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【投機の流儀 セレクション】バブルは必ず崩壊するが、バブルだバブルだと皆が騒いでいるうちは崩壊しない

日経平均は87年12月に初めて3万円を超えて以来、33年3か月ぶりに3万円を少し超えて「それに敬意を表して」また3万を割り込んだが、これは日経平均の話しだ。日経平均は本稿でも述べてきたように、「地合(じあい)」とか「場味(ばあじ)」とかいう「相場の脈」や「息遣い」などというものを表すには非常に便利ではあるが、レベルの高低の適否を見るには必ずしも適切ではない。2100以上ある第一市場銘柄の中から225種だけを選んでその加重平均でつくられたものだし、その225種の時価総額の合計は2100銘柄全体の6割を超えるが、値がさ人気銘柄の代表格である任天堂・オリエンタルランド・日本電産・キーエンス・ムラタが全部日経225銘柄からは始めから削除されている。これらを加えれば日経平均は4万円になってしまう。したがって、レベルで見るには最も間違いないのはTOPIXであろう。これは全銘柄を時価総額ベースの加重平均で算出される。1960年に旧経企庁が景気動向指数を組成した時から景気の先行指標として用いられているのはTOPIXである(87年~2000年までは先行指標から除外されていた、これが「失われた13年」の市場シグナルを見抜けなかった一要因になった)。そのTOPIXは日経平均とは違って1900ポイントというところが常に「鉄壁の天井」となっていた。鉄壁の上値抵抗線だった。これを今回日経平均が3万円を超えた時だけは抜いた。今までは「鉄壁の上値抵抗線」として何度も何度も跳ね返されてきたものが今度はすんなり抜いて見せた。そこで傾向が変わったと言う筋もあるが、そんなに簡単なものではない。「鉄壁の上値抵抗線」としてTOPIXは健在だ。

ただ、みんながバブルだバブルだと騒いているときにはバブルは崩壊しない。今は日銀と海外投資家以外はほとんどの個人が売り越しで法人も年度末にかけて売り越しになるだろう。こういう時はバブル崩壊はない。

年初から2月までの法人の売り越し累計は約8600億円で、日本株の最大の売り越し大手が日本法人であった。そして、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は日本株の割合を25%と決めているので値上がりすれば自動的に25%の枠を超える。その分を調整するために売らなければならない。この目標保有分より上振れている分を売ることになる。日本株の割合は25%以内と決めているから、それよりも少なくとも1兆円以上は値上がりによってオーバーしておろう。これはを売らなければならないであろう。「長期的視点に基づいて適切な時期に行う」というのがGPIFの本来の建て前であるから、相場を崩して売るようなことはないであろうが、持ち高を調整しなければならないために1兆円以上を売らなければならないことは事実だ。

また、企業年金でも日本株の売却を検討する基金が増えている。また、企業ガバナンスが言われている最中、企業同士の政策的持ち合い株の解消を進める動きが期末に出れば、これもやはり売り要因にはなる。だから相場が崩れると言っているわけではない。このように日銀と一部の外国投資家以外は個人も法人も売っているわけだからバブルの様相ではない。バブルというのは全員が目の色を変えて買っているのがバブルである。そして、そういう時はいつか破裂する。今はそのような様相ではない。

【今週号の目次】
第1部 当面の市況
(1)週明けは買い先行で始まろう
(2)先週週末日の動き
(3)バブル破裂からは遠い
(4)海外勢は2月第4週は日本株を5ヶ月ぶりの大幅売り越しとなった
(5)信用含み損の悪化
(6)当面の市況:高値圏での波乱相場は時々起きよう
(7)買い余力が少なくなった
(8)米株式市場は基本的に不安定な動が続くだろう
(9)当面の市場では自己管理が要る
(10)バブルは必ず崩壊するが、バブルだバブルだと皆が騒いでいるうちは崩壊しない
(11)上がったものは下がる、下がったものは上がる
第2部 中長期の見方
(1)既報で既述し続けた通り、今最も気にするべきなのは金利高だ
(2)日本国債、海外勢による売り越し額1.3兆円弱
(3)時価総額の7%を持っている日銀、今月の決定会合では「出口戦略」は語らない
(4)FRBの出方=意訳すれば「2023年まで金融引き締めはしない」となるが……
(5)コロナ第4波は来るか
(6)中長期は暗くない
(7)「米、経済過熱を覚悟の上で経済対策」
(8)中長期の見方:「金融バブル崩壊」
(9)バイデン就任後初のG20、26日オンラインで開催
(10)コロナ後の投資方針
(11)中長期の見方:4月頃までは高値波乱の局面はあり得るが、本格的な下落トレンドに転換する時はもう少し先になる
(12)「3万円の意味」
(13)今の3万円のレベルは「実力」か「上げ底」か?
(14)コロナ緊急事態で政権の支持率が下降、失敗に次ぐ失敗
(15)菅総理長男と総務省のスキャンダルについて


【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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その他、著書多数。以下よりご覧ください。
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