構図を連想して直ちに軍事費倍増を考えるよりも人口増にカネを使う方が日本の将来に対する基本であろう
(12)「『冷戦後』の終わり」→国家主導型の再現
(13)欧米金利が景気不安で低下、その先に市場はハードランディングによる景気不安→利下げへの転換を意識し始めたか

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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『投資で勝ち続ける賢者の習慣』
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『投機学入門 不滅の相場常勝哲学』(電子書籍)
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その他、著書多数。以下よりご覧ください。
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