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【投機の流儀 セレクション】日米株式に楽観ムード。この背景の危うさ

世界的に株価が反発し、日本では7ヶ月ぶりに2万9,000円台を回復した。 アメリカでの消費者物価がピークアウトしたとか、米国の利上げベースは鈍化するという期待が強まっている。FRB高官はこの期待感に対してブレーキをかけるような発言もしている。今の株式市場の楽観には危うさが伴う。持続性に疑問も伴う。但し、ジョン・テンプルトンが言ったように、株価は悲観の中で生まれて疑惑の中で育つ。これは少し上がると利食いして売ってしまうから上値が軽くなる。そして、少し上がると疑惑の中で空売りが入るから、また踏み上げ相場が起こる。この仕組みを「疑惑の中で育つ」と表現したのであるが、この段階は青春期相場の直後に起こるものであって、今さら起こるものではない。とにかく世界的な株高の要因は米長期金利の低下である。米長期金利の象徴である10年物国債は6月半ばに3.5%まで上昇した(債券単価は下がったという意味)。10日に発表された米CPI(消費者物価指数)が市場予測を下回ったこともあり、今後のFRB利上げベースは鈍化するという期待がある。 特に上昇が目立つのはIT関連を始めとするPERの高いグロース株である。日本株は円安という日本独自の恩恵がある。ドルベースによる日経平均は昨年末で見るとまだ13%も安い。ドル換算するとそうなる。これが海外から見ると割安に見える。7月以降の5週間の海外投資家は日本株を2兆円買い越した。これは一昨年の12月以来の買い越しの大きさであった。「いいとこ取り」の楽観に支えられた株高がどこまで続くかは不明である。先の夢を買うという猛烈な勢いのある青春期相場とは違って、心配していたCPIやFRB利上げが心配するほどではないという消極的な期待である。

【今週の目次】
第1部 当面の市況

(1)8月はFOMCの開催がなく、短期筋が「鬼の居ぬ間に洗濯」とばかりにサマーラリーの佳境にある米市場だが……
(2)当面の市況と中長期の構え:個人投資家が2年9ヶ月ぶりに6週間連続売り越し、長期的意味での買い場は遠くはない
(3)日米株式に楽観ムード。この背景の危うさ
(4)米国における「格差是正への税制見直し」は株式市場にとってはマイナス材料となる
(5)一方、個人投資家は用心深い
(6)欧米に比べて上昇が目立つ日本株
(7)野村證券が年末日経平均を「3万1,000円」から「2万6,000円」に訂正した途端に「鉄壁の上値抵抗線だった2万8,300円」を抜いて7ヶ月ぶりの高値となった
(8)「いいとこ取り」でつくり上げた中間反騰
(9)岸田改造内閣人事のきな臭さと「重工御三家」
(10)「8月円高」経験則崩れる?
第2部 中長期の見方
(1)景気後退予想が58%
(2)外需の不安を抱えながらの日本、GDPコロナ前レベルへの戻り
(3)中間反騰が大きいほどその後の反落は大きい
(4)岸田政権の課題:自発的に解散を打って出ない限り、選挙の無い「黄金の3年間」となる。この期間に岸田政権がやるべき経済政策
(5)改造人事に向かった背景は内閣支持率の急落に対する不安
(6)中長期の見方:来夏をにらみ原発稼働拡大――「当然、一定の規模を持つ(東電の)柏崎・刈羽の再稼働も重要だ」
(7)トランプがまた出てくる――「隠れトランプ支持者」の実相
(8)不動産市況

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
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