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【投機の流儀 セレクション】来年アメリカ大統領選挙は日本にとって好都合な大統領が誕生することはあり得ない。だが、ヒラリー・クリントンガ出れば急変する

トランプが勝ってもウォーレンが勝っても同じことが言える。トランプはこの3年間、国際秩序を破壊してきた。まず、日米含めた膨大なGDPの量で中国を取り囲み、太平洋を持っていない中国に対する巨大な包囲網を構築するというオバマのTPP構想をトランプは就任早々破壊し、ついで米中貿易戦争を仕掛けた。それに対して中国は「(大航海時代より半世紀以上前に)6世紀前に俺たちがやったことだ」と16世紀前半の鄭和艦隊(ていわかんたい)が2万人を率いてインド洋・太平洋を7回航海してアフリカまで行った。この中国明国の大航海時代を習近平は6世紀前に俺たちがやったことだとして全く同じ地図を「一帯一路」の「一帯」として描いている。トランプはこの3年間世界秩序を破壊してきたが、その中には「トランプでなくてもやったであろう」という米国の伝統的な行動原理も入っている。
もともとアメリカの孤立主義という考えは独立宣言以降、それから半世紀後のモンロー主義で確認され、本来他国と交わらなくても独立して生きていける鉄鉱石・原油資源・食料資源を有する北米大陸を持っている。もともとアメリカには孤立主義の伝統が潜在的にはある。これを「理念の合衆国」で乗り越えてリードしてきたのだ。トランプはもともとアメリカが持っていた伝統をあからさまに口にして行動化したのだ。
また、特殊部隊による国際テロ組織指導者への襲撃はオバマ政権も行った。しかもヒラリー・クリントン女史が国務長官として指導した。
このようにアメリカの伝統にはトランプでもなくても他の大統領でも行ったであろうことも含まれてはいる。
もし、民主党のウォーレン上院議員が大統領になったとしても彼女が抱える対富裕層増税や大型ネット企業の破壊は米景気も世界景気も冷やす懸念は大いにある。要するに日本にとって都合のいい大統領はいずれにしても生まれないと見たほうが良い。

尤も、大統領選の5合目くらいで、ヒラリー・クリントンが再々出馬すれば、世界は変わるだろう。
彼女が書いた自慢げな半生伝「困難な選択(★註1)」によれば、なかなか野心的な女だ。不確かな情報の下でオサマ・ビン・ラディンをヤッタのは私だと自己顕示欲マル出しの女だ。三度、大統領選挙に出馬する可能性はある。さすれば今回はトランプ台風の後の洗礼を受けて先回とはヒラリーへの見方が激変しよう。少なくとも筆者ならそうなる。

トランプ大統領とウォーレン候補との関係は一種の共通性があり、「高学歴エリート」対「低学歴白人労働者」の階級闘争であるとすれば、1848年に出たマルクスの「共産党宣言」(★註2)の冒頭の「幽霊」「妖怪」はまだ「世界を放浪」していることになる。
(★註1)ヒラリー・クリントン著、日本経済新聞社訳、日本経済新聞出版社、2015年刊)。
(★註2)「共産党宣言」の「ドイツ文への訳文」「英文への訳文」などの長い前文を除けば本編はわずか50ページであり、その書き出しは「今、欧州の4しであるが、彼の説いた対立抗争はトランプにおいて再現されたと言える。

【今週号の目次】
第1部 当面の市況
(1)2万3500円という「心理的節目」でのこと
(2)三尊天井形成か高値更新か?
(3)世界株高の中に厳しい選別
(4)先週週初は一時470円幅の上昇
(5)9月以降海外投資家は1.6兆円の買い越し、国内金融機関は1.5兆円の売り越
(6)大国の大統領が意図的に「株価操作」をするという先進国が他にあろうか
(7)NYはSP500もダウも史上最高値
(8)出遅れ銘柄群・割安株(バリュー株)の見直し買いの気運
(9)「株高ムードが高まる中で、わずかな変化も見逃したくないという投資家心理を映し出している」
第2部 中長期の見方
(1)トランプの再選はなるか?トランプへの評価が真っ二つに割れている
(2)来年アメリカ大統領選挙は日本にとって好都合な大統領が誕生することはあり得ない。だが、ヒラリー・クリントンガ出れば急変する
(3)長期投資についての一言:
(4)日本企業の決算発表の概観
(5)中長期の見方:経常利益は6年連続で過去最高を記録したが純益は2期連続減少。これは金融危機以来のことだ。
(6)円ドル相場
(7)北方領土問題についての小池都知事の投げた「劇場型政治」の波紋
第3部 「あの人々は今」、どう語っているか
①野村総研・高尾義一氏
②野村総研リチャード・クー氏
③野村証券・植草一秀氏 元京都大学助教授・野村證券・早稲田大学教授の植草氏
④長谷川慶太郎氏
⑤孤高のエコノミスト下村治氏
⑥キッシンジャー
第4部 「合理的市場仮説」
(1)合理的市場仮説
(2)合理的市場仮説論者が好んで使う事例


【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。

ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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『投資で勝ち続ける賢者の習慣』
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『投機学入門 不滅の相場常勝哲学』(電子書籍)
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『会社員から大学教授に転身する方法』(電子書籍)
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その他、著書多数。以下よりご覧ください。
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